京都大学の山中伸弥教授が“iPS細胞”研究でノーベル賞を受賞したり、各個人の遺伝子情報、体質に合ったダイエットを提案する遺伝子キットが登場するなど、昨今、遺伝子分析に注目が集まっているようだ。
ただ、“遺伝子分析”と聞くと、どうしても私たち一般人には、専門家たちによって実験室でおこなわれるものであり、複雑な機械を操作するイメージがある。
専門家が使っている機械の10分の1のサイズ・コスト
現在、資金調達プラットフォームKickstarterでキャンペーンを開催しているAmplyusは、Ezequiel (Zeke) Alvarez Saavedra氏、Sebastian Kraves氏を中心とする、分子生物学者、デザイナー、エンジニアで構成される開発チームだ。「miniPCR」という、小型の遺伝子分析キットの開発に着手している。
このキットは、バイオ医療の専門家が使用している機械のサイズの、およそ10分の1の大きさしかなく、同時に制作コストも10分の1で済むというから、実に画期的だ。2x5x4インチサイズのポータブルケースに収めて、持ち運べる点もまた便利。
機械を動作させるために、複雑なセッティングをする必要はなく、単にスイッチを押せばよい。装置のコントロールは、「miniPCR」の専用アプリでおこなえるという。
“ポリメラーゼ連鎖反応”を使ってDNAコピー作成
「miniPCR」では、ノーベル賞受賞の技術である“ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)”を用いて、ある特定のDNAサンプルの何十億ものコピーを作成する。DNAコピー装置、ピペットツール、DNAゲル電気泳動、ビジュアライザー装置を搭載している、本格仕様である。
これほどのミニチュアサイズにも関わらず、性能は大きな装置と変わらないというからすごい。持ち運び可能なサイズの遺伝子分析キットは、遺伝子分析を専門施設のものだけでなく、学校や地域の施設や、あるいは個人で使用できるように扉を開いてくれる。
理科の授業や、家系のルーツ探しに
理科の授業に取り入れたり、自分の家系を遡ってルーツを探ったり、犯罪の証拠調査や、食中毒発生の調査などにも用いることができるだろう。資金集めキャンペーンの達成度合いによっては、食品中の“遺伝子組換え”分析をする機能などの追加も視野に入れているという。
「DNA科学を誰でもアクセスできる身近な存在にする」という、開発メンバーたちの夢の実現も目前だ。ただ、“遺伝子”という超個人的なプライバシーを同時に浮き彫りにするものでもあり、だからこそユーザーたちの倫理観、モラルが問われる問題かもしれない。