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 今年4月に韓国南西部・珍島(チンド)付近で旅客船セウォル号が沈没し、295人が死亡、9人が行方不明者となった事故で、光州地裁は11日、船長のイ・ジュンソク被告(69)ら運航担当乗組員15人全員に実刑判決を言い渡した。死刑が求刑されていたイ被告に対しては、殺人罪については無罪とし、遺棄致死罪などで法定最高刑の懲役36年とした。

 検察は判決を不服として控訴する方針。イ被告を含む4人は、乗客が死亡すると知りながら救助活動をしなかったとして殺人罪に問われ、焦点となっていた。

 判決は、乗客が死んでも構わないという「未必の故意」が認められなければ殺人罪は成立しないと指摘した。4人のうち2人については海洋警察庁や管制センターに救助を求め、イ被告も乗客を脱出させるよう指示していたと認定。海洋警察庁の救助活動も始まっていたことを踏まえれば、「未必の故意」は認められないとした。ただ、船が傾いて沈んでいく中で救助活動が不十分だったとして、遺棄致死罪などで有罪とした。イ被告を除く2人についてはそれぞれ懲役20年と15年とした。

 残る1人については、負傷した同僚の乗員2人を放置して船を離れ、通報もしなかったとし、殺人罪を認め、懲役30年とした。

 このほか11人の運航担当乗組員についても遺棄致死罪などで懲役5~10年の実刑判決を出した。

 セウォル号の事故では、イ被告らの無責任な行動は厳しく非難され、朴槿恵(パククネ)大統領も発生5日後の4月21日に「殺人のような行為」と発言するなど、国民の怒りを買っていた。大規模な事故で殺人罪が問われるのは、韓国でも異例だった。

 韓尚熙(ハンサンヒ)・建国大法学専門大学院教授は朝日新聞の取材に対し、今回の判決について「法理的に殺人罪の適用は難しかった」と指摘した。事故当時の状況で船長が「乗客を殺すと決心したり、死んでもいいと考えたりしたと認めるのは難しいのではないか」とし、「国民の感情には反するとしても、妥当な判決だ」と語った。