―先生の診療方針をお聞かせください。
患者さんの負担を極限まで減らすため、手術は徹底的に低侵襲を心がけています。手術する側にも肉体的・精神的なストレスがかかるので大変です。でも、それは歯科のプロである私がすべて受け入れて、患者さんには徹底的に楽になっていただきたいと思っています。さらに治療期間は極力短くというのも私のこだわりです。最近は低侵襲をアピールする歯科医院も増えましたが、たとえ低侵襲でも何回にも分けて治療していれば、結局患者さんは何度も手術を受けなければいければいけません。それは本当の低侵襲ではありませんよね。厳しい言い方をすれば、歯科医師が楽をしたいだけです。私が目指しているのは治療の質を徹底的に追及した低侵襲です。生意気かもしれませんが、そこが20年の歴史を誇る当院の強みだと思います。
―ところで、先生はなぜ即時荷重を始められたのですか?
2000年にハワイで行われたAAPアメリカ歯周病学会で、常識を打ち破る最小限切開によるインプラント治療手法を伝授してくださったロバート・ラム先生との出会いが、大きな転機となりました。即時荷重インプラントに出会い、興奮冷めやらぬまま帰国して間もなく、ある50代の女性が神妙な面持ちで、遠方から来院されました。話を伺うと、入れ歯がどうしても嫌で、何としても固定式の歯を入れたい。インプラントを熱望しているが、他院では断られ続けたとのことでした。お口を拝見すると、骨の量に問題があるのは明らかで、抜歯して骨を再生させてインプラントを入れることをお勧めしました。そのためには一時的に入れ歯にした方が良いと説明したところ、患者さんはうなだれて、大粒の涙を流して泣き崩れてしまったのです。「もうあきらめるしかない」と、絶望されたのだと思います。あまりにも気の毒で、学んだばかりの即時荷重インプラントの話をしたところ、真剣な表情に変わり「リスクは承知の上です。ぜひやってください」と懇願されました。スタッフにも反対され迷いもありましたが、この患者さんを見捨てるわけにはいかないという一念で皆を説得し、世界レベルでも類をみない、即時荷重インプラント手術に一丸となって臨みました。今のようにCTもない時代でしたが、結果は大成功し、1日できれいな歯が入りました。即時荷重インプラントの治療はそんな究極の決断からスタートしたのです。
―前例も歯科用CTもない中で、なぜ成功できたのだとお考えですか?
一つは私が総義歯を専門的に学び、数多くの経験があったからでしょう。顎の骨の形態を熟知していること、噛み合わせの力配分にも精通しているという2点が大いに役立ちました。2006年からは歯科用CTを導入して治療を行っていますが、これまで行ってきた治療がいかに精密だったかが立証され、自分でも驚くほどです。総義歯とインプラントの両方に通じ、歯周病再生治療、低侵襲外科にも精通しているからこそ、即時インプラントを通常植立手術と遜色なく成功させられるのだと、私自身は分析しています。
ドクターズ・ファイルの情報をスマートフォン・携帯からチェック!スマートフォン版では、GPS位置情報を利用した最寄りの病院探しができます。