治安維持法、繰り返すな 秘密保護法12月に施行
- 講演で「今の政治は戦争する国に近づいている。こちらも気が狂いそうになるが、狂わずに、戦争は嫌だと死ぬまで言いたい」と語る西川さん(京都市上京区)=左=と「特高月報昭和9年12月分」に記載された西川さんの検挙や起訴日を示す一覧表(国立公文書館のホームページより)
戦時中に治安維持法違反容疑で逮捕された当事者や遺族が、来月に迫る特定秘密保護法施行など変わりつつある国の在り方に厳しい視線を向けている。高齢になった今も、自由な言論を封じられた体験を語り、「あんな時代を絶対に繰り返してはいけない」と声を上げる。
■逮捕の105歳「非戦」今も語る
今年、105歳になった。「戦争は嫌だという気持ちを死ぬまで持ちたい」。生存する逮捕経験者で最高齢とされる大阪府貝塚市、会社顧問西川治郎さんがこのほど、京都市内の講演会で約150人に訴えた。
西川さんは同志社大予科を中退後の1934年1月、共産主義サークルに所属しているとして東京都内で逮捕された。前年にはプロレタリア作家小林多喜二が警察官に拷問を受けて死亡しており、西川さんも黙秘すると手足を縛られ、膝を木の棒で何度もたたかれた。11カ月後に同法違反(目的遂行)の罪で起訴され、執行猶予付き判決を言い渡された。
大阪府内で商売をしていた38年9月には、左翼意識を高揚したなどとして再び逮捕、起訴され、懲役2年の実刑判決を受けた。取調官から「おまえは天皇陛下を敵にしてるんだから間違って殺しても問題にならないんだ」とののしられ、ローソクの火であぶられた鼻は現在も黒く変色したままだ。
戦後は兄と製粉会社を営み、治安維持法の犠牲者への賠償を国に求める運動に携わってきた。100歳を超えて背中は曲がり、聴力の衰えも感じている。それでも、新聞2紙を半日がかりで読み込む。
「2回目の逮捕はたまたま受け取ったビラを1枚持っていただけなのにリーダーに仕立てられた。怪しいという理由で拘束され、世間から隔離された」。今も悔しさがこみ上げる。
特定秘密保護法の成立については「取り締まりのために昔のような特高(特別高等警察)が復活するのではないか。自由な言論がなくなり、世の中が闇になりかねない」と懸念する。
講演では自身の年齢に触れて、こう締めた。「今日お会いして、あしたどうなるか分かりませんが、皆さんお元気で。国家の主権は俺たちのものだと、忘れず生きていきたいものです」
【 2014年11月12日 22時50分 】