未亡人のさくら氏と百田尚樹氏(「やしきたかじんメモリアルウェブサイト」より)

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 賛否両論が噴き出している百田尚樹のノンフィクション『殉愛』(幻冬舎)。果たして本書は、無償の夫婦愛の物語なのか、それとも利権を独り占めした悪女の宣伝本なのか──。が、そんなことより、正直、気になって仕方がないのは、さくらさんが数々の芸能人に贈っている"例のメモ"である。

 なんでも、メモ魔だったというたかじんは、生前、ノートに"メモ"を遺しており、そこでは多くの芸能人やスタッフのことが書かれているらしい。百田センセイが2年間埋まっていた執筆計画を変更してまで『殉愛』を書いたのも、はじまりはたかじんが彼を絶賛している"メモ"をさくらさんに見せられたからだというが、百田だけでなく、そのメモをさくらさんから見せられた人々はこぞって、その感動を口にしている。

 たとえば、眞鍋かをりには、「人間失敗したもんしか成功を知ることはない 遠まわりこそ、人生の味わい」というあいだみつをを彷彿とさせる人生訓的メモが遺されていた。みんなが忘れかけていた事務所移籍騒動を蒸し返された格好だが、本人の胸にはよほど響いたのか、いまではメモを届けてくれたさくらさんと"女子会"を開くまでの親しい仲に。

 また、『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ系)で共演していた竹田恒泰もブログで「(たかじんからのメッセージは)さくらさんの言葉で伝えて下さいました」と述べ、そのメモには「恋愛に関するアドバイスもありました。。。」とのこと。そして眞鍋同様、さくらさんを「控え目で、気立てがよく、どこから見ても、至極素敵な方です」と褒め称えている。

 さらに人気ミュージシャンであるコブクロは、さくらさんから「コブクロ→大阪恋物語」というメモを送られ、9月に大阪で行われた音楽イベント「大坂の陣400年音楽祭」で、たかじんの「大阪恋物語」をカバーした。

 と、こんな具合に、メモを受け取った芸能人は、まるでありがたいお札でもいただいたかのように感動し、崇めているのだ。まさに"大阪の神の啓示"。しかし、漏れ伝わってくるメモの中身をチェックしていると、なかには「?」と首をひねるものもある。

 そのひとつは、無名時代からの付き合いである笑福亭鶴瓶に遺した文言だ。たかじんは、「つるべえと京都でのみたいな」「大阪で何かやりたいな。つるべにさくらをたのもう。あいつええ奴やし。安心やから」と、自分が逝った後のさくらさんを鶴瓶に託しているのだが、『金スマ』でそのメモが映し出された際、こんな言葉も書き連ねてあった。

「つるべ、なんであんなもじゃもじゃあたましてたんや?」

 これは鶴瓶がデビュー時にカーリーヘアだったことを指していると思われるが、年配者ならきっと「は?」と思ったはずだ。なぜなら70年代を知る者であれば、当時、ああいうヘアスタイルが一部で流行っていたことを知らないわけがない。第一、当のたかじん本人だって、実質的なデビューシングル「ゆめいらんかね」(76年)のときはもじゃもじゃ頭だったじゃないか。どうしていちいちこんなことを、たかじんは書いたのだろうか......。

 また、『たかじんnoマネー』(テレビ大阪他)で公開されていたメッセンジャー黒田へのメモには、「黒田のスタイルをやれ えんりょするな テレビ大阪でしかやれんこと 数字はあとから」と書かれていた。このメモを知った黒田は、「ぼく、実はたかじんさんがお元気なとき、こんなこと一回も言われたことなかったんです」と切り出し、「とりあえずどうやって数字を取るかを考えなあかんみたいなことはおっしゃってたんです」と、生前の印象と大きく違うことを述べた。こうした変化について、百田は「(さくらさんの看病を通して)どんどん優しくなっていった」のだと強調していたが、"関西の視聴率男"としての誇りがあったはずのたかじんが、一体どうしてしまったのだろう。

 このように、あちこちにツッコミどころが満載の"たかじんメモ"。しかも、さくらさんが発信するのは書き遺されたメモだけではない。先日、『ノンストップ!』(フジテレビ系)で『殉愛』が取り上げられた際には、さくらさんが直々に番組へメッセージを送り、たかじんは生前、バナナマンのことが好きだったと伝えられたのだ。あんなに東京を毛嫌いしていたたかじんが、まさか東京芸人であるバナナマンを評価していたとは......!と関西人には驚きを禁じ得なかった。

 また、たかじんの"最期の言葉"は、当初、遙洋子がさくらさんから聞いた話として「ちょ〜飲みに行ってくるわ」と明かしていた。それが『殉愛』では、さくらさんに向けた「アイラブユー」という言葉になっていたのだが、このように、さくらさんの話には"ブレ"もある。そして、当代きっての人気作家である百田が、面識もなかったたかじんの本を執筆しようと決意するまでの流れが、まるで誰かの手によってお膳立てされているように"劇的"なのも、引っかかる点だろう。

 それゆえ、ネット上では「メモの字がかわいすぎて、60過ぎのオッサンが書いたとは思えない」「鶴瓶を"つるべえ"と書くか?」など、このメモは実際にたかじんが書いたものなのか?と訝しがる声も噴出。もしかしたら、さくらさんの"たかじんメモ"は、大川輶法の霊言か"イタコ"の口寄せのようなものだろうか。

 だとしたら、今後、さくらさんによって、どんなたかじん像が明かされていくのか、ますます楽しみだが、最後に、メモの発信元であるさくらさんと百田には、『金スマ』での映像に映っていた、こんなたかじんメモの一文を送ろう。

「タレント、女優も、暴露番組増えた プライバシー切り売りてどやねん?」
(サニーうどん)