きまぐれな日々

 昨日(16日)投開票が行われた沖縄県知事選は、私の予想よりもずいぶん差が小さかった。15ポイントを超える差は余裕でつくだろうと思っていたのだが、そこまでの差にはならなかった(14.3ポイント差)。保革共闘の形でなければ仲井真弘多に負けていたかもしれないと思った。翁長雄志候補から票を引きはがそうとしたと思われる喜納昌吉(背後には植草一秀がいた)が、もっと有権者を引きつける候補であったなら、彼らのもくろみが成功して仲井真が勝ったかもしれなかった。昨年、あれほどひどい掌返しをやらかした仲井真弘多でさえあの程度の票は取れるのか、自民党侮り難し、と改めて思わされた。

 とはいえ選挙は仲井真弘多の完敗ではあった。自民党に全くダメージがなかったとはさすがにいえないのだが、経済政策の成果が怪しくなってきて、安倍政権の人気がいつまで続くかわからない情勢を恐れてか、先週の記事にも書いた衆議院の解散総選挙が、にわかに現実味を帯びてきた。それも、安倍晋三が外遊中で日本にいない間に、着々と解散のレールが敷かれている、もちろん、安倍晋三は外遊先から指示を出していたに違いない。その安倍は今日(17日)帰国する。解散の日は19日とも21日ともいわれ、12月2日公示、12月14日投票という日程はほぼ確定という話だ。

 その解散だが、これは安倍晋三の「自己都合解散」である。2005年に小泉純一郎がやった「郵政解散・総選挙」と少しだけ似ているが、小泉には曲がりなりにも「郵政民営化」という具体的な政策の目標があったのに対し、安倍晋三にはそれすらもなく、ただひたすら政権を延命した一心から出ていて、大義名分も何もない。これほど権力者のモラルの低さを感じさせる解散もないだろう。手前勝手な解散という点では、安倍の母方の祖父・岸信介のライバルであった吉田茂を思わせる。これはもはや「党利党略解散」ですらなく、やはり安倍晋三の「自己都合解散」としか言いようがない。

 自民党執行部も安倍に負けず劣らずモラルの低い人間ばかりと見え、高村正彦など、「念のため解散」などというわけのわからないネーミングを披露して激しい批判を浴びている。私は以前から高村正彦を全く買わないのだが、見下げ果てた人間としか言いようがない。こんなのによく議員が務まるものである。

 安倍晋三は一応、「三党合意の解消」を争点だと強弁すると見られる。長谷川幸洋という新自由主義者にして安倍晋三の御用ジャーナリスト(中日新聞・東京新聞の論説副主幹)は、「消費増税見送り解散&総選挙には大義がある」などと吼えている。余談だが、この長谷川幸洋は第2次安倍内閣成立以来、ずっと安倍晋三のブレーンである。そんなことも知らなかったおめでたい「小沢信者」がいたようなので、ここに強調しておく。

 その長谷川は、こう書いている。

私は10月22日午後のニッポン放送『ザ・ボイス〜そこまで言うか』(書き起こしはこちら)で初めて解散総選挙の可能性を指摘して以来、このコラム(初報はこちら)や『週刊ポスト』の「長谷川幸洋の反主流派宣言」(抄録はこちら)、あるいは『たかじんのそこまで言って委員会』など、いくつかのテレビ番組でも一貫して「増税先送りから解散総選挙へ」というシナリオを強調してきた。

ついでに言えば『ザ・ボイス』や「反主流派宣言」では、景気の見方について日銀最高幹部の間で意見が割れている内幕についても指摘している。それからまもなく10月31日に日銀が追加緩和に踏み切ったのはご承知のとおりだ。強気派の黒田東彦総裁が敗北したのである。

マスコミには「追加緩和は消費増税の環境づくり」といった報道が相次いだが、それがまったくトンチンカンだったのは、増税先送りが確実になったいまとなってはあきらかである。(後略)。

