「雑草を潰した汁の採集にあけくれる幼少期を経て、料理が趣味になりました」 という20代女子が探る肉食の宇宙。同じく肉食の飼猫ネコ山と共にお送りいたします。
誰でも作れる!トロントロンな豚の角煮を食べよう
肉食宇宙は、おなじみの肉料理を最高に!おいしく!そしてできればカンタンに!作る方法を執拗に追い求める、肉好きのための肉好きによる肉をあなどらないクッキングレポートです。肉食獣(を装った人間の女)が、料理をおいしくするコツを粘着質に検証します!
↑「肉食を理解するには肉食獣の心をつかむことから。野菜を育て穀物を食べる……そんな人間としての生態を捨て、獣の仮面をかぶらなければ、肉食を理解することはできないわ!」という天の啓示に導かれて、熊の仮装を試みる私。野生動物は料理なんてしないのでは?などとは考えもしない闇雲なパッションが一人の女を獣に変える……!
豚の角煮というファムファタル
というわけで第一回は豚の角煮です! 豚の角煮は、そのドスコイ系な第一印象とはうらはらに「ちょっとした失敗ですぐ固くなる、パサパサになる、味が抜ける」という気まぐれな態度で肉食パーソンたちを翻弄する小悪魔フード。4時間ドキドキしながら仕上がりを待ち続けても憧れのトロトロタイムは遂に訪れることはなく、残されたのは無残にパサついた肉の残骸と鍋にこびりついた油だけ……そんな無念を語るチャレンジャーたちの口調はどこか、キャバ嬢にアフタ-をすっぽかされた酔っ払いの愚痴にも似ているとも言われています。
また、角煮は豚バラをひたすら煮込むだけというシンプルな料理ながら、調理法に都市伝説並のバリエーションがあり、そのことも多くのチャレンジャーを路頭に迷わせる原因となっています。私も今まで、これくらいの方法を試してきました。
●調理法:茹でる / 蒸す / 圧力鍋を使う / 炊飯器を使う / 鍋で保温調理する
●コツなど:黒砂糖を使う / コーラで煮る / ウーロン茶で下茹で / 焼いてから茹でる
しかし、どうもうまくいかない……。というか、どの方法が実際有効だったのかさえ分からない! というわけで、まず、どの調理法がベストなのかの検証からスタートしたいと思います!
天地不動の落ち着きが角煮生活に福音をもたらす
目指す角煮は、脂身はゼラチン質のフルフルで、赤身はしっとり柔らかく、きちんと肉の味がするようなもの。角煮作りの基本的な手順は「お湯で肉を下茹で→酒、砂糖。醤油を加えてさらに茹でる」という単純なものなのですが、やわらかく作るにはいくつか押さえておかなければならないコツがあります。
肉を柔らかくしっとり仕上げるコツ
●肉のコラーゲン繊維は55℃近辺から収縮を始め固くなる。
●急激に熱を加えると、一気に肉のコラーゲン繊維が縮み、肉汁が逃げパサパサになる。
●長時間75℃~の熱を加えることによってコラーゲン繊維はゼラチン化し、やわらかくなる。
⇒肉の収縮を避けるためにゆっくりと加熱することと、一度固くなったコラーゲンを柔らかくするため長時間加熱することが大切。
焦って強火にするとたちまち態度を硬化させる、この追うと逃げる感じもやっぱり小悪魔! こういうところも角煮が「男の料理」界隈で人気を集める理由の一つなのだろうか? などと考えているうちに、だんだん「角美の男子への態度あざとすぎてウケる」「自己中をきまぐれって言い換えるのって、占領軍を進駐軍と言い換える並の欺瞞だよね(笑)」等、ガールズトークという名の悪口で頭の中がいっぱいに……!! 女の嫉妬って怖い!
鍋底で揺れる豚肉を不安定な境遇から救おう!
というわけで「ゆるやかに加熱することが可能で、温度管理が容易」という観点から調理法の比較をしてみたいと思います!また、私が今まで料理をしてきた限りでは、
●圧力鍋:肉が縮んでしまうのと、味が染みない
●炊飯器:肉が縮んでしまい、ふっくらしない
●保温調理:油、においが抜けない。結果が安定しない
という結果に終わっており、どうやらこれらの方法は私に向いていない……。というわけで、今回は「茹で」と「蒸し」を比較します。
茹でた場合
まずは定番の茹でバージョンから。多めの水に豚肉を入れて、弱火でじっくり火にかけていきます。写真は落としぶたナシの状態ですが、実際にはキッチンペーパーを落としぶたがわりにかけて、水から出てしまっている部分の乾燥を防いでいました。
この方法、とにかく温度が安定しない!例えばこのとき、鍋底は80℃オーバーに対し、上部は約55℃。しかも、ここから少しでも火を強めるとあっという間に湯の温度は100℃に達してしまう。お湯に対流が起きている状態だとすぐに100℃に達してしまい、対流がない状態だと鍋の上と下で温度が全然違うというジレンマにTHE・困惑……。今までさんざん角煮のことを自己中だの言ってきたけれど、その原因を作っていたのは実は私であり、角煮はむしろその犠牲者だったようです。周囲の偏見が原因で非行に走った少年を、差別した当人が「腐ったリンゴ」呼ばわりするかのごとき蛮行、償っても償いきれない……!
