自衛隊の地方協力本部が、中卒生が入学する「陸上自衛隊高等工科学校」(神奈川県横須賀市)の今年度の生徒募集に際し、中学3年生の個人情報を出すよう全国の市町村に依頼していたことがわかった。18道県の21協力本部が、500以上の市町村に依頼。うち約200市町村が実際に氏名や住所などの情報を提供していた。生徒募集のための情報提供依頼は自衛隊法で認められておらず、防衛省は各地方協力本部に是正するよう通達を出す方針。

 防衛省によると、全国に50ある協力本部のうち21本部が、来年度に陸自高等工科学校に入学する生徒募集のため、各市町村に情報提供を依頼。同校の生徒募集のダイレクトメールを郵送するのが目的で、提供された個人情報は数万人分にのぼるとみられる。

 各地の協力本部が自衛官募集の目的で、高校3年生の氏名、住所、性別、生年月日の情報提供を市町村に求めることは、自衛隊法で認められている。高等工科学校の生徒も当初は「自衛官」として扱われていたが、09年の自衛隊法改正で「生徒」扱いに変更された。しかし、一部の地方協力本部は法改正後も、対象外の中学生についての情報提供を市町村に求めていたとみられる。

 一方、協力本部の一部は法改正を受け、各市町村で住民基本台帳を閲覧するなど適法な手段で、中学3年生の個人情報を入手しているという。

 一連の不適切な情報提供依頼については、阿部知子衆院議員(無所属)が防衛省側に指摘。同省は今後、情報提供した市町村に謝罪し、各協力本部に法に沿った対応を取るよう指示する。同省人材育成課は、朝日新聞の取材に対し「生徒募集のためだったが、方法が不適切だった。法改正後の手順を徹底しておくべきだった」としている。