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【社会】

神棚、マグロ、ブルゾン… 何でもアリ 政治「私」金?

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 小渕優子・前経済産業相の政治団体をめぐる疑惑で、政治資金の使い道があらためて問われている。安倍内閣の閣僚の懐をのぞいてみても、高級店での飲食や大量の贈答品など、庶民の暮らしとはかけ離れた様子が浮かぶ。「政治活動に使った」と言ってしまえばまかり通る野放図ぶりに、使途の制限を求める声も上がる。 (大平樹)

 東京・銀座の老舗クラブに高級ホテル、しゃぶしゃぶ店、会員制サロン−。麻生太郎・副総理兼財務相の資金管理団体「素淮(そわい)会」の二〇一二年の政治資金収支報告書には、「会合費」を支払った飲食店などの名がずらり。公開が義務付けられている一件一万円以上のものだけで二百十七件。二日に一度以上のペースで会合を開いたことになる。合計金額は二千四百万円に上る。

 このうち最も多く支払ったのは、港区の六本木交差点から歩いて十分ほどのビルの一室にある会員制サロンだ。支払いは八回で八百万円で、一回で百五十万円を超えたこともあった。

 素淮会の担当者は「一回の支払いが高額なのは、数回分の利用をまとめて支払ったため」と説明した。実際の利用回数や人数は「相手があることなので答えられない」とした。

 政治家の政治資金の受け皿は、資金管理団体と政党支部、後援会がある。いわば三つの「財布」だ。一般的に、政党支部には本部を通じ、税金で賄う政党交付金が支給されている。政治資金の私的流用は禁じられているが、飲食も旅行も「政治活動費」で通るのが永田町の常識だ。

 閣僚の報告書には贈答品の記載も目立つ。安倍晋三首相の資金管理団体「晋和会」は一二年、地元山口県のウニの販売店や水産会社に計七十五万円、同県萩市の窯元に計八十万円を支払った。都内の百貨店には十一回、計百七十万円を支出。高級洋食器店で「慶弔品費」として、一回に四十八万円を使ったことも。

 晋和会に贈り先や目的を問い合わせたが、「法令に従い適正に処理して報告している」と答えるのみだった。

 ほかの閣僚の政治団体の支出で目についたのは「マグロ代」約十四万円、「やきそば」約十二万円などの食べ物、デパートで「ブルゾン」三万円、家電量販店で「商品代」二十四万円など。取り付け工事代を含めて「神棚」に約七万六千円の支出もあった。

◆「使途明示する基準を」

 政治活動の名目があれば事実上、政治資金は何にでも使うことができる。政治資金規正法が使い道を制限していないからだ。

 小渕氏の場合はベビー用品や地元の群馬県特産のネギを買っていたことが問題視された。贈答品への支出は、他の閣僚の報告書にも散見される。贈り先が選挙区内だと公職選挙法に触れる恐れがあるが、報告書では誰に贈ったかは分からない。小渕氏は「県外の支援者らへの贈答品。政治活動費として認められる」と正当性を主張した。

 頻繁な高額の飲食も、政治家の側は「政治活動の一環」と済ませるが、庶民の目には政治資金でぜいたくをしているように映る。

 政治家が政治資金を私的に流用すれば、税法上は個人所得とみなされ課税の対象になる。ただ、実際に課税されるのはまれだ。

 過去には静岡県熱海市に別荘用マンションの一室を購入した元建設相や、政治資金などで東京都内に自宅を購入した元官房長官が課税処分された。これは不動産というれっきとした証拠があったから可能だったケースだが、飲食や贈答の中から私的な支出を立証するのは難しい。

 専修大の増田英敏教授(税法)は「現行の規定は、政治団体に入った金はすべて政治活動に使っていると推定している。そのためよほどのことがない限りチェックせず、課税は免除する仕組みになっている」と指摘する。

 「政治家だけ特別扱いするのではなく、一般の事業所得者と同じように税務調査で使途を明らかにし、必要経費として認める基準を設けるべきだ」と話している。 (西田義洋)

 <政治資金> 政治資金は主に献金で賄われる。このうち企業・団体献金については1994年の法改正で、政治家の資金管理団体への献金額の上限が1企業・団体につき年間50万円に制限された。代わりに政治活動を税金で支える政党交付金が導入された。99年には資金管理団体への企業・団体献金は全面禁止となったが、政党支部が抜け穴的な受け皿となって温存され、政党交付金との二重取りの状態が続いている。

 

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