「籠城」続ける東大医学部教授に官邸が「徹底的処分」を示唆
臨床研究で不正に関与した教授がいまだ役職に居座り、「籠城」を続ける東京大学医学部ならびに同附属病院。他大学の教授が全て職を辞した中、その対照性はひときわ強烈さを放っている。
「ディオバン事件」の中心人物、小室一成・東大大学院医学系研究科循環器内科学教授は11月12日現在、「日本高血圧学会」(理事長:梅村敏・横浜市立大学大学院医学研究科病態制御内科学〔循環器・腎臓内科学〕教授)の理事職にとどまっている。同学会のウェブサイトに氏名が掲載されているのが何よりの証明だ。しかも、文部科学省は小室氏の研究室に来年度の予算を付けている。
報道でこれを知った首相官邸はいきり立った。早速局長を呼びつけて確認した。小室氏の研究室についた予算は「継続3つに新規が1つ」(官邸筋)の計4プロジェクト。
その場で局長には「厳格に対処するように」との指示が下った。官邸を掌握する高官の一人は局長にこんな言葉まで投げ掛けている。
「お前らの首も洗っておけよ」
東大医学部ではもう一つ気になる動きが浮上している。年末に予定される医学部長選挙。ここに意外な人物の出馬が見込まれているのだ。
その人物とは誰あろう門脇孝・附属病院長に他ならない。門脇氏は本来であれば、宮園浩平・現医学部長とともに「監督責任」を負わねばならぬ張本人である。ましてや、自ら研究代表を務める糖尿病治療薬ネシーナの臨床研究「J-BRAND」への嫌疑までささやかれている。
「役職を離れると、どんな目に遭うか分からない。そんな逼迫感に責めさいなまれているのでしょう。通常の感覚では、この時期に医学部長選への立候補は考えられない」(東大関係者)
官邸筋はこちらの動きも注視している。大学自治の観点から行政が学部長選挙に介入することはできない。だが、不正に手を染めた教授が「焼け太り」するさまをただ眺めているわけではない。
「徹底的に処分する姿勢を示す。これは官邸の意向だ」(前出の高官)
こんな強硬姿勢が明らかになった11月11日、文科省は文字通り上を下への大騒ぎとなった。
「今後も臨床研究不正に関しては官邸主導で対応していくことになりそうです。文科省は完全に信頼を失っている」(前出の東大関係者)
門脇氏の足元・東大医学部附属病院では現場の人事も動いている。「SIGN事件」の研究代表者、黒川峰夫・血液・腫瘍内科教授の研究室を実質的に支えてきた南谷泰仁講師の辞職がついに承認された。同科では黒川氏がほとんど顔を見せない中、医療安全の維持にすら疑問符が付く異常事態が続いていた。ここまで事態を放置してきた黒川氏の管理責任も問われる。南谷氏は郷里に帰ることになりそうだ。
「旧第三内科」の体面を気にする宮園・門脇両氏の指導力不足が崩壊の足を速めている。「東大医学部血液内科」の危機は相当に深刻だ。
「東大からの入局者がいない状況です。淘汰されたといってもいい。髙久史麿氏が立ち上げ、平井久丸氏が後を継いだ『三内』の伝統が今、潰えようとしている。トップに立つ人材の練度不足の問題が大きいといえます」(東大関係者)
東大における血液内科の使命とは何だったのだろうか。研究機関としての大学病院において同科は重要な役割を果たしている。「ヘマトロジー・オンコロジー」は強くなければならない分野。その肝心要の領域が東大では瓦解しようとしている。
「明治維新以降、国を挙げて築き上げてきた共有財産の価値が損なわれた。最大の被害者は国民です」(国立大学教員)
2014年11月13日 14:17 | 事件・医療・政治・病院・社会・行政