(長谷川幸洋「ニュースの深層」2014年11月14日付「なぜ記者はこうも間違うのか!? 消費増税見送り解散&総選挙には大義がある」より)


 これは、長谷川幸洋が政局を言い当てたというより、長谷川のシナリオに安倍晋三が乗ったというのがより真実に近いのではないかと私は勘繰っている。

 長谷川は、「マスコミには「追加緩和は消費増税の環境づくり」といった報道が相次いだが、それがまったくトンチンカンだった」と書いているが、日銀総裁の黒田東彦は消費税率引き上げを前提に追加緩和を行ったと国会で答弁している。それは、前述の「小沢信者」氏が長谷川幸洋と一緒くたにした歳川隆雄という人が書いている。この人についてはよく知らないが、ちょっと調べてみたところでは「鵺」(ぬえ)的人物のように思われる。

日本銀行の黒田東彦総裁は12日午後の衆院財務金融委員会(委員長・古川禎久前財務副大臣)に出席し、維新の党の伊東信久議員の質問に対して「(10月31日に開いた金融政策会合で決めた追加緩和について)2015年10月に予定される消費税率10%への引き上げを前提に実施した」と答弁した。

安倍晋三首相が消費税率8%を10%へ引き上げる再増税決断を行えるよう援護射撃として追加金融緩和を決めたという「告白」である。重大発言である。

急浮上した年内の衆院解散・総選挙報道があるにしても、金融政策を担う日銀のトップが財政政策の根幹に関わる消費再増税の実施を後押しするため「異次元緩和第2弾のバズーカ砲」を撃ったという黒田発言を、なぜマスコミ各社は報道しないのか理解に苦しむ。

(歳川隆雄「ニュースの深層」2014年11月15日付「黒田東彦発言は大問題、なぜ新聞・TVは報じないのか」より)


 黒田東彦が「増税派」だったことはどうやら間違いないようだ。財務省が「増税派」であることは彼らにとって「歳入が命」であることを考えれば自明なので、安倍晋三は間違いなく成立するであろう第3次内閣において、これまでと同じように日銀や財務省と良好な関係を保つことは難しいのではないか。第3次安倍内閣は、絶えず「ポスト安倍」の名前が取り沙汰される政権になり、同時に中国や韓国に対する関係も、ネトウヨの期待する強硬姿勢を取り切れず、何よりも経済政策の失速によって、現在安倍晋三が皮算用を弾いている2018年までの超長期政権にはなりそうにもないというのが私の見立てである。ここで「超長期政権」と書いたのは、第1次と第2次で合わせて3年にもなる安倍政権は、現時点で既に分不相応で迷惑千万な長期政権であると考えているからである。

 ところで、今年後半の政治日程が空白になっていて、どうもこの時期に安倍晋三が衆議院解散を仕掛けるのではないかとは前々から言われていたが、その名目を「消費税率再引き上げ見送りの信を問う」などというそれこそトンチンカンなものにすると安倍が決断したのは比較的最近だろう。私は安倍晋三が谷垣禎一を自民党幹事長に任命した時、安倍は消費税率を再引き上げするつもりだろうと思っていた。財務省も日銀(黒田東彦)も消費税率引き上げ派であることは明らかだったこともある。

 しかし、長谷川幸洋もその一員である安倍晋三のブレーンも一枚岩ではない。安倍晋三へのご注進もその内容は様々で、中には予定通りの税率引き上げを進言した人もいただろう。安倍晋三が「消費税率再引き上げ延期」を選んだのは、単純に「その方が衆院選に確実に勝てそう」だからに過ぎない。

 つまり、安倍晋三にとってはもともと「今年後半の衆議院解散ありき」だった。安倍晋三は強気に見えてその実、今後2年間の政権運営で内閣支持率を下げない自信など持っていないと思われる節がある。そこに「消費税率引き上げ延期を『争点』にして解散総選挙をやれば必ず勝てますよ」とご注進に及んだのが長谷川幸洋だったのではないか。もちろん、長谷川の他にも同様の進言をした人間は少なからずいただろう。それに安倍晋三が飛びついたというのが私の想像だ。

