11月24日に現在イランに対して実施されている経済制裁の解除に関する話し合いが行われます。この会議の成り行きによっては、市場に新しい原油の供給が増えることも予想されます。

イランはすでに野心的な増産計画を語っており、長期的には800から1,200万バレル/日まで生産を持ってゆきたい考えです。

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これは、ハッキリ言って政治的にも技術的にも「絵に描いた餅」だと思います。しかし産油国の焦りを示す例として、興味深いエピソードではあります。

ここへきてサウジアラビアも「アメリカのシェール開発の息の根を止めるために増産する」作戦に出ており、自殺行為的な増産の話が、あちこちから聞こえてきます。

なぜ、産油国各国は、そういう結論を出すのか?

今日は、この点について僕の考えを示します。

まず今回の原油安は需要不足ではなく、アメリカにおけるシェール革命が直接の原因であることは先日の記事で説明しました。

このシェール革命は、わかりやすいように単純化して言えば、ロボット・ドリリングです。つまりセンサーやデータ解析装置を満載したドリリング・ロボットが、インテリジェントにターゲットになっているシェールを掘り進んでゆくので、成功率が向上しているのです。



僕がこのことに最初に気付いたのは1990年代の終盤です。当時、シリコンバレーのスタートアップ企業、ネットアップに会社訪問すると「得意先は石油会社だ」という説明がありました。

「兎に角、石油の探索・採掘と言う仕事は、データをどんどん必要とする。だからどんだけデータ・ストレージがあっても足らないんだ」

シェールは、別にアメリカだけでなく中国やポーランドなどにもあります。しかしアメリカ国外では、いまのところ成功していません。その理由は、シェール開発は長年のR&Dに基づくノウハウの集大成であり、「ヨイと巻け!」式の頑張りだけで真似できる技術ではないからです。

ハイテクを駆使した生産技術が、これまでのオイル・ビジネスの「そろばん」を根本から覆している以上、生き残るためにはその最新鋭の技術に対するアクセスを確保する必要があります。

しかし世の中には過去の行きがかり上、アメリカとあまり仲良くない国々が存在します。ベネズエラやイランはその例です。

それらの国々は国庫の収入の少なからぬ部分を原油や天然ガスに依存しています。

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原油価格の低迷は政府予算の赤字転落を招き、場合によっては公共サービスのカットバックや通貨急落によるインフレを招きます。

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今回の原油の供給過多は、石油探索・生産のハイテク化がもたらした現象です。そうである以上、「モーアの法則」に似たエコノミクスが働く可能性は排除できません。

それは資源を基盤とした世界秩序を変える可能性を秘めているのです。