きのう投開票された沖縄県知事選で、前那覇市長の翁長雄志(おながたけし)氏が現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏を破った。 米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古に移設する計画の是非が最大の争点となる中、移設反対を前面に打ち出した翁長氏が、政府方針に沿って移設容認に転じた仲井真氏の3選を阻んだことは県民の極めて重い審判だ。この沖縄の意思を、国民全体が真剣に受け止めねばならない。 元はといえば、安倍政権が強引に移設手続きを進めたツケが回った結果とも言える。辺野古移設を「過去の問題」(菅義偉官房長官)とし、選挙結果にかかわらず方針を変えないというが、地元の民意に背を向けたままでは安全保障政策の土台が揺らぎかねない。 安倍晋三首相は誠実に新知事と向き合い、米国や国内他府県との協議であらゆる選択肢を探ることも含め、重い基地負担に苦しむ沖縄の現実をどうするのかをあらためて議論するべきだ。 1995年の米兵による少女暴行事件を受け、日米両政府が移設で合意して以降、「保守対革新」の対決が続いてきた知事選は今回「保守分裂」の要素が加わった。 自民党が推薦した仲井真氏に対し、自民県連幹事長を務め、前回知事選では仲井真選対の本部長だった翁長氏が県内移設に異議を唱えた。共産、社民両党に加え、自民を含む保守系地方議員・団体の一部が翁長氏支援に回り、政権与党の公明党は自主投票を決めた。 選挙中盤に行われた共同通信社の世論調査では、無党派層も半数以上が翁長氏を支持し、前回選で仲井真氏に投票した人の3割超が今回は翁長氏に投じるとした。最大の争点として辺野古移設を上げる人が6割を超え、移設賛成派は3割にとどまった。 市街地にある危険な普天間飛行場の固定化は許されないが、移設先が県内では、在日米軍施設の74%が集中する沖縄の「基地負担軽減」とは言えない。 安倍政権は普天間配備のオスプレイの県外訓練拡大などに取り組むが、普天間での飛行回数は逆に増えている。2019年2月までに普天間を運用停止するとした方針も、米政府が拒否していることが明らかになっている。形だけの「負担軽減」に、県民の怒りが知事選で噴出したと言えよう。 安倍首相は今週中に衆院を解散する構えだが、知事選敗北から目をそらすなら沖縄の不信感は高まるばかりだ。事態の打開策を明示してもらいたい。
[京都新聞 2014年11月17日掲載] |