マイクロソフト、Linux版の.NETをDocker上でデモ。Visual Studioからリモートデバッグ可能

2014年11月17日

マイクロソフトは先週開催した同社のイベントConnect();で、.NETコアランタイムと.NET server frameworkのオープンソース化、およびLinux版とMacOS X版オフィシャルディストリビューションのリリースを発表しました。

これにあわせて同社は、Linux上のDockerコンテナの上でC#で記述されたASP.NETのアプリケーションを実行し、Visual Studioからリモートデバッグを行う様子をデモで公開しています

いままでC#やASP.NETといった.NET環境に依存したアプリケーションはWindows Serverでしか実行できませんでした。しかし今後マイクロソフトがオフィシャルな.NET環境をLinuxとMacOS Xで提供することで、.NETアプリケーションはこれらのプラットフォームでも実行可能になります。

Azure→Linux→Docker→.NETランタイム→ASP.NET→Visual Studio

今回のデモは、Microsoft Azureのクラウド上でLinuxを起動、そのDockerエンジンにLinux版の.NETコアランタイム上でASP.NETで開発したアプリケーションを含むDockerイメージをデプロイし、実行するというものです。

デモを行ったのは、マイクロソフトのJay Schmelzer氏。

fig

Microsoft AzureにはDocker Hubが統合され、Dockerイメージがデプロイ可能になります。

fig

WindowsネイティブなDockerクライアントもリリース予定。WindowsクライアントからDockerコマンドでDockerイメージを展開、実行します。

fig

このDockerイメージにはLinux版.NETコアランタイム上のASP.NETアプリケーションが含まれており、アクセスするとWebページが表示されます。

これはMicrosoft Azure上のLinux上のDockerコンテナの上でASP.NETが走っています。

fig

Webページを見ただけでは本当にLinux上で走っているかどうかは分からないので、このASP.NETに対してVisual Studioでアクセスし、リモートサーバ上のコードにブレークポイントを設定します。

fig

Webサイトを操作してからVisual Studioを見ると、ちょうどブレークポイントで実行が止まっています。この状態でOS環境をチェックすると、UNIX上で走っていることが分かります(画面の赤枠は新野による)。

fig

サティア・ナデラ氏の「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」

マイクロソフトはこの1カ月、サーバサイドにおける大きな発表を相次いで行いました。

これにより今後は主要なサーバOS全てで、.NETアプリケーションが開発、実行できるようになりますし、.NET環境込みでDockerイメージとしてパッケージすれば、簡単に.NETアプリケーションをLinuxやMacOS Xに(そしてDockerに対応したWindowsにも)デプロイできるようになるわけです。

これはデベロッパーに対して.NET環境の魅力を高めると同時に、.NETの開発環境として最高のソフトウェアであるVisual Studioの魅力を同時に高めることになります。

と同時にMicrosoft Azureも、どんなOSにも対応し、Dockerにも対応し、Visual Studioと緊密に連携できるクラウドとしての魅力をデベロッパーにアピールすることになるでしょう。

マイクロソフトにとって、もっとも大事なビジネス上の資産はWindowsでもVisual Studioでもなく、マイクロソフトテクノロジーのエコシステムを形成するデベロッパーたちです。前CEOのスティーブ・バルマー氏がつねに「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」と叫び続けたのは、それが同社にとって本当に重要だからなのです。

そして現CEOのサティア・ナデラ氏も、TechCrunchの記事「MicrosoftのCEO、サティア・ナデラ、Apple、Googleと比較して自社の本質を的確に指摘」の中で、次のように述べたとされています。

私の考えでは、デベロッパーがアプリケーションを開発できるようにするプラットフォームを提供し、また誰であれコンピューティングに関連する人々が所望の成果物を作れるようにする数々のツールを提供するところでこそ、Microsoftが真価を発揮し、本当の差別化を行えるのだと私は考えている。

この1カ月で発表されたさまざまな施策はすべて、いかにマイクロソフトテクノロジーをデベロッパーに対して魅力的に見せるか、という視点で貫かれています。それこそが同社の生命線だとナデラ氏は考えているからです。

ナデラ氏はバルマー氏のように人前で「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」と叫ぶことはありません。しかしその代わりに矢継ぎ早に打ち出されたここまでの施策は間違いなく、バルマー氏よりも大声で「デベロッパー!デベロッパー!デベロッパー!」と叫ぶナデラ氏の声が込められているはずです。

このエントリーをはてなブックマークに追加
Bookmark this on Delicious

タグ : Docker , Linux , Microsoft , Visual Studio

≪前の記事
サイボウズとインフォテリアが提携。kintoneをGUI操作で企業内のシステムやクラウドに接続する「ASTERIA WARP kintoneアダプタ」発表

Loading...

Blogger in Chief

photo of jniino Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。新しいオンラインメディアの可能性を追求しています。
詳しいプロフィール


新サイト「Publickey Topics」始めました!


Publickeyの新着情報をチェックしませんか?
Twitterで : @Publickey
RSSリーダーで : Feed





アクセスランキング - 過去7日間

  1. [速報]マイクロソフト、「.NET server framework」のLinuxとMacOS X用オフィシャルディストリビューションを発表。.NETアプリケーションのビルド、実行が可能に
  2. [速報]まるでクラウドで走るマクロ言語「AWS Lambda」発表。AWS re:Invent 2014
  3. [速報]マイクロソフト、フル機能の無料版「Visual Studio Community 2013」公開
  4. [速報]Amazon Aurora発表。MySQL互換で性能5倍、商用リレーショナルデータベースと同等の機能を提供するマネージドなデータベースサービス。AWS re:Invent 2014
  5. [速報]マイクロソフト、フル機能の無料版「Visual Studio Communiti 2013」公開
  6. [速報]マイクロソフト、サーバサイドの「.NET Core Rutime」と「.NET Framework」のオープンソース化を発表。C#コンパイラやASP.NETなど
  7. Amazonクラウドのシェアは27%、2位マイクロソフトは10%だが136%の急成長、3位はIBM。Synergy Research調べ
  8. [速報]Docker社CEO、Docker時代に向けた進化のロードマップを表明。AWS re:Invent 2014
  9. FluentdがKubernetesの標準ログ収集ツールとして採用
  10. IBM、SoftLayerの東京データセンターを12月中旬に開設。サーバ1万5000台を用意
  11. [速報]Amazonクラウド、コードリポジトリ「AWS CodeCommit」と、継続的インテグレーションサービス「AWS CodePipeline」発表。AWS re:Invent 2014
  12. [速報]Amazonクラウド、デプロイツール「AWS CodeDeploy」発表。ローリングデプロイ、ロールバックなどを一元管理。AWS re:Invent 2014
  13. Amazonクラウド、「AWS認定DevOpsエンジニア」の試験開始
  14. [速報]Dockerをサポートした「Amazon EC2 Container Service」発表。AWS re:Invent 2014
  15. [速報]インテル、Amazonクラウドの新インスタンス向けに、Amazon専用設計のプロセッサを提供したと表明。AWS re:Invent 2014

Publickey 最新記事 10本

Publickey Topics 最新記事 10本


PR - Books


fig

fig

fig

fig



blog comments powered by Disqus