やくざ群像映画『仁義なき戦い』シリーズは裏切りや寝返りが相次ぐ暗闘のリアル感が、仁義を重んじるそれまでの任侠映画のセオリーを覆した。主演の菅原文太をはじめ、梅宮辰夫、松方弘樹、田中邦衛らがチャンスをつかんだ。1973年の第1作以降、『仁義なき戦い 代理戦争』『同 頂上作戦』など計5作のシリーズ化となった。美能幸三の獄中手記を下敷きに、作家・飯干晃一が書いたノンフィクションが原作。終戦直後の広島県で起きたやくざ抗争に基づく。
『蒲田行進曲』『バトルロワイアル』を撮った深作欣二(ふかさく・きんじ)監督の代表作だ。手持ちカメラを多用して撮ったダイナミックな暴力シーンはアクション映画の世界的なお手本になった。『キル・ビル』でオマージュを捧げたクエンティン・タランティーノ監督もファンという。やくざを美化しない「実録」スタイルや、主要人物の無残な死なども旧来の任侠映画と一線を画した。好演した成田三樹夫、金子信雄、内田朝雄、川谷拓三らはすでに世を去った。[2014年9月2日]
[参考記事]津島利章氏(死去) 2013/11/28 日本経済新聞 夕刊 17ページ