やまなしなひび-Diary SIDE-

狂っているのは誰だ

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「上達」が楽しいのか、「攻略」が楽しいのか

 ちょっと前の記事ですが、すごく興味深かった記事。

 アクションゲームは操作に慣れる過程が面白い現実ゲームさん)

 「興味深い」のは「自分とは違う意見」だから。
 私はあまりここを重視していないことに、この記事を読んで気付いたんですね。ゲームの要素として「プレイヤーの上達」は重要な要素だと思うのですが、自分はそこを楽しみにゲームを遊んでいないなと。


 もちろん、どんなプレイヤーも最初は初心者なので「上達する楽しみ」をどこかで味わっているとは思います。また、ゲームの歴史を考えても「新しいムーブメント」が起こった時には、誰もが初心者に戻って「上達する楽しみ」を味わえたと思います。
 『ストリートファイターII』を始めとする格闘ゲームがブームになった時、「ボタンいっぱい使う!」「必殺技出すの大変!」「避けられないからガードしなきゃいけないのか!」と最初は戸惑いました。でも、最初は動かしにくいと思っていたからこそ自在に動かせようになる「上達する楽しみ」が味わえたんですよね。波動拳を初めて出せた時は、感動しましたわー。
 自分はほとんどプレイしたことがないですけど、『モンスターハンター』シリーズが人気なのも、最初は「なんでこんな動かしにくいんだ!」という操作を使いこなして自在に動かせるようになる「上達する楽しみ」があるからだと思います。

 この話はアクションゲームに限ったことではなくて、コマンドRPGやシミュレーションゲームだって、序盤はよく分からなかったシステムを終盤では使いこなせるようになる快感は「上達する楽しみ」と言えますよね。



 しかし、今の私はあまりここを重視していないなーと思ったのです。
 例えば……2Dマリオシリーズの新作なんかが分かりやすいと思うんですけど、今までにシリーズを何本も遊んでいるゲームの場合、もうあんまり「上達する余地」ってないんです。ちょっとした操作感覚の差とか、新アクションとかがあっても、それはすぐに順応してしまうもので。

 でも、2Dマリオに限らず、「シリーズもの」のゲームってたくさん売れますよね。
 「もうこれ以上は上達しないからマリオはイイやー」って人もいるかも知れませんが、それでもやっぱり100万本単位で売れるワケです。この人達が全員「初めてマリオを遊ぶ人」だとは思えません。

 そういう「シリーズもの」の人気作品って、「上達する楽しみ」よりも「攻略する楽しみ」を目当てに売れているんじゃないかと思うのです。
 慣れ親しんだ操作方法で、今までにないステージを遊びたい―――遊園地のアトラクションをまわるような感覚で、「上手くなるぞー」というよりも「次はどんなステージかな」「楽しませてくれ!」という目的で自分は遊んでいるように思います。自分の中の「マリオ」は「ピクロス」のような位置にあるのかも知れません。

(関連記事:延々と『ピクロス』をやり続けてしまう



 「シリーズものは売れる」けど、「新規作品は売れない」―――みたいな話って。
 「攻略する楽しみ」は売れやすいけど、「上達する楽しみ」は売れづらい―――って話に繋がるのかもって思うのです。「このゲームは一から上達していくのが楽しいんですよ!」と言われても、むしろそれが逆効果なのかもって。

 「上達する楽しみがある」と言われても、「上達するまでは苦痛」なこともあります。
 例えば、テレビアニメを勧める際に「全13話のアニメで8話までは大して面白くないけど9話から面白くなるから全話観て!」って勧めても多分観てもらえませんよね。もしくは8話まで飛ばして、9話から観始められるとか。「面白くなるまでの時間」が長いというのは、それだけハードルが高くなります。

 現実ゲームさんの記事を読んで、「自分とは違う意見は面白い」と改めて思ったところなんですけど……「上達する楽しみ」が好きな現実ゲームさんは、「コントローラがどのハードも似たようになって」「色んなゲームの操作方法が画一化された」ことによって、操作に慣れるのが早くなって飽きるのも早くなってしまったと仰っています。

 でも、多分……作り手の狙いは逆で、色んなゲームが同じような操作方法になるのは「上達するまでの苦痛な期間」をなくす狙いだと思うんですね。『ストII』以後の格闘ゲームブームだと、「波動拳コマンド」を覚えておけば、色んなゲームで「波動拳みたいな技」が出せたとか。
 3Dアクションでも3Dアクションシューティングでも、コマンドRPGとかシミュレーションゲームもそうだけど、操作方法やシステムを似通ったものにするのは……それがプレイヤーのためになると思っているからだと思います。でも、「上達する楽しみ」が好きな人にはそれが逆効果になるというのは皮肉な話ですし、面白い話だと思います。


