国連調査委:イスラム国恐怖支配…人道に対する罪と指弾

毎日新聞 2014年11月15日 10時39分(最終更新 11月15日 11時41分)

 【ローマ福島良典】シリア内戦の人権侵害を調べている国連の調査委員会は14日、シリアで勢力拡大中のイスラム過激派組織「イスラム国」が公開処刑などで「恐怖支配」を行っており、戦争犯罪と「人道に対する罪」を犯していると指弾する報告書を発表した。報告書は、イスラム国の司令官を国際刑事裁判所(ICC)で訴追するよう国際社会に呼びかけている。

 委員会がイスラム国に焦点を当てた報告書を作成、発表したのは初めて。イスラム国が支配しているシリア北東部からの避難民など300人以上への聞き取り調査で報告書をまとめた。イスラム国による市民弾圧が改めて明らかになり、国際世論の動向に影響を与えるとみられる。

 報告書はイスラム国が捕虜や市民などの殺害によって国際人道法の重大な違反と、大規模な戦争犯罪を犯していると非難した。イスラム国の支配地区では公開処刑が日常茶飯事となり、「住民への警告」として遺体や、切断された頭部が広場などの公共の場所に放置されているという。

 報告書は殺人やレイプ、女性の人身売買などに加え、「イスラム国が公開で(市民の)体の一部を切断し、ムチ打ちを行っている」と指摘。盗みをはたらいたり、喫煙したりした男性は指を切断され、男性患者を治療した女性歯科医が首を切り落とされたケースもあるという。

 また、報告書は中東を不安定化させるイスラム国の脅威を国際社会が過小評価していたと分析。シリア内戦の政治的解決を早急に図らなければ、イスラム国などの過激派が「危険な空白」を埋めると警鐘を鳴らした。

 委員会は国連人権理事会によって2011年8月に設置された。

最新写真特集