(英エコノミスト誌 2014年11月15日号)
北京で開催されたAPEC首脳会議には成果があったが、大国の競争意識がいまだ太平洋地域を脅かしている。
中国では、握手さえも力の表現になる。先日北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で、習近平国家主席は米国のバラク・オバマ大統領を迎える際に右側に立ち、カメラに向かって体を開いていた。力強い自信を示す態度だ。
対するオバマ大統領は、まるで貢物を献上するかのように、左側から習主席の方に近づくよう求められた。そのため、肩がカメラの方に向き、受け身の体勢になった。
最近では、首脳会議のごくささいな演出から地球規模の極めて大きな問題まで、あらゆることが中国と米国の競争意識に覆われている。
表面上は、この週は外交が勝利を収めた。前述の握手よりもさらに重要な握手が行われた――渋々ながらようやく実現した、習主席と安倍晋三首相の握手だ。この握手は、日中間で問題化している尖閣諸島を巡る緊張の緩和を示唆するものだ。
習主席とフィリピンのベニグノ・アキノ大統領は、それとはまた別の領海問題に関して「意見の一致」を得た。中国と韓国は、2国間の貿易協定で合意した。そして米国と中国の間では、気候変動、ビザ、貿易、安全保障といった分野で確かな進展があった。
無気力で、ときに険悪にもなった従来のAPEC会合と比べると、今回は明確なビジョンが見えた。首脳会議の場は、このあとミャンマーとオーストラリアへ移った。問題は、そうした成果のすべてが、中国の台頭と米国の相対的衰退から生じた環太平洋地域の緊張を緩和するための最初の一歩にすぎないという点だ。
すぐ後に付いていく――砲艦に乗って
第2次世界大戦以降、米国の海軍力がアジアの安全保障を支えてきた。1972年のリチャード・ニクソン大統領の訪中が高く評価されたのは、それにより米国と中国が対ソビエト連邦で連携することになったためだ。
だが同時に、米国のベトナム戦争終結を支援し、ひいてはアジアにおけるパックスアメリカーナを容認するという中国の意思表示でもあった。そうした時代が、今、終わりを迎えている。
中国経済は、まもなく米国経済を抜き去り、世界最大になる。中国は再びロシアと手を結んでいる。11月9日には、両国が天然ガス供給に関する新たな大型協定に署名した。真正面からの戦争になれば、中国の軍事力は米国に到底かなわない。だが、中国の力が拡大していけば、米国は次第にアジアから遠ざけられる。米国が台湾を守るのは難しくなるし、韓国や日本の米軍基地も脅かされる。
習主席は今年5月、「アジアの安全は、アジアの人々の手で守られるべきだ」と発言し、これ以上ないほど態度を明確にした。