伊勢湾に面した三重県津市に阿漕(あこぎ)浦という浜がある…
伊勢湾に面した三重県津市に阿漕(あこぎ)浦という浜がある。この一帯は伊勢神宮に近いため、神域として古くから殺生が禁じられていたそうだ
▼昔、その海でひそかに漁をする男がいた。名は平治。何度も繰り返すうちに近在住民の知るところとなり、ついには捕らえられて海に沈められてしまう。「際限なくむさぼる」の意の「あこぎ」は、ここの地名に由来するという
▼こちらの密漁は、あこぎに「根こそぎ」まで加わっているようだ。中国漁船とみられる大船団がサンゴの乱獲を続けている。密漁とは夜陰に紛れてこそこそ行うものと思っていたが、今回は白昼堂々の乱行。漁ではなく資源の強奪、収奪と化している
▼先の日中首脳会談で、ようやく両国トップの対話が実現した。国と国の関係に改善の兆しが見えたのは喜ばしいかぎり。けれど、目の前でこれほど傍若無人な姿を見せられたのでは、国民の感情は好転するはずもない
▼地元の名誉のために付け加えると、阿漕浦の地には全く違う物語が伝承されているそうだ。平治が禁を犯してまで漁をしたのは、病気の母親に滋養の魚を食べさせるため。つまり彼は我利我利の亡者ではなく孝行息子だった、という解釈である
▼なぜ、いま?の解散、総選挙が近づいている。使う税金は約800億円とか。これも国家国民のため。党利党略、私利私欲ではないと信じたい。随分とあこぎなやり口に見えるけれど。
=2014/11/17付 西日本新聞朝刊=