【ブリスベン=中山真】安倍晋三首相は20カ国・地域(G20)首脳会議出席から17日午後に帰国し、来年10月からの消費増税の延期と衆院解散・総選挙に踏み切る方針を18日に表明する。これに先立ち16日、ブリスベン市内で同行記者団と懇談し「国民の理解と協力なくして政策は進められない」と述べ、増税延期は衆院解散・総選挙で国民に信を問うべき事態になるとの認識を示した。
首相は増税を延期した場合の対応に関し「民主党の大失敗はマニフェストに消費税を上げると書かずに、民主主義の基本である選挙で国民に問うことなく(引き上げを)決めたことだ」と指摘した。自民党は2012年の前回衆院選公約で消費税率の10%への引き上げを打ち出している。増税延期は公約の見直しにつながり、国民の信を問う必要が出てくるとの考えを示唆した。
衆院解散については「私自身は解散に言及したことは一度もない。この言い方を変える段階にはない」と具体的に言及することを避けた。
増税判断をめぐっては「税収を増やすために税率を上げるわけで、景気が腰折れしてデフレに戻り、税収が落ちていけば元も子もない」と強調した。「冷静な判断が求められている。精神論で国民生活に大きな影響を与える判断をすべきではない」とも語り、法律通りの引き上げを求める意見を暗にけん制した。
増税延期は「アベノミクスの失敗だ」と野党は批判している。首相は政権発足以来の雇用や名目賃金の改善実績に触れ「我々の経済政策抜きに、この状況をつくり出し得なかったことは明確だ」と力説。「アベノミクスの成功を確たるものにするためにどうするかだ」と語り、増税を見送ってもアベノミクスの失敗には当たらないと反論した。
首相は17日に公明党の山口那津男代表と会談する。同日に発表される7~9月期の国内総生産(GDP)速報値や増税の影響を点検する有識者会議の18日の最終会合を踏まえて増税先送りを最終判断する。衆院選日程は「12月2日公示―14日投開票」とする方針だ。実施可能な最も早い日程にすることで15年度予算の編成作業への影響を最小限に抑え、年度内成立を目指す。
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