 また、「上達するのが楽しい」と言われても「どんなに頑張っても上達しない人」もいるという話もあります。
 「波動拳を初めて出せた時は、感動しましたわー」と私は書きましたけど、格闘ゲームブームの頃にも「波動拳」を出せない友達はいました。人間には向き・不向きがあって、「頑張れば出来るだろ」ということが出来ない人だっています。

 現実ゲームさんが「あまり経験したことのない操作方法だったので上達する楽しみが味わえた」という例に挙げた『レギンレイヴ』や『新パルテナ』を、私も一応クリアまではプレイしたのですが……私は、正直「上達している」感覚は全くありませんでした。
 1面をプレイしている時も、最終面をプレイしている時も、多分私の腕は変わっていません。『レギンレイヴ』は結晶集めて強い武器を作って何とかクリアできて、『新パルテナ』はコンティニューしまくりで難易度が下がったことでクリアできたカンジでした。
 「3Dアクションゲーム」の場合、私はどうすれば上手くなるのかがよく分からないんですね。いつの間にか攻撃を喰らっているし、こっちの攻撃が当たっているのかもよく分からないし。それでもクリアまでは出来るんだからすごいっちゃすごいのですが、「上達する楽しみ」みたいのは私は感じられませんでした。



 「どうしてこんなに面白いゲームが売れないんだ!」と言われるゲームによくある理由として、こういうゲームは遊んだことがないので「自分が上手くなるかどうかが分からない」不安と、実際にプレイしても「どうすれば上手くなるのかが分からない」壁があると思うんです。

 なので、「どうしてこんなに面白いゲームが売れないんだ!」と嘆くファンは、「こうすれば上手くなって楽しいよ!」という“上達のコツ”を伝える攻略サイトでも作ればイイと思います。割とガチでそう思います。




 逆に、定番化したシリーズ作品でも、新しい要素を入れて「上達する楽しみ」を提供するという作品も多いですよね。
 かつては「上達する楽しみ」の代名詞のようなゲームだった『モンスターハンター』シリーズとか、『スマッシュブラザーズ』シリーズとかもそうだと思うんですが……今となっちゃ「超定番ソフト」となっているので、「上達する楽しみ」は減ってしまっているとも言えるのですが。
 『モンスターハンター』の場合は「新しい武器」とか、『スマッシュブラザーズ』の場合は「新しいファイター」を投入することで、新作ごとに「上達する楽しみ」も提供していると言えると思います。

 「上達する楽しみ」は面倒くさいから、「攻略する」楽しみだけ味わいたい人も。
 毎作「上達する楽しみ」を味わいたい人も。

 両方の人を満足させるために、「シリーズ作品」に「新規要素」を入れているんだろうって思います。
 『ゼルダ』シリーズなんかもそうでしたよね。「ゼルダの文法」はスーファミの『神々のトライフォース』の頃からずっと一緒なのだけど、「アナログスティック」だったり「タッチペン」だったり「Wiiリモコン」だったりという操作方法が変わることで、最初は動かしにくいけど徐々にそれを使いこなしていく「上達する楽しみ」を提供してきたという(※1)

(※1:そう考えると、3DS版『神々のトライフォース2』やWii U版の『ゼルダ』が「ゼルダの文法」を崩しにかかっているのは、コントローラの変化が止まったからと言えるのかも)


 “私はあまり「上達する楽しみ」を重視していない”と、この記事の冒頭に書きました。
 私にとってアクションゲームの操作は「なるべくシンプル」で「最初から思ったように動かせる」ことの方がありがたいんです。「上達する楽しみ」を重視していないので。そうして、「最初から思ったように動かせる」キャラクターで色んなステージを「攻略していく」のが楽しいんです。

 『ラビ×ラビ』とか『クニットアンダーグラウンド』みたいな「アクションパズル」というジャンルを私が好きなのは、そういう理由が大きいのかなと思います。操作方法自体はファミコンの頃から大メジャーな「横視点でジャンプするゲーム」で、そこに一要素が加わっているくらいです。
 でも、そんなシンプルな操作方法でも、「攻略するステージ」はこの作品にしかない様々な仕掛けがある―――ってのが好きなんです。


 多分、「上達する楽しみ」を重視していないって書くと―――「あぁ、ヌルゲーばっか遊んでるんですね。上達する努力もせず、俺TUEEEEだけ味わいたいなんて、もうゲームやめたらどうですか」って言われるかもですが、それは「楽しみの方向性」が違うだけで難易度の話じゃないです。「攻略する楽しみ」だって、難しいステージを攻略する楽しみがありますからね。

