教員採用:心理テスト、受験生ら募る不信
毎日新聞 2014年11月16日 09時30分(最終更新 11月16日 10時52分)
教員本来の能力とは関係がないとみられる質問を含んだ心理テストが、一部自治体の教員採用試験の適性検査で行われていることが15日、明らかになった。精神疾患の有無を判定するための指標として、米国で約70年前に開発されたとされるテスト「MMPI」。受験した教員志望の学生や関係者からは、採用との因果関係が不明で人権侵害につながりかねない質問内容に、不信の声が相次いでいる。【藤沢美由紀】
「時どき、悪霊にとりつかれる」「父が好きだ(だった)」「花屋になってみたい」「神や仏はあると思う」−−。
今年7月。ある県の教員採用試験の適性検査を受けた複数の大学4年生によると、こうした内容の質問を含んだMMPIとみられるテストが筆記試験と同じ日に行われた。検査は約30分間。音声で質問が流れ、約120問に対して三択で回答を求められた。
受験した女子学生(22)は親や宗教、性別役割分担などに関する質問が含まれていたことに「プライバシーに関することであり、嫌な思いをする人がいるだろうと違和感を覚えた」と振り返る。別の男子学生(22)は一緒に受けた友人らと「宗教についての質問はおかしい、と後で話題になった」という。
性的マイノリティー(LGBT)の自殺防止などに取り組む団体「いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」共同代表で、心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」の遠藤まめたさん(27)は2010年、埼玉県の公務員採用試験でMMPIとみられる適性検査を受け、「同性にひかれるか」などの質問にショックを受けた。結果は不合格。ところが2年後、性同一性障害の診断のために通ったクリニックで同じ検査に出合った。
遠藤さんはその検査で「性自認は男性」と判定された。「そうした判定ができてしまう検査を受験者が答えざるを得ない採用試験で使うのはおかしい。公平なはずの公的機関が実施するのは信じられない」と憤る。
関東地区の教職課程のある私立大学146校でつくる「関東地区私立大学教職課程研究連絡協議会」は、MMPIとみられるテストの質問に不安や不快感を抱いた受験学生からの訴えをきっかけに、10年度からMMPIについての調査研究を進めている。