(英エコノミスト誌 2014年11月15日号)
消え入りそうな経済は是が非でも投資を必要としている。
この夏、ウクライナ東部の町スラビャンスクで戦闘が自宅近くに迫った時、ニナ・クリコワさんは浴槽に身を隠して泣いた。
破裂弾が隣家の階段の吹き抜けに命中し、彼女の家の窓は粉々になり、アパートの真ん中に爆弾の穴が開いた。誰もバルヴァーナヤ通り4番地を建て直しに来ない。
クリコワさんには行くところがない。一方、食品や医薬品の価格、光熱費はすべて高騰している。ご主人がリサイクル用の空き缶や段ボールを集めて生計を立てている。
革命と戦争が経済に与えた大打撃
1年にわたる革命と戦争は、ウクライナ経済に恐ろしいほど大きな打撃を与えている。国内総生産(GDP)は今年、10%減少する可能性がある。通貨フリブナは2014年に対ドルで50%近く下落した。インフレ率は19%に達している。今年初めは物価が安定していた。中央銀行は11月12日、今年3度目となる利上げを行い、金利を14%に引き上げた。
消費支出は第2四半期に前年比5%増加したが、それは恐らく買い占めを反映したものだろう。消費支出もすぐに減少する可能性が高い。
国際通貨基金(IMF)は4月、救済策を取りまとめ、2年間で170億ドルを拠出すると約束した。西側諸国の連合は、それより少ない額を提供した。これまでに約70億ドルが拠出された。だが、ウクライナは一時的な資金提供よりも多くのものを必要としている。また、支援に付けられた条件がウクライナの苦悩を増幅させている可能性もある。
ウクライナの経済問題は、長い時間をかけて作られてきた。20年間に及ぶ改革の行き詰まりと強欲な指導層のせいで、平均的なウクライナ人はソ連が崩壊した時よりも約20%貧しくなっている。お粗末な計画の下に行われた1990年代の民営化はオリガルヒ(新興財閥)階級を生み出し、彼らが国の富の大部分を我が物にした。
汚職は日常茶飯事だ。大学生は、良い成績を取るために教授に賄賂を渡す。税務署員は、大半の企業が税を逃れるために少なくとも部分的に現金で労働者に給与を支払っていると見ている。反腐敗団体のトランスペアレンシー・インターナショナルは、腐敗認識の世界ランキングでウクライナを177カ国中144位に位置付けている。
ウクライナの工業地帯であるドネツクとルガンスク両州での戦争は、こうした欠陥を一段と悪化させた。これら2州は通常、ウクライナのGDPの16%を占め、ウクライナの石炭の95%を供給し、不釣り合いに大きな割合の輸出品を生産している。