刑務所を10年前に出た人のうち、刑期いっぱい服役した人の6割が「塀の中」に戻ったが、途中で仮釈放を認められた人の再入所は4割にとどまった。

 きのう公表された犯罪白書のデータである。

 なぜ、これほどの違いが出たのだろうか。

 刑期を残して社会に出る仮釈放では、満期出所と違って必ず保護観察がつき、保護観察官や保護司の指導をうける。あらかじめ帰る先や仕事を確保したケースであることも多い。

 こうした環境で社会生活を再開できることが、再犯を防ぎ、刑務所への逆戻りを抑えていると、白書をまとめた法務総合研究所はみている。

 ならば、このような支援をより広げられないか。

 刑務所で過ごす人のほとんどは、いつか社会に戻る。再び罪を犯さなくてすむようにすることは、本人だけでなく社会全体にメリットが大きい。

 保護観察つきの仮釈放は、恩恵としてではなく社会内処遇として先進国で定着している。刑期の終盤を社会で過ごさせるよう義務づけている国もある。

 日本の現状はどうだろう。

 仮釈放は受刑先の刑務所長が申請し、各地の地方更生保護委員会が判断する。その仮釈放率はおおむね5割台できたが、最近は5割を切ることもあった。

 仮釈放を認められた人が刑期のうち刑務所で過ごした期間の割合をみると、「8割未満」が03年には45%いたが、昨年は2割強だった。保護観察への移行が遅れる傾向が進んでいる。

 各地の保護観察所は、裁判員制度の導入で保護観察つき執行猶予が増えたことや、非行少年の対応もあって多忙を極める。十分な態勢が取れているとはいいがたい。

 そもそも仮釈放の条件がととのわず刑の満期を迎えた人にこそ出所後のアフターケアが必要、という指摘もあるほどだ。

 頼れる人もなく、刑務所を出た足で盗みなどの罪を犯した人たちの話も現実に聞く。

 最終的には、すべての受刑者が、刑を終える前に保護観察のもとで社会に踏み出せる態勢をめざしていくべきだろう。

 政府は2年前、出所2年以内の再入率を当時の20%から16%以下にする目標を掲げた。

 実現に欠かせないのが、民間ボランティアである保護司だ。高齢化、新しいなり手の不足が深刻化しており、いい人を常に呼び込んでいく必要がある。

 職場や住まいの提供など、一人ひとりの市民の理解と協力が再出発の大きな助けになる。