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【衝撃事件の核心】
売るわけない「必勝法」、言うわけない「儲け話」…止まらぬ特殊詐欺、主流は現金「宅配便で送って」
特殊詐欺の被害が止まらない。警察庁が8月7日に発表した今年1~6月の全国の被害(暫定値)は、昨年同期を56億2千万円(26・5%)上回る268億3千万円。上半期としては過去最悪だ。自分はだまされないと思っていても、犯人側は手を替え品を替え、狡猾(こうかつ)に迫ってくる。最近のトレンドは「金融商品取引」や「架空請求」。キーワードは「送付型」に「私書箱」で、現金を宅配便やレターパックで送らせる手口が目立つ。「もうけ話」や「必勝法」をアカの他人に教える人はいないのだが、それでもひっかかってしまう最新の特殊詐欺事情に迫った。
「名義貸して」は犯罪
「飲料会社の豊中支店ができ、社債を発行しています。お金は私が支払うので名義だけ貸してくれませんか」
今年7月3日、大阪府豊中市の70代の無職女性宅に、金融機関の社員を名乗る男から電話があった。ていねいな口ぶりで、飲料会社も実在のものだったので、女性は了承した。
すると2日後、同じ男から再び電話が。
「すみません。お金の都合がつかなくなったので助けてください。時間がなくて間に合わないので、300万円を宅配便で送ってもらえませんか」
女性はその日のうちに指定された東京都内の住所に現金を宅配便で送った。
さらに6日後。今度は飲料会社の社員を名乗る男から「名義貸しが上司にばれた」と電話がかかってきた。今にも泣き出しそうな声だった。電話口に出た上司役の別の男から「名義貸しはいけないこと。800万円払わないと今までの投資が台無しになる」などといわれ、4回に分けて計3千万円を宅配便で送った。女性は後日、同様の名義貸し名目の詐欺事件を報じる新聞記事を読み、警察に相談した。
何かと理由を付けて代金を請求する「架空請求」詐欺。警察庁の今年1~6月のまとめでは、昨年同期より44億3千万円も多い68億4千万円にも上っている。
必勝法を売るわけがない
「『名義を貸すぐらいなら大丈夫かな』と重大に受け止めず、詐欺とは思わない人が多いのが要因だろう」と指摘するのは、ある捜査関係者。その時点では何も損をすることがないから、安請け合いしてしまうのかもしれない。
損をしないどころか、もうかってしまうと思って罠(わな)にはまるのが「金融商品取引」詐欺だ。
大阪では上半期、特殊詐欺の認知件数自体は284件(昨年同期533件)と減少したが、被害額は16億7500万円(同17億1千万円)で、年間通して過去最悪だった昨年に匹敵する数字となった。