蒸した場合
続いて、蒸すバージョンもスタート。大鍋の底にザルをセットして、その上に蒸し容器を置くことで、鍋底と容器の距離をとっています。湯気が出始めたら弱火にしてフタをし、隙間からきちんと湯気が出ているのを確認したら、そのまま蒸します。
蒸す方法は温度面がとても安定していて、上部も下部も80度近辺を維持しています。上の方が湯気がダイレクトにかかる分若干温度が高いようです。
下茹でが終わったら
2時間の下茹でが終了後、一旦お湯を捨ててから味付けをして再度煮込みはじめるのですが、煮込み料理には共通する次のようなコツがあります。
味付けのコツ
●味は冷めるときに浸透する
●塩分を加えた状態で煮込むと肉は堅く、パサつきやすくなる
なので、下茹で後は砂糖、酒で味付け後1時間煮込んでから醤油をいれ火を消し、一旦冷ましてたものを温め直すという方法を採用しました。
完成後、温め直した二種類の比較をしてみたところ、嬉しいことに今回は両方とも脂身はくどくなくぷるぷるで、赤身も柔らかく出来ていました!ただ、やっぱり赤身のしっとり感は蒸すバージョンの方が上。茹では比較すると若干パサつきがありました。あと、肉の味も蒸したほうが残るようです。
黒砂糖とウーロン茶の威力とは!?
さらに今回は肉を柔らかくすると言われている「黒砂糖で調味」「ウーロン茶で下茹で」という二つのワザを試してみます。
まず、黒砂糖を試してみました。今まで私は「砂糖の代わりに黒砂糖を使うと柔らかくなる」という都市伝説を信じて、ほぼ毎回使っていました。しかし、今回普通の砂糖と比較したところ、柔らかさという意味では普通の砂糖と違いは感じられませんでした……。ガーン…黒砂糖神話崩壊……! もしかしたら、今回は下茹での段階で十分柔らかくなっていたので、黒砂糖パワーが発揮される余地がなかったのかもしれませんが…。
続いて、ウーロン茶を試してみました。こちらは本当に柔らかくなります! しかも、赤身がしっとりして、脂身の油抜けも良くなります。ただ、これは好き好きだと思うのですが、肉にウーロン茶の風味がついてしまうので、油抜けがいいのもあり大分あっさりテイストになりました。私はあっさり味の角煮が好きなので、この方法は気に入りました!
角煮の作り方:湯気のぬくもりに包まれて固肉地獄から涅槃に旅立つ
それでは、最後に蒸す方法での角煮の作り方紹介します。
材料:
●豚バラブロック肉 1kg
○しょうが 薄切り1/3個 砂糖大さじ3、醤油 カップ1/2、酒 カップ3
まず、肉を切ります。完成すると少し縮むので、ある程度大きめに切っておきます。熊の着ぐるみのせいで目の前がよく見えず、かなり危うい切り方に……。
蓋付きの大鍋を用意します。鍋底にひっくり返したザルなどをおいて、その上に肉を入れる容器をセットします。肉を入れた容器と鍋底の距離がとれればOKなので、鍋底に置くのはお椀でもなんでも良いです。
肉とショウガを入れた容器に入れ、乾燥を防ぐため上からにキッチンペーパーをかけます。鍋にお湯を張り、強めの弱火程度の火をかけフタをして、湯気が出てきたら、たっぷりの湯気がでるギリギリあたりまで弱火にします。このとき、顔にかかるほかほかのスチームが気持ちよかったので「エステ的効果が期待できるのでは!?」と湯気に顔を近づけたところ、顔面がゲットワイルドな豚の獣臭まみれに!
そのまま2時間程度蒸します。ときどき鍋の中の水分がなくなっていないかを確認し、少なくなっていたら適宜水を足します。
下茹でが終わったら、容器にたまった油と水分を捨て、肉を傷つけないように軽く水で流します。その後、酒、砂糖、ひたひた程度の水を入れた容器で再び蒸します。1時間蒸したら醤油を入れ、5分後火を止めます。そのまま冷めるまで放置します。
できあがり!!温め直して食べます! 好みで煮汁に片栗粉大さじ1を入れるととろみがつきます。(味が染みる前に食べたい時などは、とろみをつけた煮汁をからめて食べると美味しいです!)。
できあがった角煮は、脂身は油分がすっかり抜けてフルフルのゼラチンになっていて、赤身はしっとり柔らかく、箸で簡単に切れる柔らかさなのに肉の味もしっかりする……ハトの数千倍は世界平和を象徴しているこの味わいは正に理想の角煮! 一時は、世界平和と同じくらい遠い存在であるように思えたフルフル角煮だったのに……。この方法を試してから何度かトライしているのですが、この方法のメリットはとにかく「仕上がりがブレない」ことだと思います。手間はかからないけど時間がかかる料理なので、失敗したときのガッカリ感は、そして「今日はごちそうだ!」と楽しみにしていたのに、結局納豆ご飯が夕食になる絶望感……。思い出すと「せめて未来を生きる子供たちには、同じ苦しみを味わせたくない!」と叫びたくなってしまいますね!
まとめ
●肉は少し大きめに切る。
●茹でる代わりに蒸して料理する。
●温度上昇はゆっくりと!強火は厳禁。
●湯気がたっぷりでるギリギリの火加減で2時間下茹で。
●キッチンペーパーで落としぶたをし、煮汁が回るようにする。
●味付け前に、容器にたまったお湯は捨て肉を軽く洗う。
●醤油は火を消すちょっと前。
●冷ましながら味を含ませていく。
●二日目の角煮はおいしい。
●冷凍するときは、煮汁に肉が浸かるようにしよう!
それでは、ハッピー角煮ライフを!