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ゆうすけのぼうけん 作者:aaaaa

ゆうすけ異世界でbestを尽くす決意をする。

一体どれ程の時間歩いたのだろう。足が痛い、腰も痛い、目もなんかしょぼしょぼする。ふと後ろを振り返ると道は遠くその先を薄暗い闇の中へ呑みこませている。部屋の前に置いてきた目印のペットボトルはもう見える範囲には存在しない。壁に背を預けると塵ひとつない石の床の上に腰を下ろす。
「あー腰が痛い。」
おまけに眠いしだるいしこれ以上足を動かしたくない。
ちんちんもかゆい。ポリポリと股間を掻きながらゆうすけはこの非現実的な世界に早くも疲れ始めていた。
「よっこいしょっと…」壁を背に座り込む。久々の運動で足が痛い。おまけに全身がだるい。
「歩くのはすごく面倒臭いなぁ…」
つと上を見る。そこには今まで歩いてきた道程と同じように壁が上へと延び深淵に繋がっているだけだ。
「はぁ…どうするかな。これから」深く溜息をつく。昔から先のことを考えるのは苦手だった。
高校の頃を思い出す。試験前もゲームをし続け学期試験では必ず落第点を取っていたあの頃…
勉強について行けなくなりクラスメイトからさんざ馬鹿にされ孤立していたあの頃。何もかもが辛かった。結局辛い現実から逃げる様に高校を中退してしまった。
そして部屋に引きこもってからはずっと先の事を考える事を避けてきた。幸い親は時々小言を言うだけでそれ以上踏み込むようなことはしなかった。部屋に引きこもり続ける俺が怖かったのかもしれない。何を考えてるのかわからなくて怖い…みたいな感じで、でも俺は別に自分をこんな目にあわせた社会に復讐してやる!とか俺をいじめてた奴らを殺してやりたいとかそういう物騒なことは何一つ考えてなかった。ていうか何も考えてなかった。何も考えない事で俺は現実から逃げようとしていた…先を考え始めると俺は駄目人間だってネガティブ思考が常につきまとう。お前なんかに何かできるわけないだろっていう感じのそういうくらーい思考が俺をむしばんでいく。俺はそれがいやだった。だから部屋に引きこもってネトゲをすることで辛い現実から逃げまくってた。んで、いつか本当にこの現実から逃げられたらいいなとかそんなこといっつも思ってた。でもあれだな。駄目だわ。あっちの現実から逃げても結局現実は現実のまま…辛いまんまだ。
ゆうすけはガラスのハートの持ち主だった。それは足が痛いとかお尻が痛いとかそういう些細なことでもひび割れ炎症を起こすのだ。
何処までも続く暗闇を見つめてるとウジウジとした思いが幾らでも膨らんでくる。
ゆうすけは不意に目を閉じると、パン!頬を思いっきり叩いた
どこか遠くへ行っていた気力が帰ってきたのを感じる。
(俺は出来るニートだ!どんな場所だってBESTを尽くす!俺を舐めるな異世界!)
ゆうすけはむくりと立ち上がると先へと進むための一歩を踏み出した。

ゆうすけが部屋を出てからもう30分が過ぎようとしていた。


その日は慌ただしい日であった。図書館棟の地下深く、ひんやりとした書庫から古くくすんだ羊皮紙を慎重に箱に入れ運び出す。長く伸びた階段をはぁはぁと息をきらしながらやっとこさ上りきる。大広間の長い机に新たな労働をどさりと置く。そして屍の様に腐った眼をして羊皮紙を白紙の製本に一心不乱に書き写してる同僚のジョンにチラリと眼で合図すると隣の空いた席にポリーは静かに座った。
図書館棟にはただカリカリとした音が響いている。
古くなった羊皮紙の記述を新たに白紙の製本に書き写すしているのだ。ポリーの普段の仕事は古語を研究である。だが宮仕えであるからには時にはこういう雑事もしなければならない。これは大作業だがそれだけ国の歴史が長いということでもある。それを思うとポリーはほっこりとした気分になる。それに国の古い書物に新しく目を通すことで何か大きな発見があるかもしれない。決して無為な作業ではないのだ。これも必要な仕事なのだ。そう自分に言い聞かせる。
一人の若い書記官が思い出したように立ちあがるとよろよろと歩いていく。光取りの天窓の下へまで来ると垂れ下がったひもをぐいっと引っ張った。開かれた窓からすぅっと朝の冷たい空気が流れ込む。それと同じだけどろりとした空気が外へと出て行くのを感じる。