 そういうこと言ってくる人は、『クニットアンダーグラウンド』の隠しステージをちゃんと全部クリアしてきなさい!あれだけの操作方法でよくもまぁ、あんな多彩な&鬼のようなステージを作れるもんだと思いますよ。



 逆に、「上達する楽しみ」に特化したジャンルのゲームって実は私は苦手です。
 「音ゲー」とか「レースゲーム」とか、同じステージを何百回もプレイして「上達していくゲーム」とかは手を出しませんし……
 アクションゲームやアクションパズルでも「タイムアタック」の要素があるとサジを投げてしまいます。あんなに大好きな『ラビ×ラビ』もタイムアタックは一切やっていません。「ただのやりこみ要素」ならやらないだけでイイんですけど、クリア条件だったり新ステージの解放条件だったりすると厄介ですね……

 「格闘ゲーム」も、なので『ストII』以後のものってあまりやりませんでした。やったものも触る程度で「上達する」ほど遊んだものは少ないです。『スマブラ』も、Wii版は「上達する」というよりは、クリアゲッターを「攻略する」というカンジでプレイしていたので、大して上手くはなりませんでしたね……。Wii U版はどうしよう……

 でも、そうか……逆に考えると、「クリアゲッター」みたいなシステムがあれば「音ゲー」や「レースゲーム」や「格闘ゲーム」も、「上達する」というより「お題を攻略していく」感覚でプレイ出来るかも知れませんね。そういうシステムのある今なら、結構楽しめるのかも……

(関連記事:やりこみ要素があるから初心者でも安心して遊べるね!



 「人によって好みは違うよね!」という身も蓋もない話なんですけど……
 「ゲームを人に薦める」時に、実は最も重要な話なんじゃないのかと思うのです。話を分かりやすく二極化してしまうなら、「上達するのが楽しい人」に「攻略するのが楽しいゲーム」を薦めても逆効果だし、「攻略するのが楽しい人」に「上達するのが楽しいゲーム」を薦めても逆効果だろうと。

 ゲームの紹介記事を書いてきた身としても、自分の嗜好で「攻略するのが楽しい人」の視点でしか書いてこなかったなと分かりました。そういう理由でも、「自分とは違う意見」はありがたい。

(関連記事:「ゲームを進められない時間」が「俺って天才!」感を生む
(関連記事:好きなゲームを「好き」と紹介することに意味があるのか

| ゲーム雑記 | 17:52 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

この記事を読んで自分が音ゲーとかは全く楽しみを見いだせないのですがリズム天国や太鼓の達人は楽しく感じる理由がわかった気がします。
自分も波動拳が出せないタイプの人間なので……。

大人になると特に子供の頃のようにみっちりとゲームに取り組む時間が無くなるので上達に長い時間がかかるゲームがますます辛くなります。
それに上達する楽しみに特化したゲームというのはそこに特化すればするほど上達の過程自体はあまり面白くない傾向にあるように思うのです。

上手な人や上達の成功体験がある人ならその成功をイメージして楽しく頑張れると思うのですが自分のような不器用で成功体験のない人間にとってはただただ苦行。
触っただけでなにがしかの楽しさがないと自分のようなタイプの人間はゲームしないですね。

| ああああ | 2014/11/14 19:33 | URL | ≫ EDIT

攻略する楽しみは、飽きられやすいのが難点ですよね。
どんどん物量を増やしていかないと、満足感が薄まりますから。
オープンワールドみたいに。

上達する楽しみは共感する相手がいないと、ストイックなプレイになりがち。
海外産タイトルはオンラインプレイ可能なタイトル多いですよね。
スマホのゲームが売れるのも、オンラインを使ったコミュニケーションがあるのが大きいかと。
これまでインターネットを軽視していた、任天堂も方向転換しそうですよね。

特に海外では、攻略する楽しみに求められる物量があがってますよね。
近年売り上げ減少している2Dマリオは、それに当たるかと。



| ゲーマー | 2014/11/16 13:22 | URL |

任天堂がインターネットを軽視しているというのは無いわ〜。

| ああああ | 2014/11/16 19:58 | URL | ≫ EDIT

上達は同じジャンルの他のゲームにも通用するけど、攻略はそのゲームのみ。
でも、攻略を積み重ねていると、知らないうちに上達もしているし。
これは車の両輪のようなものですし、今となってはあまり深くは考えませんね。

| 児斗玉文章 | 2014/11/16 20:13 | URL |















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