北海道新聞が、朝鮮人女性を強制連行したと証言した吉田清治氏(故人)に関する記事を取り消した。17日付朝刊で2ページにわたる特集記事を掲載し、生前の吉田氏に再取材しておけば早い段階での事実確認が可能だったかもしれないとしたうえで、「裏付けの乏しい記事をそのままにしてきたこと」を読者におわびするとしている。

 1面でも、吉田証言を取り上げた記事について、「検証が遅れ、記事をそのままにしてきたことを読者の皆さまにおわびし、記事を取り消します」とするおわび記事を掲載した。

 特集記事によると、吉田証言に関する記事を1991年11月~93年9月に計8本掲載(1本は共同通信の配信記事)。当時取材した記者や、吉田氏が著書で慰安婦を強制連行したと書いた韓国・済州島の古老や郷土史家、ソウルの研究者らから聞き取りした結果、証言を裏付ける情報は得られなかったことなどから、信憑性(しんぴょうせい)は薄いと判断したと結論づけた。

 吉田証言を取り上げた初報は、91年11月22日付朝刊の「朝鮮人従軍慰安婦の強制連行『まるで奴隷狩りだった』」との見出し記事。直後にこの記事が韓国紙に大きく紹介されたことから、韓国紙に与えた影響に言及。韓国の元外交官やメディア関係者、研究者らへの取材の結果、「世論に大きな影響を与えたものでないとの見方が一般的だった」と説明した。

 また、特集記事は、91年8月15日付朝刊の記事で慰安婦と女子挺身(ていしん)隊との混同があったことも取り上げた。韓国でも両者を混同していた時期があったなどとし、92年1月以降は両者を混同しないようにしてきたという。

 このほか、特集面では慰安婦問題に詳しい作家の半藤一利氏ら3人の談話や、政府・軍の関与や強制性の有無など慰安婦問題の論点についても掲載した。

 朝日新聞は8月、吉田氏の証言を報じた過去の記事を取り消した。また、慰安婦報道をめぐる記事作成の経緯や国際社会への報道の影響などについては、有識者による第三者委員会で検証している。

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 〈北海道新聞法務・広報グループの話〉 検証は、慰安婦問題を特集した朝日新聞の記事やそれに対する社会の動きが一つのきっかけになっているのは確かです。今回の記事は自社の「吉田証言」報道についての検証が中心でしたが、吉田証言や強制性の有無について新事実が出てくればそれを伝えていくなど、慰安婦問題について今後も引き続き注視していきたいと思います。