 その結果、空前の「大義なき解散総選挙」がほぼ確実に行われることになった。「念のため解散」などという腹立たしいネーミングは、この解散の本質をよく表している。

 安倍晋三を支持する右翼が多い2ちゃんねるを見ていると、解散話が現実味を帯びた当初、税率引き上げ延期の自民党と予定通りの税率引き上げを唱える民主党の戦いになって自民党の圧勝だ、とか、維新の党や次世代の党は現有勢力を維持するが民主党は議席を減らす、などといった、政治音痴に関しては「小沢信者」と「ネトウヨ」は本当にいい勝負だなあと思わせる好き勝手な書き込みが並んでいた。

 民主党が税率引き上げを容認して税率再引き上げを「争点」から外すのは最初から見えていたし、現にそうなった。また、分裂を繰り返して小選挙区での勝ち目がなくなった小政党、たとえばみんなの党の党首・浅尾慶一郎は、古巣民主党との合流話を持ち出すありさまである。維新の党の江田憲司も、渡辺喜美とは反りが合わなかったが、海江田・浅尾連合となら組みたいと思っているであろう。一方、橋下徹や大阪維新系の議員は、間違っても民主党と組むつもりはないだろう。

 以上から、今後衆院選が公示されるであろう12月2日までの間には、醜悪な数合わせ劇が繰り広げられることは確実だ。現在の民主党の代表が海江田万里ではなく小沢一郎であれば、その「剛腕」とやらの見せ場であったに違いない。全盛期の小沢なら、みんなの党と維新の党をそれぞれ割って、浅尾派と江田派を民主党に合流させてしまうくらいのことはやったかもしれない。

 小選挙区制というのは、野党がそういうことをしなければ選挙に勝てない制度なのだ。つまり、少なくとも現在の日本において、小選挙区制とは政策・理念による政界再編成を阻害する選挙制度なのである。時たま「リベラル」系のブログで、政策や理念による政界再編成が起きればいいな、などと書かれているのを時折目にするが、本当にそれを求めるなら、小選挙区制を廃止して比例代表制中心の選挙制度を導入せよとの論陣を張るべきだと声を大にして言いたい。そして、その際には小沢一郎が小選挙区制を導入させたことに対する的確な批判が必要不可欠である。

 どうやら消滅に向かいつつある「みんなの党」は、過激な新自由主義政党であって私は買わないが、唯一買えたのが同党の衆議院の選挙制度改革案(但し議員定数削減を除く)だった。以前にも書いたことが同党は事実上の全国一区の比例代表制を提言していた。「一人一票比例代表制」という。

 この案を宣伝した同党の山内康一のブログ記事についたコメントは、多くが比例代表制を批判し、現行の小選挙区制を擁護していたが、これを見て呆れた私は、『kojitakenの日記』の記事「みんなの党・山内康一のブログのコメント欄に見る日本の有権者の不毛」(2013年4月6日)にこう書いた。

 このように、トンデモコメントばかりで辟易してしまう。政治家のブログにコメントを投稿するのは、日本国民の中でも政治的意識の高い層の人たちだろうと思うのだが、それでもこの超低レベルだ。何よりひどいと思うのは、小選挙区制の現状を無批判に受け入れ、それに異を唱える者を「村八分」にしようという卑しい心根である。

 断っておくが、私は過激な新自由主義政党である「みんなの党」や山内康一議員など全く支持しないし、同党の選挙制度改革案にしても、定数削減や一院制には大反対だ。ただ、同党が提唱する「一人一票比例代表制」の選挙制度には見るべきところが多いと評価しているだけである。

 上記に列挙したようなコメントのように、自分と「世間」を同一化して、異論を封じ込めようとする人間があとを絶たない限り、日本という国はいつまで経っても良くならないだろう。


