「攻殻機動隊」の世界は実現する 光学迷彩から記憶、義体までNTTドコモがプロジェクトスタート
1989年にマンガ家・士郎正宗さんが『攻殻機動隊』で描いた未来図は、多くの人に衝撃を与えた。デジタルネットワークの張り巡らされた社会、あらゆる情報は瞬時に手元に届けられる。それから25年、予想を超える情報ネットワークの広がりは、本作があたかも来たるべき未来を予言していたかのようだ。
勿論、まだ実現に至っていない技術も少なくない。しかし、そうした技術もリアルな世界としてすでに視野に入っているのでないだろうか?
そんな『攻殻機動隊』で描かれている世界の実現を応援する「攻殻機動隊REALIZE PROJECT」がこの11月にスタートした。イノベーションによる事業・産業の成長に投資を行うNTTドコモ・ベンチャーズが仕掛けるものだ。
プロジェクトでは『攻殻機動隊』に描かれたテクノロジーの実現こそが、未来のビジョンではないかと考える。今後『攻殻機動隊』の世界をリアルに創っていこうと産官学、そしてアニメの製作委員会が一体となってプロジェクトを進めるという。
そのキック・オフを飾るトークセッションが、2014年11月12日、東京・六本木ガーデンギャラリーで開催されたNTTドコモ・ベンチャーズDay内で行われた。トークのテーマは『攻殻機動隊』のテクノロジーの実現性、とあれば攻殻ファンには見逃せないだろう。
NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長の秋元信行氏の司会のもとトークに参加したのは、稲見昌彦氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)、藤井直敬氏((理化学研究所脳科学総合研究センター/ハコスコ代表取締役)、梶田秀司氏(産業技術総合研究所)、遠藤諭氏(角川アスキー総合研究所)という顔ぶれである。
稲見昌彦氏は『攻殻機動隊』にも登場する「光学迷彩」のリアル世界での研究、実現でよく知られている。藤井直敬氏は脳科学の専門家である。トークではヘッドマウントディスプレイを利用した現実と過去の記憶の混在、記憶改ざんが技術的に可能になっているという衝撃的な研究を紹介した。
梶田秀司氏はヒューマノイド型ロボットの開発を進めている。遠藤諭氏はそうしたテクノロジーを広く俯瞰する。
そうした技術が現在どこまで来ているのか、さらに『攻殻機動隊』の舞台となった2029年に実現するための技術的な課題を、登壇者たちが解き明かしていった。トークで驚かされたのは、想像以上の段階にある現在のテクノロジーである。一見ではどうなっているかも分からない視界から物体を消してしまう「光学迷彩」、ヒューマノイド型ロボットの微細な動きなどである。
藤井氏がマイクロマシーンは技術的には可能と述べたのが印象的だった。ただし、基礎研究だけで億単位、資金的に実現は難しいとのことである。
こうなると『攻殻機動隊』の世界はすぐそこのようにも感じるが、お金以外にもクリアすべき課題はやはり多いようだ。一番の課題は人間の脳にある。例えば、ネットワークと脳をつなぐ、義体を脳で考えたまま動かすといったことはハードルが高い。そもそも脳とネットワークをつなぐには、脳波ではノイズが大き過ぎて難しい。しかし脳に電極をつなぐとなると被験者になりうる人は少なく、それで動かせるデバイスにも限界があるという。
藤井氏は「脳の理解は進んでいない。我々の技術が及んでいない」と話す。義体を考えたまま動かすというのも難易度が高い。しかし、脳のことを別にして、直感的に体が動くことだけを考えればヒューマノイドの実現は視野に入る。人間の筋は600だが、現在のヒューマノイドのモーターは45、これを増やすことで人間の動きにより近づく。バッテリーの稼働時間も今後確実に伸びていく。
こうしてみると『攻殻機動隊』の世界全ての実現は無理としても、その中のいくつかはあと十数年の期間があれば可能かもしれないと思わせた。
新たな技術の実現は、想像を超えたイノベーションの突然の誕生によることが少なくない。むしろ、目標を持つことが技術革新や、さらに予想外の展開も呼び起こす。今回のトークセッションはそうしたかたちで意味がある。その掲げる目標がマンガやアニメでお馴染みの『攻殻機動隊』というのが、また日本らしいと感じた。
[数土直志]
攻殻機動隊REALIZE PROJECT
https://www.bandaivisual.co.jp/koukaku-special/realize/
『攻殻機動隊ARISE』
2015年 攻殻機動隊 新劇場版 公開
http://www.kokaku-a.jp/ 《animeanime》
勿論、まだ実現に至っていない技術も少なくない。しかし、そうした技術もリアルな世界としてすでに視野に入っているのでないだろうか?
