7-9月期の実質GDP(速報)は年率-1.6%でした。民間在庫品増加の寄与度-2.6%が響いています。
GDP7─9月期は2期連続マイナス、増税延期を補強する材料に | Reuters
日本銀行がインフレ目標を掲げて金融機関から国債を大量に買い入れ、代金を日銀当座預金口座に積み上げれば、民需主導で安定高成長が実現するはずだったのですが、一体どうしたことでしょうか。岩田副総裁は昨年8月の講演で「おまじない」の効き目に自信を示していたのですが。
これまでデフレと需要縮小の悪循環に陥っていた日本経済は、緩やかで安定的な物価上昇と需要の拡大という好循環に向けて、いままさに舵を切ったところであると言えるでしょう。
「人々の期待に働きかける」という私の説明を聞いて、おまじないのような話だと思われた方もいらっしゃるかも知れません。しかし、金融政策というのは本来、「人々の期待に働きかけること」を通じてその効果を発揮するものなのです。*1
- 作者: ナポレオンヒル,Napoleon Hill,田中孝顕
- 出版社/メーカー: きこ書房
- 発売日: 1999/04
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公的需要の伸びが一段落した一方で、民間需要はアベノミクス始動前の水準に逆戻りしています。
公共投資は横ばい、設備投資は「悪くはないが良くもない」状況、住宅投資は落ち込みが続いています。
家計消費は、1997年度の消費税率引き上げ時よりも落ち込みが大きく、リバウンドは小さくなっています。
名目値では、リーマンショック前の水準回復にとどまっています。
前回と今回の消費税率引き上げ時の環境の違いは、前回は「家計は比較的強いが金融システムが危機的」だったのに対して、今回は「金融システムは健全だが家計が弱っている」ことです。家計の「基礎体力」の低下は、幾つかの指標からも明らかです。
- 名目雇用者報酬:ピークを迎えた局面⇔ピークから40兆円減少した水準からの緩やかな回復局面
- 実質賃金:ピークを迎えた局面⇔長期低下トレンドの最中
- 家計貯蓄率:1996年度8.1%⇔2012年度1.0%
- 生活保護(保護率):最低水準⇔1960年代の水準に逆戻り
と、負担増への抵抗力は確実に低下しています。
1997年度の景気後退が激しかったのは、財政と金融行政の引き締めが金融危機を誘発したためであり、金融システムが健全であれば消費税率引き上げを乗り切れた可能性が高かったと考えられます。しかし、家計の体力が低下した現状における5%→8%→10%への引き上げは、日本経済のアキレス腱を狙い撃ちするようなものです。「ラクダの背を折る藁」になりかねません。
所得税と法人税を減らして消費税と社会保険料を増やす「改革」が妥当なのかどうか、再考する必要がありそうです。*2
消費増税判断の4回目点検会合、予定通り実施に6人賛成・2人反対 | Reuters
消費税率引き上げ延期と積み残された課題 - Think outside the box
1997年度の景気後退 - Think outside the box