久しぶりに宮部みゆき
たとえ自分の中に信念や何かを持っていたとしても、ずっとそれを隠していたら、隠すために使っていた様子そのものから抜けられなくなるみたいな描写を読んで、キリキリしている。
— きまや (@kimaya4125) November 10, 2014
具体的な記述を引用すると、
うっかり自分を露わに出して、持ち前の聡明さを見せてしまい、その結果誰かとぶつかってトラブルになったりしないように、学校での彼は極端に寡黙になった。誰にも本心は見せないし、本当の姿も現さない。ただ、どれほど賢くてもやはり幼い彼は、人が本性を隠して何かを装っていると、いつしかその装っているものの方が本性になってしまうのだということに気づいていなかった。今の彼は”気の病”を病む母親そっくりの、とらえどころのない蒸気の塊のような無気力な少年になり果てているのだった。
というところ。21ページ目にこんな描写が出てきて、もうびっくり仰天。
何の本かというと、こちら。
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/08/23
- メディア: 単行本
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ソロモンの偽証
最近文庫化されたのかな?本屋に並んでたね。私はなぜかこのタイミングで、単行本で母親から貸してもらった。
知ってる人も多いと思うけど、これ凶器のように分厚い。しかも第3部まで続くから3冊。今思ったけど、文庫化って…何冊になったんだろう。
宮部みゆきはけっこう読んでいて、好きなタイプの小説もあればついていけないタイプもある。
『蒲生邸事件』と『模倣犯』とか好きな感じ。あとドラマになった『ペテロの葬列』とかの杉村三郎シリーズも。
『ソロモンの偽証』は、文章そのもので読ませるっていう感じじゃないところが、不思議だなぁと思う作品。文章自体はたまにただの事実の羅列、しかも読点でいちいち区切るみたいなあまり情緒がない雰囲気。しかも内容は暗い。そして延々と重い。ただただ辛い。しかも人数多い。どんどん状況が悪くなって気が滅入る。(まだ第1部しか読んでないので、感想はここまで)
でもその中で、冒頭に引用したようなハッとする描写がいくつも出てくる。文章がそっけないからこそ、人のナイーブさも粗暴さも出ている。
だってこの部分、事件には直接関係ない。でもこれを書くことで少年の性格も置かれている状況も即座に分かるし、何より読んだ人の心に刺さる記述だと思う。
会社で、家庭で。「本当の自分はこんなんじゃないけど周りに合わせるために偽っているんだ」と思って、有り体に言えば「手を抜いて」生きている人は多くいるんじゃないか。少年じゃなくても、大人でもそういうふうに自分を騙して、手を抜いて……その結果がその「偽っている」方の姿が本物になってしまう。これはすごく怖いことだ。
ただの事件を扱ってるんじゃなくて、人の生き方を追及しながら私たちに開示してくれているような。そんな記述溢れる作品。
雰囲気的にはカポーティ『冷血』に似てるかも、と思う。(どちらも読んだけど、印象が似ているのは高村薫の方じゃなくてカポーティ)『冷血』はノンフィクションだし最初から犯人分かってるけど。
悪はどうしてそこまで悪なのか?悪に理由はないのか?悪には、とって返す道がなかったのか?
そんなことをぐるぐると考えながら、読んでいた。
その後、読了
宮部みゆき『ソロモンの偽証』読了。三冊一気読みのハマりようだったけど前半の方が面白かった?描写はさすがな感じ、真相?の設定もうまい。ただ出てくる人が大多数が頭よすぎて、フィクションっぽすぎた気も。いやヤンキーにはリアリティあった。要はヤンキーと優等生の会話は果たしてこうなのか?
— きまや (@kimaya4125) 2014, 11月 17
中学生裁判って、漫画でも濃いのがあったね。あちらよりはしっかり固かった分、大人が介在せずここまできちんとできるものか…って疑わしく思った。(フィクションだけど)私はもっとボーッと生きてたよあの頃。キャラがいい人たくさんいて、いちいち好感。あと繰り返すが描写が良すぎる。
— きまや (@kimaya4125) 2014, 11月 17
本当はソロモンは年末年始に読もうと思ってたんだけど、最近個人的に面白い本に出会えなかったので繰り上げた。徹夜一回と半身浴一時間を二回。しかし単行本は重いね。
— きまや (@kimaya4125) 2014, 11月 17
言いたいこといっぱいあったので、1冊ずつ呟けばよかったと反省。これは冬にコタツでどっぷり浸かりながらハマる系の読書に最適だと思う。
全部を読了後に思ったことは、小林のおじさんに目撃されたのが本当に本人だったらよかったなぁという点。事実としてありえないから仕方がないので、宮部さんに言っても意味は無いけど。そしたら「未練のよろめき」がハッキリと生命への未練だという振りになったし戦争時の話とよりリンクできるし、あれじゃ柏木くんが邪悪すぎる。いや、そういう悪を描きたかったのか。
あとオチは健ちゃんなのか!って言う点。(好きだけど健ちゃん)個人的には涼子の将来の方が気になるよ?ていうか教師になるなら恵子かしらと思った。でもよく考えたらこの小説の主人公は健ちゃんなんだよね。
映画化されるらしい
映画『ソロモンの偽証』オフィシャルサイト <前篇・事件>2015年3月7日(土)、<後篇・裁判>2015年4月11日(土)公開
来年の春に前後編に分けて映画化されるらしい。あ、冒頭の少年がまえだまえだのお兄ちゃんなのね…それはだいぶイメージが違うね…。
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