2014年11月16日(日)、一つのお店が終幕を迎えようとしている。
三ツ矢堂製麺御徒町店。御徒町駅と上野駅の間くらいにある、つけ麺専門のお店。
ベースはゆず風味のとんこつスープ。少しこってりではあるものの、ゆずの風味と、決して強くはないが適度にさっぱり感のある酸味が、太めの麺にからみ、飽きのこない味を出している。そういうつけ麺が売りのお店だ。
2014年11月13日は、閉店を惜しむソーシャル仲間たちが集まった。
ソーシャルもリアルも含めて、仲間たちが集まったのはこの日だけではない。その前の土曜日もそうだし、以降、毎日のように別れを惜しむ仲間達が、ランチに、夜の飲みにと集う。
その11月13日の深夜。僕はオーナーのTさんと、差しで飲んだ。
お酒の勢いもあったので、とても厳しく、生意気なことをTさんに言ってしまった。暴言だ。
Tさんのことを思っての発言なのだが、さぞやTさんはびっくりしたと思う。飲食店を経営したこともない、保険販売したこともない、そんな奴にここまで言われる筋合いはない、と、そう思ったことだろう。
大変申し訳ないことをした。この場を借りて謝ります。すみませんでした。
三ツ矢堂製麺御徒町店は、言ってしまえば単なるチェーン店だ。
オーナーと言えど、フランチャイザーである本店の方針に逆らうことはできない。メニューも単価もサービスも、本店の指導のもとに行う。
それがフランチャイズの基本だ。だが、この御徒町という立地は訳が違う。三ツ矢堂製麺御徒町店の周囲には、半径50m以内に4店舗もつけ麺を出す店がある。競合店の一つは有名店、「麺屋武蔵 武骨 御徒町店」。常に行列ができるほどの人気店がはす向かいにある。アメ横の横で導線には多くの観光客やビジネスマンが往来し、決して人の通りは悪くないのだが、だからこそ、競合店も攻めてくるわけだ。
そんな条件で、他のフランチャイジーと同じメニュー、単価、サービスで対抗しようにも、それは難しいだろう。オーナー采配でオリジナルメニューやオリジナルサービスを作り続けなければ、顧客を飽きさせずに自分の店に向かわせ続ける事は、正直厳しいと感じる。
それでも、三ツ矢堂製麺御徒町店は、ソーシャルメディアを使って客を集めてきた。
いや、集まるようになってしまった。オーナーが積極的に客集めをしたわけではない。ただ、ソーシャル好きが、ソーシャルメディア上で待ち合わせ、事あるごとにこの店に集まるようになったことがきっかけだ。
facebookに、「笑連隊」という非公開グループがある。ここは、その日突然飲みに行きたくなった人が、飲みに行くよ、と書きこむだけのグループだ。いつでも、このグループでは、「今日飲みに行こう!」という投稿があがる。都合の合うFB友達が、それに呼応するようにコメントする。「19時には行くよ。」「今、品川です。20時までには行くよ。」
そんなふうに、いつの間にか、1人2人と三ツ矢堂製麺に集まってくる。来たものから順に、ちょい飲みセットやつけ麺の写真を取り、美味いぞーと投稿をタグ付けであげる。それを見た他の友達も、「お、○○さんもいるのか。じゃあ、今夜は顔を出してみようかな」、とますます人が増えていく。そうやって、貸し切り状態になった日が何回もある。
ソーシャルを使って店を繁盛させたいと思う人の形の一つを、この三ツ矢堂製麺御徒町店は実現したのだ。ソーシャルの口コミで、その日のうちに集客が出来るという、まさに夢のような効果を、ソーシャルメディアから受けることができたのだ。
それでも。
それでも、世の中は厳しい。ついに閉店をしてしまうことになった。
Tさんは言う。すでに僕らもずいぶん前から気づいていた。
この店は、「回転率」を上げなければいけないのだ。
言葉は悪いが、一杯飲んでつけ麺を食べたら、さっさと帰ってもらって新しい客を入れ続けなければならないのだ。
そうやって、顧客の出入りを多くする。回転率を上げる。
しかし、ソーシャルで集客した僕らのしたことは、確かに一時的な客数を増やしたが、回転しないのでそこまで。
1人3,000円程度の飲み代を落としたとしても、せいぜい20名程度しか入らない店のキャパシティでは、20名で6万円にしかならない。それが数時間居座るのだ。その日の売上はたかがしれている。それなら、1人1,500円程度、3回転以上させるスタイルのほうが、売上を上げる対策を打てる。
ソーシャルで集客ができた。そういう意味ではソーシャルで成功した。
でも、回転率を上げることができなかった。
僕らは、まだ何かできたような気がする。もっともっと、応援の仕方を工夫できたように感じる。
応援の仕方は人それぞれだが、それが本当に効果をあげる応援になっていたか、それは、何か冷静に見てみなければ、いつまでたっても気づかない。
残念な結果を迎えた三ツ矢堂製麺だが、しかし、この店は、多くの人に出会いとご縁を与え続けてきた。
この店で初めて会い、そのまま友達付き合いをしている人も多い。
ご縁なのだ。縁が人を紡いでいく。
その縁を紡ぐということができた稀有な店として、三ツ矢堂製麺御徒町店はいつまでも語り続けられるだろう。
あの店で、楽しい時間を過ごせたのだと、多くの人の記憶に残ることだろう。
たったそれだけのことだが、それでも、そのたったができない店が多いのだ。
それだけでも、この店はソーシャルで成功したのだ、と言いきっていいと、僕は個人的に思っている。
ソーシャル小説:目次
分類
- ■こうしよう!楽しくなるIT運用マネジメント (30)
- ■ここだけの運用マネジメント (5)
- ■ソーシャル古今東西 (30)
- ■ソーシャル東奔西走 (30)
- ■言の降臨(心の言葉2) (31)
- □『2022スペシャリスト・コーディネーター!』 (4)
- □それいけ!カリッチくん!! (6)
- □ソーシャル・プロマネの視点 (1)
- □ソーシャル探訪 (8)
- □ソーシャル森羅万象 (7)
- □プロジェクトマネージャの憂鬱 (7)
- □丙午世代の功罪 (21)
- □二丁目の夕陽 (4)
- □四文字熟語の交差点 (1)
- □夢の世界 (10)
- □女々しいかな、夏雲ノイズ (4)
- ○虚空の轍(心の言葉3) (3)
- ◎『システムを紡ぐ者たち』 (46)
- ◎『システムを護る者たち/システムに抗う者たち』 (23)
- ◎『ワンダフル・ネット・ライフ!』 (42)
- ◎『心の書~Calligraphy story~』 (9)
- ◎『心の言葉』 (30)
- ◎『改札の向こうに待つ者』 (17)
- ◎【電子書籍出版の歩き方】 (19)
- ★氣質学で人生をハッピーに! (1)
- 『世界の頂上(てっぺん)へ』 (1)
- 『明日があるさ!』 (9)
- ぶら~りソーシャル一人旅 (1)
- ぶら~りソーシャル夫婦旅 (3)
- ソーシャル (14)
- ヒーロー・ザ・ヒーロー (3)
- 不思議な世界 (9)
- 小説 (4)
- 男のクッキング! (1)