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【社会】

原発事故 風化にあらがう 町民分断 続く双葉 ドキュメンタリー第2部公開

「フタバから遠く離れて第二部」について語る舩橋淳監督=東京都港区赤坂で

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 東京電力福島第一原発事故により、埼玉県加須(かぞ)市に役場機能ごと避難していた福島県双葉町を追ったドキュメンタリー映画「フタバから遠く離れて 第二部」の公開が十五日から、東京都中野区のポレポレ東中野で始まった。事故の直後から避難所に入り、カメラを回し続ける舩橋淳(ふなはしあつし)監督(40)の根底にあるのは「原子力の電気を使ってきた自分は加害者の側に立っている」という罪の意識だ。 (増田紗苗)

 事故から約九カ月間を記録した第一部に続き、第二部では、役場機能が加須市の旧騎西高校から福島県いわき市に移り、放射性廃棄物の中間貯蔵施設について、国から建設計画を示されるまでの約三年間を描いた。

 本作で浮かび上がるのは避難先や賠償額、中間貯蔵施設の計画で分断され続ける双葉町の悲痛な姿だ。双葉町から福島県いわき市に避難した町民が、加須市に避難した町民は弁当や光熱費が無料だと支援の差に不満を漏らす。加須市の避難住民はそのニュースを見て、複雑な思いを抱く。

 舩橋監督は「町民同士は目の前の具体的な不満をめぐってぶつかり合い、事故の元凶である国と東電の存在が見えにくくなっている。描くべきか最後まで悩んだが、原発事故がなければコミュニティーが分断されることもなかったという視点を与えられる作品にしようと思った」と話す。

 第一部では「町民同士の対立を上映すると、悪口を言った人が悪者に映り、新たな内部分裂を起こす火種になってしまう」と、対立の様子をすべてカットした。しかし、第二部では原発事故による被害の本質を浮かび上がらせるため、あえて盛り込んだという。

 ほとんどが帰還困難区域に指定されている町の荒廃も進んでいる。カメラは、障子や畳がぼろぼろになった自宅に一時帰宅し、黙々とネズミのふんを掃除する女性の姿や、先祖代々守ってきた土地が中間貯蔵施設の建設予定地となった一家の悲嘆の声を捉える。

 舩橋監督は事故が風化することにあらがう。「風化とは自分のことであるのに、自分のことでないように目をつぶることだと思う。原子力の電気を使ってきたのは僕たち。遠く離れた双葉の人たちだけに、コミュニティーの崩壊や中間貯蔵施設といった犠牲を背負わせるのはおかしいと感じてもらいたい」と力を込める。

 映画は今後、全国でも順次公開される予定。ポレポレ東中野では一日三回上映され、日によっては舩橋監督とゲストのトークショーも行われる。問い合わせはポレポレ東中野=電03(3371)0088=へ。

 

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