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●とにかくラクにかけられる“鼻パットなしメガネ”
まずメガネが顔に装着するアイテムである以上、軽さや掛け心地、体への負担の軽減といった部分は見過ごせない。その点、今回の展示で目を引いた面白いメガネは、軽さや体への負担の軽減を本気で考えた製品が多かった。なかでも、ブリッジ・コーポレーホンの鼻パッドのないメガネフレーム「NEOJIN」は、メガネのイノベーションといえる製品。すでに発売から3~4年経っているのだが、あまりの斬新さに世間が付いてきていなかったようで、最近になってようやく注目され始めたという。
通常のメガネはフレームを鼻と耳に引っ掛けて顔に固定するのだが、NEOJINは鼻パッドをなくした代わりにテンプル(つる)の中ほどにあるパッドでほお骨を押さえるようにして固定するスタイルなのだ。その形状はあまり安定しているようには見えず、筆者も写真だけ見たのなら見過ごしていたかもしれない。しかし、実際に掛けてみて驚いた。しっかりと固定されているのに、鼻に何の力も加わらないのだ。そして、今までのメガネは体にどれだけ負担をかけていたのだろうと思ってしまうほど、ストレスフリーでラクなのだ。
ほお骨の触れている部分への負担はほとんど感じず、それ以上に鼻部分がメガネと接していないことによるラクさを感じる。顔を振っても、軽く走っても問題はない。女性なら化粧が落ちる心配がなく、レンズも汚れにくい。そして機能だけではなく、フレームの種類も豊富で好きなデザインを選べる。
ケイ・アンド・アイ「鼻パッドのないメガネ」もその名の通りのメガネだが、アプローチの方法が違っている。こちらはテンプルの先を耳の穴に引っ掛けることでメガネを顔に固定する構造。テンプルの先が伸縮することで顔に合わせられる仕組みも面白い(こちらは実際に試せる製品がなかったので、実際の掛け心地が確認できなかったが)。異なるアプローチで複数の“鼻パッドなしメガネ”が展示されているのを見ると、今後この方向は一つのジャンルになっていくのではないかという予感がする。
●軽さを追求した“レンズインレンズ”
軽さを徹底的に追求していたのが、SUGIMOTO DESIGN STUDIOの「design88(デザインハッパ)」。フレーム部分に新素材の弾性レンズを、内側に度付きレンズを使った“レンズインレンズ”が特徴で、レンズとフレームの境界がないように見える。
いわゆる縁なしメガネのようなルックスだが、度付きレンズ部分が小さいため、度が強くてもレンズが分厚くはならない。そのぶん軽く薄くできてフレーム自体が5gと軽いので、全体でも10g程度しかない。度が強い人にこそ使ってもらいたいメガネだそうだ。
さらに、鳥の翼にヒントを得たというテンプルとヒンジは無理なく柔軟に開き、優しく顔にフィットするので、掛けていて重さを感じにくい。本格的な販売はこれからとのことだが、このメガネならレンズの厚さや重さに悩んでいる人はずいぶん助かると思う。
●ファンデーションが付きにくい鼻パッド
鼻への負担の軽減が大きなテーマなら、鼻パッドの快適さも重要。ハセガワ・ビコーのブースでは、さまざまな交換用鼻パッドを用意し、メガネの掛け心地の改善を提案していた。
例えば「クッションパッド C-One」は鼻パッドの装着部分が柔軟に動くうえにバネのように伸縮するので、鼻の最適な部分にパッドが当たるようになっている。女性用の「パイロンEXパッド」はクッション性があって付け心地が快適なのはもちろん、表面がツルツルのパイロン樹脂が使われているためにファンデーションが付きにくく、付いても拭けばサッと取れてキレイになる。これらの鼻パッドは有名メーカーのメガネにも多く採用されているそうだ。
●上下を反転させて使うメガネ!?
ほかにも、さまざまなアイデアや技術を使ったメガネが展示されていた。
例えば、オーケー光学の「ターンビュー」。上下を反転させて掛けられるメガネで、遠近両用で偏光サングラスとしても使える構造になっている。
レンズは下部が読書用レンズ、それ以外は近視用の偏光サングラスレンズになっているのがポイント。あまり手元を見ない山歩きなどではメガネをひっくり返して読書用レンズ部分を上にすれば、上以外は近視鏡を通して見えるため、足下がよく見えるようになるわけだ。上下対称なテンプルやひっくり返しても鼻にフィットする鼻パッド、反転させても違和感のないデザインなど、良く考えられている製品だと思う。
度付きレンズとサングラスの組み合わせを考えた製品としては、加藤八の「SWITCH-MAG」が面白かった。メガネの上にサングラス用レンズを重ねるというアイデアはそれほど珍しくないが、このSWITCH-MAGは手持ちのメガネのレンズの端に小さなマグネットを埋め込み、レンズのカーブと大きさにピッタリ合わせたサングラス用レンズを磁力でくっつけるという製品なのだ。
磁石は直径2.2ミリと小さいので目立たず、かなり強力にくっつくので、レンズが揺れたり落ちそうになったりする心配がない。レンズを1枚足すので当然重くはなるのだが、従来の前掛け式よりは軽いし、まぶしいときだけ一時的に使用するなど、このSWITCH-MAGだからこそできることも多い。
●眉が簡単に描けるメガネまで
REIKO KAZUKIの「かづき・アイブロウデザイングラス」は、女性が眉を簡単に描けるように作られた、眉描き専用メガネ。上部に眉用テンプレートが付いていて、それをなぞるだけで左右対称の眉を適正な位置に描けるという仕掛けだ。
しかも老眼鏡タイプも用意されているから、老眼の方でもしっかり鏡を見ながら描ける。実物を見てしまうとシンプルなアイデアに思えるが、実用品として使えるレベルで製品化するのはかなり大変だったと思う。テンプレートの上のラインに合わせても、下のラインに合わせても描けるようになっているなど、使い勝手がよく考えられているのだ。
ほかに面白かったのは、レッドブル・レーシングの「Bulleye 001」。普通にサングラスとして使えるのに、角度によってレンズ表面にレッドブルのシンボルである赤い雄牛が浮かび上がる(技術の詳細は不明だそうだ)。また、ベルギーのメガネブランド「HOET(フート)」のサンバイザー一体型サングラスも目を引いた。
前者には広告媒体としてのメガネの可能性を、後者はまぶしさに対して本気で立ち向かおうとしている姿勢を感じた。
(文/納富廉邦)
最終更新:11月6日(木)11時49分
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