「消費税先送り解散」に対して、野党はどこも反対しない。三党合意の当事者だった民主党も、野田元首相まで「先送りやむなし」だ。国会は無責任な自民党に対して歯止めをかける党のない「オール野党」になってしまった。日米開戦を決めたときも、こんな感じだったのだろう。
「増税先送りで成長率が上がればプライマリーバランス(PB)が黒字になる」というのは、論理的にはありうるが、問題は何%の成長率が必要かである。内閣府の推計によれば、図のように「経済再生ケース」で平均3.3%の名目成長率を想定してもPBは黒字にならないが、政府債務残高(対GDP比)は収束する。しかし2.1%の「参考ケース」だとPBの赤字は増え、政府債務は発散する。

しかもこれは消費税10%の場合だ。8%のままで名目成長率が1%程度だと、政府債務は参考ケースより急速に発散する。増税の先送りで成長率が2%に上がるという(ありえない)仮定を置いても、債務は発散する。8%のままでPBが黒字になるには、5%以上の名目成長率が必要だ。
労働人口が毎年1%近く減る国で、そんな名目成長率(実質成長率+インフレ率)を実現する方法は、激しいインフレだけである。それは不可能ではない。GDPの2.5倍の政府債務を抱えたイギリスは、1970年代に20%台のインフレと名目金利で政府債務を踏み倒し、ヨーロッパの最貧国になったのだ。
しかもこれは消費税10%の場合だ。8%のままで名目成長率が1%程度だと、政府債務は参考ケースより急速に発散する。増税の先送りで成長率が2%に上がるという(ありえない)仮定を置いても、債務は発散する。8%のままでPBが黒字になるには、5%以上の名目成長率が必要だ。
労働人口が毎年1%近く減る国で、そんな名目成長率(実質成長率+インフレ率)を実現する方法は、激しいインフレだけである。それは不可能ではない。GDPの2.5倍の政府債務を抱えたイギリスは、1970年代に20%台のインフレと名目金利で政府債務を踏み倒し、ヨーロッパの最貧国になったのだ。