番外編:はぐれメ〇ルの嫁達最強伝説 その7
リンダール皇城の一室。
そこにはありとあらゆる種類の魔物が囚われていた。
強力な封魔の印を施された鋼鉄製の首輪に繋がれた魔物たち、その総数は30余名。
獣耳、ダークエルフ、ハーフリング――全てが全裸、見目麗しい少女たちであり、その表情は絶望の色に塗りつぶされている。
血とカルキの匂いに満たされたその部屋で、ダークエルフに跨りリンダール皇帝は今日も獣欲を発散させていた。
――本来であれば生物としての力は彼女達の方が遥かに強い。
けれど、自らは皇帝としての権力――数の暴力で彼女たちを無抵抗にさせ、そして蹂躙している。
支配欲を混ぜた性欲はとどまることを知らず、いつのまにやらこれだけの魔物を狩ってしまった。
女を貫きながら、浅黒い柔肌に包まれたその首を力任せに締め始める。
しばらくすると、女の顔から血の気が引いていき――やがて泡を吹いて気絶してしまった。
同時に自らの欲望を放った皇帝は、背後に気配を感じ振り向いた。
「皇帝よ、盛んな事だな」
ノラヌーク王から借り受けた黒づくめの男達3名が、音も立てずにその場に佇んでいた。
「それで……首尾は?」
「2体を捕まえた」
彼の背後には首輪につながれたサキュバスが2名。
黒づくめの男が今まで向かっていた先は、はぐれたサキュバスの住処だ。
サキュバスの宮殿での権力争いに敗れ、放逐された彼女達がその場所で身を隠しているとの情報を受けたのは半年ほど前だった。
元々、サキュバスは魔物の中でも上位に属する種族である。
上位個体ともなれば、魔貴族の称号を得る者すら現れる事もあるような種族――下位個体と言えども、捕えようとすれば騎士団の被害は数百人規模になるだろう。
いかな自らの道楽と言えど、その為にそれだけの被害を受けたとあっては帝国内での自らの権威に傷がつくことは必然。
そういった理由からサキュバス狩りは諦めていたのだが……つい先日、ノラヌーク王から借り受けた連中を使用すれば良いのではないか、というアイデアが浮かんだのだ。
尋常ではない力を持つ彼らであれば、ノーリスクで容易に捕えてくるだろう……と。
「でかしたぞ……おお、これがサキュバスか……確かに美しい個体ばかりだ」
ただ美しいだけなく、それぞれが数百の兵にも匹敵する力を持つ――稀有なる力を持つ種族。
――今すぐにこの者達を蹂躙したい。
皇帝の支配欲が再度高まっていく。
「褒美は後でとらせよう……」
それだけ言うや否や、王はサキュバスの内の一人の腕を取ると、引きずるようにベッドまで誘導し、そして押し倒した。
皇帝が、サキュバスの肢体を貪る様を眺めながら、黒づくめの内の一人が冷笑を浮かべた。
「……お盛んな事だ。ノラヌーク王の残虐性と言い、リンダール皇帝と言い……この世界の人間は本当に節操が無い。平民にしても……石を投げれば盗賊に当たるような有様」
「いや、逆にいえばこれが本来の人間の姿なのかもしれぬ。地球でも中世以前は悲惨だったという話だしな」
「この世界にも法や道徳はあるにはあるが、ロクに機能しておらぬ。我らの世界できちんとした法と道徳が何故に産まれたのか――考えざるを得ないな」
ともあれ、と彼らは自嘲気味に笑った。
「我等もノラヌーク王に真名を奪われている。どの道――この道の先は闇夜の世界……昼が訪れる事は無い」
「なれば、我等も郷に入れば郷に従おう」
「うむ。禁術の実験室でモルモットの管理を行うよりも……派遣先としては――よほどこの国は良い所だ」
黒づくめの男の内の一人が歩みを進め、鎖につながれた獣耳の少女の眼前で立ち止まった。
「皇帝よ、お盛んの所悪いのだが――褒美は今ここで頂きたい」
行為のさなかに声をかけられたのが気に召さぬようで、苛立ちながら皇帝は答えた。
「サキュバス以外は廃棄間近の使い古しだ、好きにしろ。そこらに繋がれている者なれば、貴様等の興が乗れば壊しても構わん」
黒づくめの男は、やれやれ、とばかりに軽く両手を広げた。
「……との事だ」
「ああ、役得に預かる事にしよう」
一人は金髪の――幼きダークエルフの前で立ち止まる。
「お主は……また幼子か? 見た目で言えば10にも満たぬではないか」
「ふふ、何故に我らの世界で法と道徳が産まれたか……法が無ければこのような事態になるということだ」
各々が鎖につながれた少女を見定めたその時――入口のドアがドンドンと叩かれた。
「陛下っ! 陛下っ! 一大事でございますっ!」
再度、邪魔が入った事から皇帝は声に明らかな怒気を含ませながら叫んだ。
「やかましいっ! 後にしろっ!」
一瞬だけ、ドアを叩く音が静まったが、再度ドアが壊れんばかりに叩かれ始める。
「いえ、陛下、お聞きくださいっ!」
「やかましいと言っているのだっ! 打ち首に処すぞっ!?」
「いえ、陛下……聞いていただきますっ! 御免っ!」
ドアが蹴破られると数名の騎士が室内になだれ込んできた。
部屋のあまりの惨状に騎士たちは顔をしかめるが、すぐさまに平静を取り戻す。
「貴様……っ! 我の命令が聞けぬと言うのかっ!?」
騎士の内の一人が皇帝の眼前に進み出て、片膝をついて答えた。
「失礼は承知の事……なにぶん、火急の事ゆえに……」
騎士たちの並々ならぬ様子に気づいたのか、弄んでいたサキュバスから皇帝は離れた。
そして、ガウンを羽織りながら尋ねる。
「……何用だ?」
「北の国境線……物見の詰所より魔術伝令が届きました」
皇帝はピクリと片眉を吊り上げる。
「魔術伝令……とな? 何があった?」
「サキュバスの群れ……総数90名が猛速度で飛来、国境線を超え真っ直ぐに首都――皇城に向かっているとのことですっ!」
「サキュバスの群れ……とな?」
皇帝は黒づくめの男たち3人に問いかけた。
「報復……仲間を取り戻そうとしているという事か? はぐれサキュバスの住処にそれほどの個体数が存在すると言う報告は受けていなかったが?」
黒づくめの男も要を得ないと言う風に答えた。
「住居の様子を見るに、連れてきた2名が生活を営む程度の規模だったと我らは確認している。仲間の報復ということは有りえない」
「まあ、案ずるな皇帝よ。サキュバス90名程度であれば……我等3人であれば迎え撃つは容易い」
「左様。皇帝の兵を損傷させる事もないだろう。ただし、相手はサキュバス……90名とあれば生け捕りという形に加減はできぬ」
と、そこで片膝をついたままの騎士がコメカミに青筋を作らせながら叫んだ。
「何を悠長な事を言っているのです。私自身未だに誤報だと信じたい。このままでは国が滅びます――サキュバス90名の先陣を切っているのは……」
そして、続けた。
「サルトリーヌ=マルコキアス――魔貴族ですっ!」
皇帝と黒づくめの3人の表情に――戦慄が走った。
サルトリーヌ「さて、始めましょうか」
アナスタシア「ケロちゃん? ボクは話し合いに来たんだからね? 危ない事しないよね? ちゃんとおすわりできるよね?」
ナターシャ 「諸君、私は爆発が好きだ! 大爆発が――大好きだっ!」
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