以前,こんな記事を見つけまして,中学受験塾で教えている身としては何か書かないといけないと思って,「ブログで書きます」というブコメしたところ,ツイッターでなないお(id:nanaio)さんから以下のような反応をいただいたので,忘れないうちに簡単ではありますが,書いておきます。
@Gerge0725 楽しみにしています!私もなぜ子供に中学受験を考えているかについて書こうかな~と思っています。
— なないお (@Nanaio627) 2014, 11月 13
どんな中学があるの
まず中学受験をするにあたり,どのタイプの学校を受けるのかを考えなければなりません。最近は公立の中高一貫校もありますので,そちらも選択肢のひとつになります。大学受験の実績も出ています。
2012年の東大合格者が発表されたとき注目されていたのが、都立中高一貫校がどれだけの実績を残すかということでした。
結果は桜修館と小石川が4名ずつ、昨年5名の合格者を出した白鷗と両国が3名ずつという出来でした。これを多いと見るのか少ないと見るのか、反応は分かれましたが、私は多いと思いました。白鷗以外は、初めて卒業生を送り出すことになります。初年度で東大3名、4名というのは、一般的な私立の新設校では大変難しいことです。
GWをはさんで、「週刊東洋経済」と「週刊ダイヤモンド」で、立て続けに中高一貫校ランキング特集が組まれていました。いずれの特集にも、公立中高一貫校についての記事が大きく取り上げられていました。それぞれ「私立並みの教育方針と合格実績で高まる人気」、「躍進!公立中高一貫校」というタイトルです。
これまではまだ、「タダだから」と、先物買い的な人気先行の様相がありましたが、それなりの実績を出したことにより、特に首都圏では「公立中高一貫校はやっぱりすごい!」という評価がますます定着するのは間違いないでしょう。
公立中高一貫校の今後 | 学研塾ホールディングス 塾・教室支援サイト
こうした学校も含め,まずは男女共学か男女別学かを考えます。その上で,公立中高一貫校か,大学附属校か,進学校かを考えていくことになります。ただ男女共学といってもクラスは男女別という学校もあるので,注意が必要です。学校によっては,部活動や体育の時間は一緒になるというところもあります。大学附属も大学附属だけれども進学校というのがあって,系列の大学にはほとんど進学しない学校もあります。だから学校によって様々なタイプがあるので,最初に何のために中学受験をさせるのかを考えておかないと最後まで志望校が決まらない,なんてことにもなりかねません。そうならないためにも事前のリサーチはとても重要です。多くの方が学校説明会や文化祭を利用して,自分の行きたい学校を絞り込んでいます。
どうやって志望校を選ぶの
さてまずどのようなタイプの学校を受けるかを決めたら,具体的にどの学校を受けたいかを考えないといけません。ほとんどの生徒は第1志望校は決まっているのですが,第3志望校までしっかりと決まっている生徒はそんなに多くはありません。また決まっていたとしてもすべて偏差値上横並びなんてこともありますし,実際に受験日が重なっていて受けられないこともあり,どちらかに絞らないといけないという場合もあります。
受験指導としては①一番行きたい学校(チャレンジ校),②実力相応校(模試の合格判定で50%前後の学校),③滑り止め(当日熱が出ても受かる学校)の3タイプの学校を用意してもらうようにお願いしています。事前にこれがすべて決まっている人はほとんどいないでしょう。また③は受かっても行かないという人も多いわけですが,中学受験というのは小学生がやることなので,当日体調が悪くなったり,プレッシャーで泣いてしまったりして実力が出せないことは多々あります。そうした時に一つでも合格を取れる学校があると精神的にもとても楽です。そういう意味で,滑り止めは受験してもらうようにしています。
勉強は大変なの
基本的には大変です。ただしこれもどこの学校を志望するかによります。そんなに勉強しなくても合格できる学校を受験する場合,多くの時間を勉強に割く必要はありません。偏差値よりも行きたい学校というスタンスで志望校を選ぶ方が本来は良いでしょう。
一方で上位校や最難関校を目指すとなると,かなり勉強させられます。特に6年生になると夏休みもないし,冬休みもありません。正月特訓なんて言うのもあります。やる気がないとお金の無駄なんてこともあります。それでも受験したいと思える子どもでないと厳しいのは確かです。
昔は小学校3年生から塾に通うなんてことは珍しかったのですが,今はそんなことありません。以前は小学校5年生からしかカリキュラムがない塾もありましたが、どんどん開始時期が早まって,低学年のカリキュラムが作られました。これは少子化の影響もあり、生徒を早くから囲い込みたいという意図があるからだと思います。最近では、小学校1年生から塾に通うなんてこともあって,それはいくら何でもやりすぎだろうと思っています。また5年生から日曜日も特訓なんて塾もあって,本当にそれは必要なの?と疑問を呈さずにはいられない部分もあります。
