
こんな経験をしたことはないだろうか?夜、明かりの消えた暗い階段を上っていると、背後から幽霊が忍び寄って来ているような気がする。いや絶対来ている。これは紛れもない実感だ。そして、階段も半ばにさしかかるとどうにも駆け上りたくなってしまうのだ。
いるはずもない誰かがすぐ側にいるという感覚を”存在感”という。最近、『カレント・バイオロジー』誌に掲載された研究では、この感覚を生み出す脳の領域の特定に成功しており、実験室で再現することができたという。
Neuroscientists awaken ghosts… hidden in our cortex
この論文は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の高名な学者であるジュリオ・ログニーニ氏によって発表された。”存在感”を感じた経験がある神経障害(主にてんかん)を患った患者12人の脳を研究したところ、島皮質、前頭頭頂皮質、側頭頭頂皮質の3領域において病変を発見したそうだ。
これらの領域は、自意識、動き、空間的位置の認識を司る部位であり、これらの感覚運動信号に混乱が起きたとき、いるはずのない何者かの存在を感じるとるという。
これは神経障害のある患者だけに限らない。
別の実験では、神経障害のまったくない健常者に目の前に設置されたロボットのスティックを操作させ、すぐ後ろにあるアームが操作すると同時に被験者の背中に触れるような仕掛けを作ったところ、感覚運動信号の混乱を引き起こし、いるはずのない何かの存在感を感じ取ることができたという。
ロボットが触れるタイミングは、同時の場合と、一瞬遅れる場合の2パターンがあった。被験者が存在感を感じることができたのは一瞬遅れる場合のみであった。
こうした被験者の脳に病変はない。人間の動きと触れられたという感覚の混乱は存在感を引き起こす上で十分なはずだが、正常な脳の中で起きているメカニズムについては明らかではないそうだ。
「可能性としては、自分の行為の帰属先を決める処理における問題が考えられる」。と、ログニーニ氏は登山家のラインホルト・メスナー氏を例に挙げて説明する。
メスナー氏はパキスタンにある山を下山中に自分とパートナーの他にも、もう1人目に見えない人物がいるのを感じていたそうだ。ログニーニ氏によれば、これは高所にいたことか、または下山の動作を何度も繰り返したことで脳が自分の動作を忘れてしまったことが引き金となり、動作の主をいるはずのない人物のものと錯覚したことが原因であるそうだ。

本研究は、ただ不気味な現象の謎を解き明かすだけでなく、統合失調症を理解する上でも意味がある。ここで示された信号の混乱が、何者かによって操作されている感覚をはじめとする統合失調症の症状と関係があるかもしれないのだ。そのため、ログニーニ氏は次のステップとして、統合失調症患者の協力を仰ぎ、その症状と同じ感覚を作り出せるか実験することを計画している。

また、意識全般に関して興味深い事実も示唆する。すなわち、脳は身体の動作を常に理解しているわけではなく、その動作を行っているのが自分の身体であることも忘れてしまう可能性があるのだ。
ログニーニ氏によれば、脳は複数の身体イメージを持っているが、これは通常1つに統合されているため、空間と時間における身体と意識の統一感を生み出している。しかし、脳に損傷があったり、ロボットなどによる混乱が起きたりすると、別の身体のイメージが出現し、自分の身体がまるで他人の身体であるかのように感じられるのだ。
幽霊は恐ろしい。しかし、脳のバランスがデリケートなもので、ちょっとした切っ掛けで自分を自分と認識できなくなるという可能性もやはり恐ろしい。幽霊の正体は実は自分自身なのかもしれない。
via:theatlantic・原文翻訳:hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
なんか、死後も活動できないとなると残念
2. 匿名処理班
まあ幽霊なんて結局脳の勘違いなのかもね
寝ぼけて変なもの見たことあるし金縛りで変なもの見たこともよくあったし
>>いるはずもない誰かがすぐ側にいるという感覚を”存在感”という。
存在感って言葉をそんな風に使ったことも見たこともないんですがそれはww
英文そのまま翻訳したのかな
3. 匿名処理班
知ってた、そして幽霊を見るためにはホラー系小説ばかり読めば見えるという事も
4. 匿名処理班
1人になると頻繁に"存在感"感じるんで嫌なんですけど、病的なものであれば治るようになるのかなぁ…
5. 匿名処理班
わかんないけど唯脳論者のいい分なんだな
6. 匿名処理班
うん?ソースはすぐに出せないが、とっくの昔に、量子力学で幽霊の存在が証明されていたはず。これは幻覚現象の証明で、幽霊(光学的に見えない存在)の証明ではない。つかこの幻覚現象も大分前にアメリカが実験で証明していたと思ったけど…
7. 匿名処理班
これは、面白い。
肝試しで何かに触った時にタイミング良くちょっと遅らせて背中を触れば、
霊の存在を感じさせられるってことかな?
