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2014-11-17
■[経済]喉元過ぎれば

GDP速報発表で沸き立っているようですが、ここで小巻泰之氏の2014年4月の論考を振り返ってみましょう。
http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2014/report140417.pdf
当時一部界隈で話題になり、私もおおいに感銘を受けたものだ。冒頭の要約よりも最後のまとめのほうがわかりやすいので、そちらを引用させていただく。
消費税増税の影響ついて,駆け込み需要とその反動減に限れば,安定的な経済活動を行う上での撹乱要因になることは間違いなかろう。撹乱要因として指摘できるのは,増加→減少→増加と経済の変動が増減を繰り返すことではない。駆け込み需要と反動減の規模やその持続性が当該期には正確に把握できないことにある。
一般的に,統計データ等から経済状況を認識するまでの「認知ラグ(recognition lag)」が指摘されるが,ラグだけが問題ではない.入手された過去の情報(統計データ)に,入手時点の経済環境への評価も加わって統計データの評価(コンセンサス形成)が行われ,その後の意思決定や市場価格の形成にも影響を与える。つまり,経済の現状を正確に捕捉できないことから,過去の経済事象に対して評価のズレ(divergence)が生じる可能性がある。消費税増税は,評価のズレが端的に生じやすい経済ショック(駆け込み需要とその反動減)を引き起こしやすいとみられる。こうした認識のズレが,97年当時には反動減を示すマイナスのデータが発表されていたにも関わらず,当時の評価で景気実勢が強いとの評価を導いたものと考えられる。また,株価も同時期に20000円台を回復するなど,景況感を下支える状況にあった。この結果,増産が続けられ在庫水準が上昇し,結果として意図せざる在庫増となり,在庫調整が生じたのではなかろうか。
また,消費税増税による経済ショックをより強めたものとして,期末決算要因も考えられる。消費税率の引き上げが 97 年 4 月であることから,各企業にとっては 97 年 3 月末という期末決算期であったことも駆け込みを喚起する誘因があったと推察され,より大きな駆け込みを生じさせた可能性が考えられる。
以上のとおり、97年当時の景気悪化における消費税増税の影響について,当時のコンセンサスをもとに整理すると,景気後退の一因として消費税増税により生じた「認知ラグ」を指摘できる。
金融危機との関係では、金融危機により急激に景気が悪化したとの見方はその通りであるが、危機以前に,既に経済活動は調整局面にあるとのコンセンサスがあったのではないかと考えられる。
したがって,今後の課題としては,97年10月までの在庫調整が景気後退につながったのかについて counterfactual methods などを用いて検証したい。
「撹乱要因として指摘できるのは,増加→減少→増加と経済の変動が増減を繰り返すことではない。駆け込み需要と反動減の規模やその持続性が当該期には正確に把握できないことにある」というのは、重要な指摘だと思う。これが理解できない、そもそも考えたことさえないらしい経済学者やエコノミストが多すぎる。
さて、認知ラグがもたらす不確実性について上記のように警告を発した小巻氏はその後、10月の日経新聞「経済教室」にコラムを寄稿している。
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO78204820Z01C14A0KE8000/
コラムの書き出しはこうだ。
来年10月に消費税を再増税するかどうかの最終判断が今年12月にかけて実施される。2014年7〜9月期の国内総生産(GDP)はよほどのことがない限り大幅減の反動からプラス成長となろう。
いや、後出しジャンケンで嘲笑したいわけでは断じてない。小巻氏でさえこうだったのである。ここはひとまず謙虚に「よほどのこと」が起きてしまったと見るべきではないだろうか。
コラムにはこうある。
消費増税では、駆け込み需要から生じる不確実性の高まりを極力抑える必要がある。増税後に起きる経済ショックの影響を判別するのが難しくなるからである。長雨など天候の影響は事前の予測が難しいものの、駆け込み需要は事前にある程度はコントロールできるのではないだろうか。
年度スケジュールに縛られた画一的な増税のタイミングは、企業に業績押し上げの誘因を生む決算期末と重なってしまう。また、増税を見越したまとめ買いを促すような企業側の販売・宣伝行動の自粛など、駆け込み需要を縮小させる対応も求められる。
今回の駆け込み需要は97年と大きく異なる点もある。総務省統計局の佐藤朋彦氏らの「統計TodayNo.84」によれば、60歳以上の無職の高齢者世帯では油脂・調味料や家事用消耗品などで97年を大幅に上回る駆け込み購入が生じた。年金生活世帯の生活防衛的な消費といえ、少子高齢化が進むなかで駆け込みが大きくなる可能性を示唆する。
他方、現役世代では非正規雇用者が雇用者の4割程度を占めるようになっている。将来不安が高い階層でもあり、駆け込みと反動を巡る不確実な時間の流れに影響を受けやすいと考えられる。今後は所得制約の強い階層への負担軽減策を含め、円滑な再増税の実施こそが求められる。
しかし、来年10月の「円滑な再増税」はもはや立ち消えたように思われる。
報道によると、2017年4月への延期が取り沙汰されているという。もしそうであれば、今年4月の増税から実に3年の期間を置くことになる。増税延期のおかげで今回の教訓が記憶から薄れ、喉元過ぎれば熱さを忘れることにならないよう願いたい。
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