出版社としては、EPUB3で、いまの本の読者を電子書籍にシフトさせられると思っているらしい。だが、本の読者は、本の読者だ。連中は、紙の本がいい、と言う。せいぜいシフトするのは、マンガ読者くらい。一方、世間を見るに、スマホ以降の若い横書き世代が大量に発生している。彼らにとって、縦書きは国語の教科書だけ。スマホはもちろん、学校の連絡でもなんでも、日常のすべてが横書き。昨今、本が売れない、出版不況だ、と言うが、編集者や古い読者がかってに常識としている縦書きを押し通すことで、新しい読者を門前払いしているのではないか。むしろもはや逆に、紙の本の方が、新しい電子書籍、パソコンやスマホの横書き字組に合わせていくのが筋だと思うが。
結局、新しいEPUB3の方が、死に逝くおじいさんたちの古い守旧フォーマット。これ以上、日本語だけのために追加コストをかけて、ややこしい約物転がしだの、リフローだの、半角2ケタ縦中横だの日本語の特殊な字組に対応しても、日本の本の読者は紙に留まり、マーケットは広がらず、世界で採算がとれない。またこんなガラパゴなことで手間どっているヒマがあったら、将来的な読み上げや自動翻訳も視野に入れ、日本語の方を国際標準フォーマットに対応させる新しい字組デザインを考えた方がいいんじゃないか?
by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士
(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)