 そして、今回も「野党がバラバラな今のうちに解散してしまえば確実に衆院選に勝てる」とみた安倍晋三の手前勝手な解散劇が間もなく起きようとしている。小沢一郎が導入させた小選挙区制が続く限り、同様の解散は今後も繰り返され、日本の政治をますますダメにしていくだろう。
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自由な解散権というのは、やっぱり与党有利で色々問題が多いなと。みんながみんな適切なタイミングで打てるわけじゃないけれど。

2014.11.17 11:15 URL | 柊 #- [ 編集 ]

小沢信者と言って馬鹿にして見下すことで、同じ反自民を引き離そうとしているようにしか、今回の記事からは感じられない。
一つ事実を言うならば、小沢が小選挙区制を取り入れたのはあくまでも二大政党制になることを前提とした物であり、決して一強多弱の局面を作るためではない。
今は小沢信者がなんだとか馬鹿なことを言っている場合ではなく、反自民をまとめることが必要だと思っているので、今回は残念な記事だと思いました。

2014.11.17 18:34 URL | 反自民反共産 #.DL/se92 [ 編集 ]

(毎度毎度のことだけどw)選挙制度について、以前にTwitterで話題になったことがあって http://togetter.com/li/661614 、「90年代の政治改革は政党改革を促すものだったと思うのですが、小選挙区制と政党助成金以外の整備が進んでいませんからね……」って呟きに対し、自分が「寧ろ選挙制度を比例代表制主体にするとかすれば、政党改革を促すインセンティブが発生したんじゃないかと思うんだけどね」って応えたんですよね。

実際、比例代表制だと政党が政策や立場によって成り立つ公器として認識され易いってこともあるし、こと拘束名簿方式だとその名簿の順番を決めることについて有権者に説明する義務も出てくるなど、政党の体質を変える・政策中心の政党編成になるインセンティブがある訳で。しかし犬や総評議長が自民党員になってたり、オレンジ共済事件などでゼニの遣り取りで順位が決まったりするなど導入当初からスキャンダルが出てきて、それで比例制を如何に改善するかって方向に向かわず却って比例制はダメな制度・殊に個人への投票が出来ないのはおかしいってことになっちゃいましたからね。

オマケに衆院選でも小選挙区と比例代表の並立制になった訳ですけど、その中での「復活当選」(外国でも普通にある制度だったりするのですが)が、ゾンビ議員云々ってネガティブに言われたりして、結局比例代表制の評判を地に落としてしまうことになってしまったんですよね。

で、小選挙区に否定的な方々には比例代表制より中選挙区制に戻せってのが結構支持されてたりして「リベラル」にも少なからず存在したりするんですけど、都道府県議会議員選挙を見ていると解る通り中選挙区だから「リベラル」が有利になる・「リベラル」が伸びるってのこそ神話に等しかったりするものなんですよね。そもそも戦後の中選挙区制にして(自民党一党優勢でも幾つかの政党に別れていたりしたとしても)「リベラル」ってのか「革新」は1/3を超えることはあれど過半数を取ったのは数回もなく、その時でさえ自民党ないし「保守」が一部野党を取り込んだりして政権を握り続けていたってことを忘れているんじゃないですかね?

何と言うのか日本人の政治観って、政策だ価値観だと建前で言いながらいざ投票する段になると「あの人は信頼できそう」「あの人は自分の知り合いだ」って「人」を選ぶ選挙になってしまうってのが大きな問題だと思うんですよね。しかもそのための判断材料を与えるメディアや評論家連中も「人」や政局の問題に終始してて、加えて最近では有権者受けする様なキャラ立ちに乗っちゃったりする。それで肝心の当事者の抱えている問題を取り上げるのは時に思い出す様に出てきても、それに注目されず観客参加型民主主義になっちゃっているのが今日の惨憺たる状況に成り果てたって自分は考えてます。

2014.11.17 19:53 URL | 杉山真大 #- [ 編集 ]













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