新型インフルエンザ・ウォッチング日記

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

エボラの焦点はマリに移るのか、新たにわかったムズカシイこと・・・(エボラ出血熱 EVD エボラ)

2014-11-15 10:21:26 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

EVD感染の注目はこれからマリに移ってゆくのではないか・・・
そんな気になる(おそらくは本当にそうなる)出来事のかずかず。

  • マリの最初のケース(ギニアからバスで連れて来られた2歳児)関連の抑え込みは成功したが、第二のケースはすでにクラスタ発生。
  • インデックスケースは、ギニアで発症したイマーム(イスラム教の聖職者。以下聖職者)で、よりよい治療を求めてマリの首都バマコにやってきた。
  • マリではパスツールクリニック(注:仏のパスツール研とは無関係)を受診したが、この聖職者の基礎疾患である腎障害に気をとられてEVD感染を見落とした。検査もしなかった。そして、看護にあたった看護師が亡くなってはじめて、EVD感染が明るみにでた。医師も死亡。
  • 聖職者はその後10月27日にパスツールクリニックで亡くなったが、その性格上(注:その時点ではEVD感染死と認識されていなかったことも加わり)、大規模モスクで遺体が洗われ、別のモスクで盛大な葬式がおこなわれて、遺体はギニアに返された。この過程で大量の濃厚接触者が発生。
  • マリのWHO代表は、ギニアのWHO同僚から、この聖職者の家族も亡くなっているとの情報を聞かされた。WHOのDr. Ibrahima Soce Fall氏は電話インタビューで「クリニックのミスだ」と批難。
  • 現時点で、モスクとパスツールクリニックと他に数か所、聖職者が受診したクリニック、看護師の住居は閉鎖され検疫下にある。
  • クリニックで検疫隔離下にある患者のなかには、北部での戦闘で負傷した国連PKO兵士も10人含まれている。

難しい要素がいろいろ含まれています。

1.イマーン、イスラム聖職者は特権階級。遺体が(リベリア・シエラでおなじみ映像のごとく)トラックで運ばれることはない。大勢で洗い清められる。

2.イマーン、イスラム聖職者は特権階級。不調をうったえたら富裕層向けの医療機関を受診する。今回舞台となったパスツールクリニックの写真が載っています。小ぎれいでしっかりした建物です。途上国の医療を知ってる人ならだれでもピンとくる。これは富裕層および外国人向けクリニックです。管理人自身、スーダンやセネガル在勤中は、こういうところの医者と一生懸命人脈を結びコネつくりにいそしんだものです。用事がなくてもちょくちょく雑談(=情報収集)に足を向けたり、パーティーに招待し日本食を食べさせたり・・・。診察料1回100ドル、入院費一晩200〜700ドルの世界。つまり、聖職者という、一般庶民と富裕層のあいだを行ったり来たりする人種が媒介してこういう場にもEVDが持ち込まれるのだということが実証。そして国連PKOの人たちまで隔離対象になってしまった。

3.こういう富裕層や外国人向けクリニックの顧客のほとんどは(聖職者ではなく)お上品な上流階級だったり、欧米日の外国人だったりする。だから、そこの医者は、MSFやキリスト団体の慈善病院みたく、EVD感染者の群れが押し寄せてくることなどこれっぽっちも想定していない。そして、これっぽっちも想定していない人に対して、無理やりにでも情報を勉強させ訓練を強制する厚労省や保健省という力学もない(こうした富裕層や外国人向けクリニックはほぼ私立)。

さらにこの聖職者はドクターショッピングをしているので(そもそもギニアからマリに来たのも国境を越えたドクターショッピング。さらにマリでも数か所ドクターショッピング)、ますます接触者を増やしてしまっています。観察下は200人!

なりゆきが非常に心配されるところです。

http://www.nytimes.com/2014/11/13/health/mali-reports-a-second-larger-ebola-outbreak.html?_r=0

Second Ebola Outbreak in Mali Eclipses Early Success

 

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