8. 匿名処理班
防犯トラップに役立ちます
9. 匿名処理班
視線を感じるって言う人は多いけど実験すると衣擦れとか聞こえない距離から
見つめられてても誰も気づかない。
10. 匿名処理班
人工的に作り出すことに成功しただけであって、居ないという証明にはならない
11. 匿名処理班
ビデオに映っているものはどう説明すんの?
12. 匿名処理班
こんなことは実験するまでもなく当たり前のことだ。物理的に存在しないものが見えたり聴こえたりするのなら、それはもう脳が見せるまやかし以外あり得ない。
で、その先は?怪異が脳の異常だと知った上で、それでもなお見えてしまうこともあるだろう。聴こえることもあるだろう。
その時我々はどう向き合えばいいのか。「ああ、いよいよ自分の脳はおかしくなった、もう駄目だ、狂ってしまった」とでも考えればいいのか?
脳が見せるまやかしを深く考えすぎずに「あれはお化けのせい」と捉えるのは愚昧でも何でもなく、生きていく上での智恵だ。他はともかく、脳や自我に関することについてだけは、我々には逃げ場が必要だ。自らの脳を疑ってしまっては、何一つ立ち行かないからだ。
科学はいつも真実を明らかにする。だがその真実がヒトにとって甘いかすっぱいか、そこに対して責任は持たない。科学は価値を決めない。
「なんだか不気味なことがあったが、どうやら自分の日頃の行いが良くないようだ。まずは部屋を綺麗にして言動を正し、たまには墓参りに行っておこう」
これで充分だ。
13. 匿名処理班
くそ!死んだらガッキーの背後霊になってずっとストーキングするつもりだったのに!
14. 匿名処理班
なんかこれ、
ただの低酸素状態の幻覚状態を
別アプローチで再現してるだけじゃないか?
似たような症例で視線を感じるとかあるけど
そっち系の研究の方が方向性があってるような
気がするな・・・・・・
15. 匿名処理班
これは幽霊の完全否定にはもちろんならないけれど、ただ見た感じたってだけの
証言の信用性低下にはなるな。見たから存在する!ってのは大してあてにならない。
16. 匿名処理班
そりゃ、死ねば
「生まれる前に戻るだけ」
だから、幽霊なんてあるわけないわなw
手足も動かせない光も感じられない。自我も消える。ただ眠ったまま。
そしてそれを怖いとか不満に思うこともない。
それが怖いから人は神と宗教を創造した。
17. 匿名処理班
ち、小さいおじさんとかもそういう“存在感”ですかね…?
18. 匿名処理班
幽霊やお化けなんかは、脳が処理できずに削除した残りカスって話もある
実際に見て感じているのに、脳が存在認識できずに無いものとして処理、その時に偶然削除出来なかったものを幽霊と認識しているのだとか
つまり、我々が五感で感じているものが、すべてではないと言うことになる
19. 匿名処理班
富士急にリアルなお化け屋敷アトラクションが作れる!
20. 匿名処理班
※5
脳科学者なんだから唯脳論になるのは当然
他の分野の研究者がアプローチすれば、また違った切り口になる
例えばなんでもかんでもプラズマのせいって人もいたでしょ
科学全部にいえることだけど、1つの研究で真理や結論ってのは出せなくて、いくつもの研究がまとまって「正しいようだ」ってのが浮かび上がってくるわけだ
この研究が「心霊現象」すべてを説明できる訳ではないけど、「誰かいる気がする」って感覚の研究の足がかりになるよね