トレーダーのDNA持つファンド、自己勘定デスク閉鎖で好機
11月17日(ブルームバーグ):ドーン・フィッツパトリック氏はトレーダーになりたかった。1992年にペンシルベニア大学ウォートン校の女子学生だった同氏にとって、それはオコナー・アンド・アソシエーツ(本社シカゴ)に就職することだった。「就職したい会社はオコナーだけだった。面接を受けたのもオコナーだけだ」と語る同氏は、4年生の時に採用された。
フィッツパトリック氏(44)が率いているオコナー・グローバル・マルチストラテジー・アルファ・ファンドのDNAには、トレーダーの本能が組み込まれている。同ファンドは34人の運用担当者らが考え出した15の投資戦略を組み合わせて運用される。ブルームバーグ・マーケッツ誌12月号が報じている。
米国株のロング・ショートや欧州クレジット、合併裁定などさまざまな戦略を組み合わせる目的は、主要な資産クラスとの相関が比較的小さいリターンを確保することだ。この方法は奏功し、48億ドル(約5600億円)規模の同ファンドのリターンは2000年6月の運用開始から今年7月末までで年9.9%。ブルームバーグ・マーケッツ誌が入手した投資家宛て書簡から分かった。ボラティリティは同7.9%だった。
世界の株式の指標であるMSCI・AC・ワールド指数 の同期間のリターンは年4%、ボラティリティは同16.5%。オコナーのファンドのMSCI指数との相関は0.45、米国債の指標との相関はマイナス0.16だ。
多数の戦略をまとめることは複雑なリスク管理を必要とする。数学者のマイケル・グリーンボーム氏が商品トレーダーのエドムンドとウィリアム・オコナーの支援でオコナーを1977年に設立して以来、同社はこうしたリスク管理を行ってきた。
ブラックショールズ・モデル活用自社資金で取引するオコナー・アンド・アソシエーツは1973年以降の2つの展開を生かした。1つは世界初のオプション取引所であるシカゴ・オプション取引所(CBOE)の開設。もう1つはオプション価格を計算するブラック・ショールズ・モデルの発表だ。マイロン・ショールズ氏はこのモデルの開発によって、ノーベル経済学賞を1997年に受賞した。同氏はオコナー・アンド・アソシエーツが定量的リスク管理システムを開発した最初の会社だと考えている。「オコナーはオプションの価格設定の枠組みをオプションと原資産である株式の取引に活用するばかりでなく、フロアトレーダーが取るリスクの監視にも使った」とショールズ氏は述べた。
フィッツパトリック氏がオコナー入社後にまず与えられた仕事はアメリカン証券取引所での事務だった。それから、CBOEの株式オプションの立会場でマーケットメーク(値付け)をするようになった。同氏が入社した後すぐに、オコナーはスイス銀行に買収された。同行はその後にUBS に買収された。オコナーのトレーダーらはその後、銀行内のさまざまな分野へ配属されていったとフィッツパトリック氏は話した。
1998年に再結集1998年に、オコナーのトレーダーらが再結集してUBSオコナーを作った。現在フィッツパトリック氏が率いている部門だ。トレーダーらは2年後に、部門の資産57億ドルの大半であるマルチストラテジーファンドを開始した。「バンド再結成のような感じだった」とフィッツパトリック氏は振り返った。
ファンドは主に株式と社債に投資する。「流動性を重視している。ポートフォリオのほとんどが単純な証券なのはそのためだ」と同氏は話した。
金融業界にあるマルチストラテジーファンドの中には、各戦略のチームがそれぞれ別個に運用しているところもあるが、UBSオコナーでは運用者に情報を共有させる方が良いと考えたとフィッツパトリック氏は述べた。投資銀行の自己勘定取引デスクのトレーダーらは総じて、さまざまな資産クラスと戦略の間で協力し合うのがうまいという。ボルカー・ルールのために多くの銀行が自己勘定デスクを閉鎖したため、UBSオコナーにチャンスが生まれた。
協力が利益につながるチーム間の協力が収益機会につながる例としてフィッツパトリック氏は、合併裁定の取引を挙げる。合併案件に絡んで利益を上げようとするファンドは通常、株式の売買でこれを行うが、金融危機後は変わったという。「クレジットと転換社債を使った合併裁定ポジションの機会が大きく増えた」という。「危機前はこうした債券が売り出されても、売買は投資銀行内部の自己勘定デスクに限られていたのだと思う」と同氏は分析した。
UBSオコナーでは転換社債裁定取引のチームは合併裁定取引チームの隣に座っている。案件が発表されるとすぐに、前者のチームは転換社債があるか、合併に際してその社債がどう扱われるかを知ることとなり、その債券の特性とどこで買えるかを合併裁定の運用者に伝えるという。
15のチームは毎月、それぞれのアプローチのリスクとリターンについての定量分析を持ち寄り、全体の中での相互作用について検討する。ある戦略が単独ではリスクが高くても、ファンド全体のリスクを下げる場合もあるとフィッツパトリック氏は説明した。
ファンド内の最大ポジションは資本の2.5%程度だという。これによってある投資が失敗しても、損失を抑えることができる。「朝、目を覚まして新聞を見た時、1つのニュースが私の1日をめちゃめちゃにすることはない」と同氏は語った。
原題:O’Connor Hedge Fund Scores Gains Where Prop Desks No Longer Rule(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Jon Asmundsson jasmundsson@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Michael Serrill mserrill@bloomberg.net Rocky Swift, 蒲原 桂子
更新日時: 2014/11/17 07:03 JST