2014年8月6日(水)

大宮愛が際立つ1杯 さいたま市内初の地ビール、販売開始

大宮の"地ビール"を誕生させた菊池俊秀さん(左)と清水良浩さん=さいたま市大宮区

 大宮氷川神社の参道近くに店を構えるビアパブ「氷川の杜(もり)」が、6日から“地ビール”を提供する。店舗併設の醸造所でビールを作ったのは、今年4月にさいたま市大宮区に店を開いた「氷川ブリュワリー」。同社によると、小規模醸造施設で職人が丹精して生み出す「クラフトビール」としては、市内初だという。挑戦しているのは、市民有志の地域活性化イベントで意気投合し、脱サラした2人の男。こだわりの1杯には、泡の数にも負けない地域愛が詰まっている。

 製造に乗り出したのは、さいたま市大宮区の「氷川ブリュワリー」社長菊池俊秀さん(57)と、同市北区の醸造担当清水良浩さん(30)。「氷川の杜」で飲める「クラフトビール」は、酒税の税率がビールや発泡酒よりも低い第3のビールで、正式にはリキュールに分類される。菊池さんは「クラフトビールは高価なイメージがあるが、なるべく安くしたかった。ただ、質は落とさない。ビールを超えたビールを提供する」と矜持(きょうじ)をにじませる。

 きっかけは昨年6月、大宮駅東口周辺で市民の有志が地元を元気にしようと催した「I LOVE SAITAMAぷろでゅーす」だ。氷川参道にほど近い場所で生まれ育った菊池さんは「昨年4月に大宮ロフトが閉店し、街が衰退してしまうのではないかと心配していた」と出展。同じくイベントに参加した清水さんと出会ったという。

 イベント開催後、メンバーは継続的な活性化策を議論した。菊池さんが5年ほど前から茨城県内の酒造メーカーでビールの体験醸造をしているのを知った清水さんが「地ビールを作ったらどうか」と提案。構想が動きだす。菊池さんは、さいたま市産業創造財団が起業を支援する「ニュービジネス大賞」に応募を決意。仲間のサポートを受けながら、企画書を何度も練り直すなどし、昨年度の「コミュニティビジネス賞」に輝いた。

 「何か地元に貢献できる事業をやりたいとは考えていたんです。賞をいただいたことで、それがみんなの夢になった」。菊池さんは、技術者として30年間勤務した大手カメラメーカーを昨年12月に早期退職。退職金などを元手に今年1月、「氷川ブリュワリー」を設立した。ガス器具メーカーの営業職だった清水さんも3月末で退社し、醸造担当者として参加。清水さんは「菊池さんの考え方に共感した。勧めた手前、自分も本気で取り組もうと腹をくくった部分もある」とうなずく。

 4月の「氷川の杜」開店後は、他社製「クラフトビール」を仕入れて営業していたが、大宮税務署から6月25日に製造免許が発行され、7月2日に本格醸造の初仕込みに臨んだ。その“作品”がいよいよ登場する。「ビールを媒介として、人が集まれる場をつくりたい」と菊池さん。愛する街を魅力あるものにしていく試みが、幕を開ける。

氷川の杜

 さいたま市大宮区高鼻町1の36の1(電話048・783・5123)。営業は平日が午後5時半〜同11時。土曜は午後4時〜同10時。日曜が午後4時〜同8時。不定休。6日は一般客も参加できる発表会を午後7時〜同9時に開催する(会費制ビュッフェスタイル、ハーフパイント3杯付きで1人2千円)。

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