北海道新聞:吉田証言記事「誤報とは言い切れない」
毎日新聞 2014年11月17日 21時48分
従軍慰安婦報道を巡り、朝鮮人女性を強制連行したと証言した吉田清治氏(故人)に関する記事を「信憑性(しんぴょうせい)が薄い」として17日取り消した北海道新聞社は、「吉田氏本人が亡くなっており、(証言内容を)完全に否定できる材料は得られなかった」として「誤報とは言い切れない」との認識を示した。また「(17日朝刊)紙面で丁寧に説明し、読者に誠実な対応をした」として、関係者の処分はせず、検証のための第三者委員会設置なども検討していないとしている。
記事取り消しが遅れたことについて同社経営企画局は「調査結果を慎重に検証していたため」と説明した。8月5日に朝日新聞が「吉田証言」の記事を取り消したことなどから、検証を始めたという。
北海道新聞が取り消したのは、同紙が吉田氏に直接取材し1991年11月22日の朝刊で「朝鮮人従軍慰安婦の強制連行『まるで奴隷狩りだった』」との見出しで報じた記事1本。吉田証言に関しては、この記事から93年9月14日朝刊まで、共同通信配信の1本を含む計8本を掲載した。他の7本は、吉田氏を巡る動きなど事実関係を報じており、取り消さないという。
一方、同紙は91年8月15日朝刊で、元慰安婦の韓国人女性が初めて実名で名乗り出たことを報じたが、その記事で「慰安婦」と「女子挺身(ていしん)隊」との混同があったと説明した。92年1月以降は混同しないようにしてきたとしている。
北海道新聞は、記者から報道経緯を聴いたり、韓国の古老や郷土史家らを訪ねたりして記事を検証。17日朝刊1面で「『吉田証言』報道をおわびします」とし、特集記事2ページで検証結果などを掲載した。【小川祐希】