そんな『攻殻機動隊』で描かれている世界の実現を応援する「攻殻機動隊REALIZE PROJECT」がこの11月にスタートした。イノベーションによる事業・産業の成長に投資を行うNTTドコモ・ベンチャーズが仕掛けるものだ。
プロジェクトでは『攻殻機動隊』に描かれたテクノロジーの実現こそが、未来のビジョンではないかと考える。今後『攻殻機動隊』の世界をリアルに創っていこうと産官学、そしてアニメの製作委員会が一体となってプロジェクトを進めるという。
そのキック・オフを飾るトークセッションが、2014年11月12日、東京・六本木ガーデンギャラリーで開催されたNTTドコモ・ベンチャーズDay内で行われた。トークのテーマは『攻殻機動隊』のテクノロジーの実現性、とあれば攻殻ファンには見逃せないだろう。
NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長の秋元信行氏の司会のもとトークに参加したのは、稲見昌彦氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)、藤井直敬氏((理化学研究所脳科学総合研究センター/ハコスコ代表取締役)、梶田秀司氏(産業技術総合研究所)、遠藤諭氏(角川アスキー総合研究所)という顔ぶれである。
稲見昌彦氏は『攻殻機動隊』にも登場する「光学迷彩」のリアル世界での研究、実現でよく知られている。藤井直敬氏は脳科学の専門家である。トークではヘッドマウントディスプレイを利用した現実と過去の記憶の混在、記憶改ざんが技術的に可能になっているという衝撃的な研究を紹介した。
梶田秀司氏はヒューマノイド型ロボットの開発を進めている。遠藤諭氏はそうしたテクノロジーを広く俯瞰する。
そうした技術が現在どこまで来ているのか、さらに『攻殻機動隊』の舞台となった2029年に実現するための技術的な課題を、登壇者たちが解き明かしていった。トークで驚かされたのは、想像以上の段階にある現在のテクノロジーである。一見ではどうなっているかも分からない視界から物体を消してしまう「光学迷彩」、ヒューマノイド型ロボットの微細な動きなどである。
藤井氏がマイクロマシーンは技術的には可能と述べたのが印象的だった。ただし、基礎研究だけで億単位、資金的に実現は難しいとのことである。
こうなると『攻殻機動隊』の世界はすぐそこのようにも感じるが、お金以外にもクリアすべき課題はやはり多いようだ。一番の課題は人間の脳にある。例えば、ネットワークと脳をつなぐ、義体を脳で考えたまま動かすといったことはハードルが高い。そもそも脳とネットワークをつなぐには、脳波ではノイズが大き過ぎて難しい。しかし脳に電極をつなぐとなると被験者になりうる人は少なく、それで動かせるデバイスにも限界があるという。
藤井氏は「脳の理解は進んでいない。我々の技術が及んでいない」と話す。義体を考えたまま動かすというのも難易度が高い。しかし、脳のことを別にして、直感的に体が動くことだけを考えればヒューマノイドの実現は視野に入る。人間の筋は600だが、現在のヒューマノイドのモーターは45、これを増やすことで人間の動きにより近づく。バッテリーの稼働時間も今後確実に伸びていく。
こうしてみると『攻殻機動隊』の世界全ての実現は無理としても、その中のいくつかはあと十数年の期間があれば可能かもしれないと思わせた。
新たな技術の実現は、想像を超えたイノベーションの突然の誕生によることが少なくない。むしろ、目標を持つことが技術革新や、さらに予想外の展開も呼び起こす。今回のトークセッションはそうしたかたちで意味がある。その掲げる目標がマンガやアニメでお馴染みの『攻殻機動隊』というのが、また日本らしいと感じた。
[数土直志]
攻殻機動隊REALIZE PROJECT
https://www.bandaivisual.co.jp/koukaku-special/realize/
『攻殻機動隊ARISE』
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http://www.kokaku-a.jp/ 《animeanime》
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