だからいつから通うかよりも本人が受験したいのかどうかの方が大切なんですよね。そういう意志がある人は小学校6年生から塾に通い始めて麻布中学に合格するなんてこともあります。小学校では問題児で学校に行けなくなったので引っ越してきた生徒でした。
その生徒が,とても一生懸命勉強していたというのはありますが,1年で合格するんだという気合が他の生徒と違いましたね。そういう意味でも本人の意志が何よりも大事です。
また、塾選びに関しては以下の記事を参考にしてください。中学受験塾というのは高校受験と違ってとても月謝や諸費用が高いです。そのいろいろなオプションなどもあるので事前に確認することをお勧めします。
親の役割と中学受験を考える~共働きの塾選び - いつか朝日が昇るまで
それで結局中学受験ってどうなのさ
中学受験というのは勉強するしない以前に精神的な成長が求められます。特に男子は同じ小学校6年生かと思えるくらい違いがあります。中学受験というのは小学生に過重な精神的な負担を課すのは間違いありません。そうした負担に耐えられる子どもでなければ受験はしない方が無難でしょう。もちろんその負担を少なくするために,自分の合格できる学校を受験するというスタンスも考えられますし,小学校6年生の1年間だけ塾に通わせて合格を目指すことで精神的な負担を減らすということもできます。そこには工夫の余地もありますし,私もそうした精神的負担がかからないようにはしているつもりです。
あと親が子供よりも一生懸命になりすぎることで,子どもにとってかなり負担になるというケースもあります。いつの間にか子どもの受験ではなく,親の受験になっていたなんてこともあります。それでせっかく合格した学校を中退した生徒も知っています。「私はこんな学校受けたくなった」とその子は言ったそうです。あまりにも前のめりにならない親でないと中学受験に取り組むのは難しいかもしれません。
ここまでマイナスの要素ばかり述べてきましたが,ほとんどの生徒は中学受験して良かったなと元気に合格した学校へと通っています。大学附属校であれば,大学受験すらないのですから,本当にのびのびと生活しています。保護者からしたら「もう少し勉強してほしい」というのはあるようですが(笑)。
6年間あるので,部活やら勉強やらに落ち着いて取り組むことができるというのもあるようです。進学校と言っても様々で麻布なんていうのは本当に変な学校で,とても自由です。そういう校風があるのが,公立にはない私立の魅力なのかもしれません。
「えー、金髪の子もいますが、外国人ではありません(笑)。たぶん文化祭のために髪をこうしていまして、終わったら坊主にしたりします(笑)」
本にも書いてあった。麻布はとにかく文化祭に力を入れる生徒が多い。特に文化祭実行委員会のスタッフは髪を派手に染めて、学園最大のイベント運営に全力を尽くすのだそうだ(なぜ髪を染めるのかは諸説あり)。
「あ、寝ている生徒もいますね。一番前の席ですが、(教師から)死角なんですねー(笑)」
先生、調子が出て来たようだ。画像にネタ要素を見つけては、レーザーポインターをぐるぐるさせ、ちょっと楽しげに解説してくれる。
「こうして、ノートをとらないで、カメラで黒板を写している大バカ者もいます(笑)」(高校3年生の授業風景)
「弁当を持ってくることが基本なのですが、育ち盛りなので早々に食べて(笑)、昼も食堂で食べる生徒が多い。食堂にはアイスもあって、生徒の心が安らぐ場所です(笑)」(早弁をした生徒らのさらなる昼食風景)
「これが標準服です。入学して最初はみなさん喜んで作るのですが、1週間ほどで皆着なくなります(笑)」
「謎の進学校麻布」ほぼ満杯の学校説明会を実況中継してみた│NEWSポストセブン
もちろん,私立ですので,大学受験にはかなり力を入れています。私が教えている神奈川県では中学受験で偏差値40ぐらいの学校でも,その地区の2番手の公立高校と同じぐらいの進学実績になります。今は公立高校の入試制度も変わり,試験勝負になっていますので,中学受験をして進学実績がしっかりしている私立に通った方が良いという考え方はあるでしょう。
最後に
私は中学受験塾で10年以上教えていますが,必ず中学受験をした方が良いとは思いません。そこまで無理して難関校に受かった方が良いとも思いません。ただ本人が行きたい学校があって,そこを目指して頑張りたいというのならその手助けは精いっぱいしてあげたいと思っているわけです。結局のところ,家族でよく話し合って本人がどうしたいのか確認すること。それが最も大切かと思います。
子どもが産まれてよく聞かれるのは「先生のお子さんも中学受験させるんですよね?」です。私は「それは本人次第です」と答えています。将来,子どもが大きくなった時にも同じように言えるようにしたいなと思います。大丈夫かな…。
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