沖縄県知事選は、前那覇市長の翁長雄志氏が初当選した。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対している。県民の意思があらためて示された。
1月の名護市長選で、移設反対の現職が再選された。9月の名護市議選でも反対派が過半数を維持している。政府は地元の民意を受け止めなくてはならない。移設は中止し、普天間返還の新たな方策を探るよう求める。
仲井真弘多知事が辺野古沿岸部の埋め立てを承認してから初の知事選だ。ほかに、移設推進の仲井真氏、県民投票を唱える元郵政民営化担当相の下地幹郎氏、承認取り消しを掲げる元参院議員の喜納昌吉氏が立候補していた。
政府、自民党は仲井真氏の3選に力を注いできた。応援で那覇市を訪れた菅義偉官房長官は、2019年2月までの普天間の運用停止を強調した。沖縄県による米映画テーマパークの誘致を政府が応援することも表明している。
10月には日米両政府が新たな協定の「実質合意」を発表した。環境調査のため自治体職員が米軍基地内に立ち入ることを可能にするもので、沖縄県が求めていた。
さまざまな後押しにもかかわらず、及ばなかった。前回の知事選で県外移設を掲げながら、辺野古容認に転じた仲井真氏に対する強い反発を感じさせる。
政府は8月、海底ボーリング調査を始めた。反対派の抗議活動を阻むため、米軍や工事用の船以外の航行を禁じる区域を設けての作業だ。こうしたごり押しへの異議申し立てとも受け取れる。
普天間の5年以内の運用停止を米政府が「空想のような見通し」としているのも見過ごせない。
共同通信社が今月上旬に行った電話世論調査では、政府の姿勢を「支持しない」との回答が7割を超えていた。このうち6割超が翁長氏に投票すると答えた。
翁長氏は「あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地は造らせない」とする。埋め立て承認手続きに問題がないか検証した上で撤回する意向も示している。
普天間飛行場は宜野湾市の市街地にある。住宅地に近接し、危険性が高い。返還は一日も早く実現しなければならない課題だ。とはいえ、県内での移設は沖縄の負担軽減にならない。普天間の固定化か辺野古移設か―の二者択一を迫るのが、そもそもおかしい。
移設を強行すれば、地元との溝はますます深まる。政府は県外移設など県民が納得できる負担軽減策を真剣に検討すべきだ。