日本では対馬にのみ分布するツシマウラボシシジミというチョウがいる。数年前からにわかに絶滅が噂されるようになり、日本チョウ類保全協会の昨年の機関誌によれば、すでに野生絶滅に近い状態にあるという。原因は食草のヌスビトハギを含む林の下草がシカに食べられてしまったことにある。実際に訪れてみて、対馬の北半分の林からは下草という下草がほぼ消え、シカが嫌う有毒植物のみが繁茂している様子を目の当たりにした。
■シカが下草を食べ尽くし生態系が崩壊
シカが下草を食べつくすことによる森林生態系の崩壊が全国各地で生じている。シカは日本の在来種で、通常の密度で生息していれば問題は生じなかったのだが、増えすぎたことが問題を引き起こす原因になっている。
5月の連休頃に山あいの田畑周辺をゆったりと舞うウスバシロチョウもシカの影響を受けている生きもののひとつだ。西日本ではやや山地性となり、食草が平地まで豊富にある地域でも、このチョウは以前から、少し山間部でなければ姿が見られなかった。その理由を解き明かしたくて、十代の終わりころ、兵庫県北部で分布調査に熱中した。その結果、谷間が狭まったところほど下流まで生息していることが分かり、おそらく夏の気温あるいは湿度が分布を制限しているとの推定まではできた。
それから20年。今年5月中旬に兵庫を久々に訪れてみると、ウスバシロチョウはシカがまだ増加していない地域のみで見られ、シカが増えてしまった地域では林の下草さえほとんどなくなって、チョウの姿も消えていた。本来は気候や植生によって成り立っていたチョウの分布が、シカの存在によって左右されるようになってしまっている。
シカの食害による生物多様性の低下は、多くの場所では今世紀に入ってから顕在化したが、全国を見渡せば決して近年に始まったことではない。例えば宮城県の金華山など、小さな島ほど早くから影響が出ていた。
ツシマウラボシシジミ、生きものがたり、日本チョウ類保全協会
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