中国メディアも脱帽…エボラを迎撃、富士フイルム「業態転換」の底力
産経新聞 11月15日(土)12時0分配信
世界を恐怖に陥れているエボラ出血熱をめぐり、富士フイルムホールディングス(HD)が注目を集めている。傘下の富山化学工業が開発し、今年3月に国内承認されたインフルエンザ治療薬「アビガン(一般名・ファビピラビル)」がエボラ出血熱の治療薬として有効ではないかと期待されているためだ。エボラ出血熱の治療薬が確立していない中、この富士フイルムHDの「アビガン」ついては日頃、日本批判に傾きやすい中国メディアも絶賛している。さらに富士フイルムHDが写真フィルムメーカーから多角化企業への業態転換に成功したことについても改めて評価する声が上がっている。
◆厚労省も例外的に使用を許容
10月30日、東京・日本橋兜町の東京証券取引所。中間決算発表にのぞんだ富士フイルムHDの助野健児取締役は、「(エボラ出血熱は)人類との戦いとまでいわれているが、われわれの薬が貢献できるのは非常に光栄だ。全社をあげて、エボラ出血熱と闘っていくと気概で邁進(まいしん)していく」と意気込みを語った。
エボラ出血熱をめぐって、アビガンが一躍注目されたのは、今年8月に米国防総省が候補薬の一つに挙げたのがきっかけ。その後、リベリアでの医療活動でエボラ出血熱に感染したフランス人の女性看護師にアビガンなどを投与したところ、治癒したとして退院した。スペインなどでも効果が確認されたといい、注目度はさらに高まった。
富山化学によると、アビガンは「ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐという新しいメカニズム」が特徴という。2万人分のアビガンを保有する富山化学は追加生産に踏み切ることを公表。臨床使用が進む場合に備え、11月中旬以降、30万人分程度の原薬から順次、錠剤を製造していく方針だ。
アビガンはエボラ出血熱治療薬としてまだ未承認だが、厚生労働省は10月24日の専門家会議で、日本で患者が出た場合、例外的に使用を許容する方針で一致。フランスとギニアの両政府は11月中旬から、ギニアでエボラ出血熱に対するアビガン錠の臨床試験を始める予定。富士フイルムHDは、アビガンと薬事情報を提供し、協力していく計画だ。
「かつてのフィルムの王者が見事に、エボラウイルス対策のリストに現れた」
中国の情報サイト「界面」は10月23日の記事で、富士フイルムHDを中国語でこう称賛した。
界面の記事では、「富士フイルムが生産する抗インフルエンザ薬が、エボラを迎え撃つ武器になる可能性を持っている。同社はまさに、医療界で無視できない力を持つようになっている」などと紹介した。
◆株式市場も大きく反応
アビガンにエボラ出血熱を治癒する可能性が高まったことで東京株式市場も大きく反応。5月には一時、2502円まで下げていた富士フイルムHD株はアビガン効果で急上昇。11月6日取引時間中には3850円と今年に入り最高値をつけた。この間の5カ月で、株価は約1.5倍になった計算だ。野村証券は10月20日、「足元の業績好調とエボラワクチンへの期待」に着目し、同社の投資判断を「中立」から「買い」に引き上げた。
アビガンが注目されたことで、富士フイルムHDの業態転換が改めて評価される“副次的な効果”も表れている。
同社は主力製品だった写真フィルムがデジタルカメラの普及で需要が激減し、“本業消失”の危機に見舞われた。このまま手をこまねいていたら間違いなく倒産するという崖っぷちに立たされたが、平成12年に就任した古森重隆社長(現会長)の強烈なリーダーシップのもと、構造改革を断行し、多角化に走り出した。
液晶パネル用フィルム、デジカメ、化粧品、医薬品…。写真フィルム製造で培った基本技術などを活用し、新規分野に次々に乗り出し、業態転換に見事に成功。世界的なフィルムの名門、米コダックが経営危機に陥り、2012年に米連邦破産法11条の適用申請を余儀なくされたのと対照的だ。
◆“本業消失”危機から脱却
富士フイルムの医薬品事業は08年に富山化学を買収して本格参入。10月28日には、米ワクチン受託製造会社ケイロン・バイオセラピューティクス(テキサス州)の買収を発表、多角化の手綱を緩めていない。
今のところアビガンが同社の業績に与える影響は軽微の見通しだが、「人類の危機」に立ち向かう日本企業の底力を世界に示す絶好の機会といえそうだ。
最終更新:11月15日(土)13時38分
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