北海道新聞:慰安婦「吉田証言」取り消し 「信憑性薄い」
毎日新聞 2014年11月17日 11時24分(最終更新 11月17日 14時54分)
◇1991年からの1本の記事、「読者の皆さまにおわび」と
従軍慰安婦報道を巡り北海道新聞社(村田正敏社長)は17日朝刊で、朝鮮人女性を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言を報じた記事について「信憑性(しんぴょうせい)が薄いと判断した」として取り消した。同紙は1面で「検証が遅れ、記事をそのままにしてきたことを読者の皆さまにおわびし、記事を取り消します」としている。
同紙は合わせてこの日の紙面で、過去の報道内容を検証したり、従軍慰安婦問題について考えたりする特集を2ページにわたり掲載。当時の記者に加え、吉田氏が著書で慰安婦狩りをしたと書いた済州島の古老や郷土史家らを訪ねるなどして検証した結果、「著書と記事内容を裏付ける証言や文書は得られず、信憑性は薄いと判断した」としている。
北海道新聞によると、吉田氏の証言に関する記事を1991年11月22日朝刊以降、93年9月まで8回掲載(1本は共同通信の配信記事)した。このうち今回取り消した1回目は、吉田氏を直接取材し「朝鮮人従軍慰安婦の強制連行『まるで奴隷狩りだった』」との見出しで報じた。この記事は韓国紙の東亜日報に紹介された。他の7本は、吉田氏の国会招致の動きなど事実関係を報じた内容のため「取り消しようがない」としている。北海道新聞は1回目の記事に先立つ91年8月15日、元慰安婦の韓国人女性を初めて実名で報じ、その後の従軍慰安婦報道に大きな影響を与えたと言われている。
吉田証言を巡っては朝日新聞が8月5日の紙面で「虚偽だと判断し、記事を取り消します」と訂正。9月11日に同社の木村伊量社長が記者会見で改めて謝罪し、その後、辞任を表明した。北海道新聞は朝日新聞の対応を8月6日夕刊で報じたが、自社報道については「(吉田証言を)複数回報道した」と触れただけで、社内からも「訂正すべきだ」との声が上がっていた。また、札幌市中央区の本社周辺ではこの1カ月ほど街頭宣伝車が抗議活動をしていた。
北海道新聞はこの時期に検証記事を掲載した理由を「来年、日韓国交正常化50年を迎えるにあたり、懸案の従軍慰安婦問題を検証した」としている。一方で「朝日新聞が記事を取り消したことが一つのきっかけとなった」とも説明した。村田社長などの記者会見や当時の編集責任者の処分は検討していないという。北海道新聞の発行部数は約107万部。【小川祐希】