世界を恐怖に陥れているエボラ出血熱をめぐり、富士フイルムホールディングス(HD)が注目を集めている。傘下の富山化学工業が開発し、今年3月に国内承認されたインフルエンザ治療薬「アビガン(一般名・ファビピラビル)」がエボラ出血熱の治療薬として有効ではないかと期待されているためだ。エボラ出血熱の治療薬が確立していない中、この富士フイルムHDの「アビガン」ついては日頃、日本批判に傾きやすい中国メディアも絶賛している。さらに富士フイルムHDが写真フィルムメーカーから多角化企業への業態転換に成功したことについても改めて評価する声が上がっている。
10月30日、東京・日本橋兜町の東京証券取引所。中間決算発表にのぞんだ富士フイルムHDの助野健児取締役は、「(エボラ出血熱は)人類との戦いとまでいわれているが、われわれの薬が貢献できるのは非常に光栄だ。全社をあげて、エボラ出血熱と闘っていくと気概で邁進(まいしん)していく」と意気込みを語った。
エボラ出血熱をめぐって、アビガンが一躍注目されたのは、今年8月に米国防総省が候補薬の一つに挙げたのがきっかけ。その後、リベリアでの医療活動でエボラ出血熱に感染したフランス人の女性看護師にアビガンなどを投与したところ、治癒したとして退院した。スペインなどでも効果が確認されたといい、注目度はさらに高まった。
富山化学によると、アビガンは「ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐという新しいメカニズム」が特徴という。2万人分のアビガンを保有する富山化学は追加生産に踏み切ることを公表。臨床使用が進む場合に備え、11月中旬以降、30万人分程度の原薬から順次、錠剤を製造していく方針だ。
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