沖縄県知事選 民意の無視は許されない
これほど明確に示された沖縄の民意を、政権は無視できるのか。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題が最大の争点となった沖縄県知事選で、前那覇市長の翁長雄志(おながたけし)氏が勝利した。
翁長氏は政府の進める普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に反対を表明、「県内移設阻止」を掲げて、大きな支持を得た。
一方、現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏は敗北した。前回知事選で「県外移設」を訴えて当選しながら、「辺野古移設容認」へ転じた仲井真氏に有権者は厳しい審判を下した。
沖縄県民は普天間飛行場の辺野古移設について、端的に「ノー」の意思表示をしたといえる。
沖縄では、今年1月に名護市長選が行われ、移設反対派の現職が勝利した。9月の同市議選でも、反対派が過半数を占めた。
それでも安倍晋三政権は辺野古移設の方針を変えようとしない。昨年12月に仲井真知事が辺野古沿岸の埋め立てを承認したことを根拠に、飛行場建設に向けたボーリング調査を開始している。
今回の知事選の結果を受けても、政権は「安全保障は国の専権事項」「法的手続きは完了済み」などの論法で、辺野古移設のプロセスを続行すると予想される。
しかし、それが本当に政治的に賢明な道だろうか。
今回の知事選で特徴的なのは、従来の「保守対革新」の構図が崩れ、保守政治家の翁長氏が自民党政権の政策に反旗を翻して、それを県民が支持したことだ。「基地負担を押し付ける本土」対「これ以上の基地負担を拒否する沖縄」という「本土対沖縄」の構図ができつつあることを示している。
もし、政権がこの状況を軽視し「国家の論理」を沖縄に押し付け続ければ、沖縄の心はますます本土から離れてしまう。沖縄と本土との一体感さえ揺らぎかねない。
安倍政権は、沖縄の民意を正面から受け止め、あらためて米国と協議して「辺野古」以外の選択肢を検討してほしい。一地域の犠牲の上に成り立つ安全保障政策など、もう限界だと悟るべきだ。
=2014/11/17付 西日本新聞朝刊=