ふと見ると彼女はひもを握りしめ立ったまま硬直している。恐らく立ったまま気絶している。窓を開けることで最後の気力を使い果たしたようだ。だが誰も何も言わない。自分の分担というものは決まっているし、そもそもそれどころではないのだ。
「クククっ…」その様子がおかしくてポリーは思わず笑った。
1枚目の羊皮紙に目を移す。
『宝物殿宝物一覧』
おっ、こいつは凄い。お宝一覧表じゃないか。冒険者や盗賊なら目をキラキラさせて読み込むかもしれない。彼らに古語の知識があったならね…まぁ無いだろうけど。
そこには過去、様々な理由で王国が獲得した財宝や魔道具(諸外国に名を知らしめている様なS級の宝物は載っていない。そういったものはまた王墓等に別途保管され。代々王の墓守り達が管理しているのだ)のちょっとした説明文と簡単な絵が描かれている。
とは言っても大したものは無いだろう。価値のあるものは別に保管されるか、売り払われたり外交の道具として使われる為に財務局や外交局の管理へと移るのだ。宝物殿とは云わば名ばかりのいわばガラクタ倉庫である。いや古いものには時に別の付加価値が付くためあながち間違いじゃないかもしれない。これは未来の宝物殿なのだ。…気の長い話ではあるが
ページを1枚2枚とめくり内容を確認していると小さなメモ用紙の様なものが本を留める芯にくくりつけられているのに気づいた。
ん?なんだこれ?
明らかに製本後に付けられたものである。だが城の書物は製本時魔術にて封印を施す。内容を改ざんされないようにする為だ。予想外の事態にポリーは戸惑う。しかも記されている内容もよくわからない
まるで子供の妄想の様な品だ。こんなものはS級魔道具にも存在しない。
ひとまず書記長官に確認を仰ぐことにしようか。
チラリと彼女を見やる。未だにひもを握りしめたまま気絶している
名前はメリル・ポロシム。もし自分に娘がいたらきっと彼女と同じぐらいの年頃だろう
彼女は若くして王国魔道学研究所の副所長に収まった新進気鋭の魔術師である。また古代魔道具の権威であり、そしてこの大作業を監督するために派遣された書記長官でもある。
後で行くか今行くか。ポリーは迷う。誰もが彼女をボスへの恐れではなく自分の娘にあてる様な親しみを抱いた。メリル嬢には人にそういう親しみを抱かせる不思議な魅力があった。若い女性だからと言うのもあるが、それだけじゃない。なんだろう、自分でもよくわからないがそうなのだ。無意識に幻惑魔法を発動させてるのかもしれない。。もしだとしたら恐ろしいことだが
今行けば彼女を起こすことになる。それは辛い。
だが後で行ってもおそらく彼女はもっと辛いだろう…
涎をぽたぽたと床に垂らしながらうつむいている。
確認しなければいけない書物はこれからどんどん増える。彼女を過労死させるわけにはいかない。…少なくとも今はまだ
よろよろと立ちあがるとポリーは彼女の下へ駆け寄っていく。


古びたメモ書き
そこには小さな文字で3つの品が記されていた。
1:『早送りの秘薬』
使用することでそれは劇的に老化する。
飲む量を間違えてはならない。およそひと口で死にいたる量である。
2:『巻き戻しの秘薬』
使用することで劇的に若化する。
飲む量を間違えてはならない。およそひと口で消滅に至る量である。
3:『熱線銃』
小さな四方形のエネルギーを放射する。
一人の人間がおよそ蒸発する熱量を発生させる。
これらは全て王墓の地下迷宮その深層より発掘されたものである。


エターナル小説二話目
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