連載当初、彼は静かに黙々と、それでも力強く食べ進めるのでした。
今年2014年は不朽の名作と呼ばれる日もそう遠くないかもしれない漫画版「孤独のグルメ」が月刊PANJA誌上で産声を上げて早20年とある意味記念すべき年。
漫画の方は2008年4月再リリースの新装版以降は週刊SPA!で不定期掲載、2012年1月スタートのドラマ版はSeason4まで重ねる順風満帆っぷり、認知度がじわじわ高まりつつあることを実感しております。
- 作者: 久住昌之,谷口ジロー
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: コミック
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そんな同作品の魅力の1つとして挙げられるのが主人公・井之頭五郎(※以下、ゴローちゃん)が発する独特の言い回しでして、「孤独のグルメ」は知らなくても冒頭の「人間火力発電所」だの「なんだか凄いことになっちゃったぞ」だとかの迷名セリフを1度でも目や耳にされた方も多いんじゃないかと思うのですが、そもそもそれらはなかった、元々うぉオンなんてありませんでしたよということで、今回は1994年から1996年に掲載されたPANJA版と単行本版との主なセリフ違いをまとめてみましたので、相当ヒマな方のみ興味のある方はゴゴゴゴゴローと読み進めていただければこれ幸いです。
「(まいったな…出鼻をくじかれた)」@第03話:PANJA1994年12月号92P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
がーんだな、じゃなくまいったな。結局出鼻をくじかれるのは一緒なんですが、ほんの少し言い回しが変わるだけで不思議と読者に与える印象も変わってくるのかなーと。
モデルとなった「梅むら」については己【おれ】とみんなのごはん上で2度したためておりますが、20年の時を経た今ではテントの高級甘味は甘味処に変更、メニューから雑炊や雑煮の表記はキレイサッパリなくなっており、これから同店を訪れる皆々様におかれましては出鼻をくじかれる心配はございませんのでどうぞ安心して足をお運びください。
「ジェットじゃないよなあ……」@第06話:PANJA1995年03月号94P掲載
上:PANJA版、下:単行本版。
数ある五郎'sセレクションの中でも決してマネしたくないのが新幹線車内で仕上げるジェットボックスシウマイテロなんですが、今ではそのジェットボックスも東京発のひかり55号自体もなくなりある意味平和そのもの。そうそう歯車がズレる心配もなくなりましたので安心して乗車できるってもんですね。
「(俺はまるで人間火力発電所か…)」@第08話:PANJA1995年05月号75P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
孤独のグルメ史上最も有名な1コマではありますが、約20年前の初掲載時のセリフには「うぉオン」も「人間火力発電所だ」の言い切りもなく、どちらかというと大食漢の自分自身に淡々と独りツッコミを入れている感じでした。
今でこそ孤独のグルメ=うぉオン、うぉオン=孤独のグルメと言っても過言じゃない状況ではありますが、迷言名言は初めから迷言名言じゃなかったことを伺わせる貴重なカットとも言えますね。
左:PANJA版、右:単行本版。
ところで、人間火力発電所として第2の人生を切る前、ライスが来ないことにイライラするゴローちゃんのセリフもまた微妙に異なるのでした。
単に語尾に「が」が入る入らないだけの違いなんですが、単行本だと随分とアグレッシブにとらえられますね。
この後すぐにライスが到着していなかったら従業員はアームロックからの鉄板に顔面ジュージューの刑に処せられていたことでしょう。
「モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず自由で救われてなきゃあダメなんだ」@第12話:PANJA1995年09月号73P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
「なんというか」がなくなり断定具合に拍車がかかってますね。
先の人間火力発電所同様に孤独のグルメを代表するセリフの1つではありますが、なんというかゴローちゃん、相当怒っていたんでしょうね。
左:PANJA版、右:単行本版。
なお、横暴な店主にアームロックを敢行した際のスタッフ呉さんの一言も「そこまで!」から「やめて!」に変わってますね。確かに「そこまで!」だと格闘技のレフェリーみたいですもんね。気のせいか呉さんが全然弱そうに見えない。
「うーん 腹も減ったし夜食でも食ってひと息つくか」@第15話:PANJA1996年01月号71P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
単行本が出るまでの間に作者の身に何があったんだって思えるくらいの痛快オヤジギャグですが、狙い通り?見事に後世に語り継がれる校正と言えますね。
上:PANJA版、下:単行本版。
「なんだか凄いことになっちゃたぞ」も「なんだか凄いな」と至って普通。
そりゃ深夜のコンビニで買いまくった食料をテーブルにおっ広げて「凄いことになっちゃったぞ」だと本来笑止千万なワケですが、それでもファンが気軽につぶやく現状に鑑みると、まさになんだか凄いことになっちゃったぞー。
「(こういうの好きだな シンプルで。ソースの匂い…)」@第17話:PANJA1996年03月号74P掲載
左:PANJA版、右:単行本版。
かつてはまともだったんだと、このコマを目にした瞬間は驚きよりも心がほっと安らぎました。なお、ソースの味が男のコか否かは引き続き検証中です。
それで、この第17話をもって「第1部 完」としており、最終ページの柱コメントにも…
誰の中にも井之頭五郎は住んでいる。春からの第2部に乞うご期待!
と記されていたのですが、残念なことにそれは実現することなく、17話から3ヶ月後の「渋谷百軒店の大盛り焼きそばと餃子」の掲載を最後に、それから12年もの長期休載に突入するのでした。
あと、誰の中にも井之頭五郎は住んでいないと思います。
「(ああ…白い飯が食べたい)」@特別編:PANJA1996年06月号74P掲載
上:PANJA版、下:単行本版。
餃子と焼きそばを前にライスが食べられないことを心底寂しそうにぼやくゴローちゃんですが、これから12年後に掲載される「東京都内某病院のカレイの煮つけ」編でも引き続き自分が食べたい物を食べられないままという不変な点が大変味わい深いですね。
さまざまな土地をボンヤリ歩き、腹を空かせ、飯を入れる。井之頭五郎は、そんな時間だけに生きている
そんな時間だけにって、柱コメントにまでひどい扱い。
気になる単行本第2巻は2015年春頃発売か?
「孤独のグルメ」の新作マンガの原作を作った。今年2巻が出る情報があったけど、来年になりそうです。でもそのぶん最後までがんばります。
— 久住昌之 (@qusumi) 2014, 10月 22
「最後までがんばります。」の最後まで、が気になりますが楽しみですね。
単行本未収録の直近10話分については過去にちょろっとまとめてありますので、こちらの記事を参考にSPA!バックナンバーを購入して、やがて発売されるであろう最新巻とのセリフ見比べをしてみるのも乙……思わぬ珍言名言誕生の瞬間に立ち会えるかもしれませんね。
出典
- 作者: 久住昌之,谷口ジロー
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: コミック
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参考