【沖縄県知事選】 辺野古の既成事実化に怒り沸騰 移設は今後も「いばらの道」
米軍普天間飛行場と周辺の住宅地=6月、沖縄県宜野湾市 |
▽うねり
「基地を造ることに県民は大変嘆き、悲しんでいる。勘弁してくれという切実な思いがあった」。翁長氏は16日夜、那覇市内の選挙事務所で勝利宣言し、安倍政権への対決姿勢を鮮明にした。翁長氏は自民党県連幹事長も務めた保守系の重鎮。保守といえば移設容認派だとの常識を覆し、これまで争ってきた革新系と手を携え支持基盤を広げた。「基地問題を沖縄に丸投げするなと言いたい」(翁長氏陣営幹部)という声は、大きなうねりとなって政権に迫った。
首脳による国際会議が開かれたオーストラリア・ブリスベン。投開票のまさしくその日、安倍晋三首相はオバマ米大統領と会談し「沖縄の負担軽減へ米国の協力を得たい」と働き掛けた。17日に帰国後、18日に衆院解散を表明する見通しだ。
知事選で安倍政権は政権幹部らを投入し、移設容認の現職仲井真氏を全面支援した。翁長氏を「共産党中心の革新候補だ」(菅義偉官房長官)と批判していただけに、敗北は痛手だ。
▽いばらの道
移設実現へ、早ければ2015年夏ごろには埋め立て工事へ突入する構えだ。新知事の翁長氏側との接触頻度を高め、切り崩しを図る。
1年で3千億円超の振興策という「アメ」をちらつかせつつ、移設ができなければ、普天間飛行場が固定化しかねないと迫る「硬軟両様」(政府筋)の作戦だ。防衛省筋は「市街地に囲まれた普天間の危険性をどう除去するのか」と指摘する。
政府はすでに埋め立てに向けた海底ボーリング調査を開始しており、埋め立て開始から完成まで約5年というスケジュールを描く。
ただ、民意が示された直後から、移設作業を進めれば、いたずらに反発をあおり、移設現場での当局者側との「衝突」も起きかねない。
当面の焦点は、沖縄防衛局が9月に県へ申請した埋め立て工法変更への知事の判断だ。辺野古移設に反対する名護市長の権限が及ぶ区域での作業を避けることで、協議を不要とする思惑含みの申請だったが、翁長氏は16日夜、「知事権限を行使する」と発言し、早速政権側をけん制した。
承認されなければ、工期に影響が出かねない。政府筋は身構える。「辺野古移設は、今後もいばらの道だ」
(共同通信)