■セックスの回数と満足度が世界最低の日本 世界シェアトップのコンドームメーカー、デュレックス社が継続して実施しているセックスに関する統計調査があります。最新版は2006年に世界26か国、26,000人以上にオンラインで実施されました。 この調査では、その週に対象者がセックスをしたかどうか、また、そのセックスが満足であったかどうかを聞いていますが、イエスと答えた人が最高のギリシャで87%、満足度は51%でした。ブラジル、スペイン、スイスなどが次で70~80%台、満足度は40%~50%台、その後に他のヨーロッパ諸国やアジア、北米諸国などが50~70%台で続き、日本の次にイエスと答えた人の割合が低いナイジェリアで53%、満足度は67%となっています。 日本の結果はといえば、イエスが34%、満足度が15%とナイジェリアと20%近くの差をつけてダントツの最低。6割の人がセックスをせず、した人でも半分以上が満足しなかったと回答したのです。 人種的な違いがあるかとも思いましたが、同じ黄色人種の中華圏の国でも、中国がイエス78%、満足度42%、香港で62%、29%、シンガポールで62%、35%ですので当たらないようです。 ■日本の夫婦の55%はセックスレス 同じくコンドームメーカーの相模ゴム工業が実施した「ニッポンのセックス」という調査では(2013年)、さらに具体的なセックスの回数調査があります。 よく若い男性の草食化が話題にされますが、子育て世代の30代、40代の性生活のほうがもっと問題は深刻です。というのも、平均初婚年齢が男女とも30歳前後となった現在、出産・育児現役世代である30代~40代の1月あたりのセックス回数が30代で2.68回、40代では1.77回と非常に低くなっているのです。 結婚相手とのセックスの平均は1.7回とさらに下がり、既婚者の55.2%がセックスレスと回答。既婚者で浮気相手がいる人は、配偶者よりも浮気相手とのセックスの回数が多いという笑えない結果も出ているくらいで、いかに性生活に問題を抱える夫婦が多いかがわかると思います。 ■セックス回数が多いほど1世帯あたりの子供人数も多くなる この調査には都道府県別の1か月のセックス回数ランキングもあります。これを国民生活基礎調査(平成24年度版 厚生労働省)の1世帯あたりの平均児童数(18歳未満)のランキングと比べてみると、かなり強い相関関係があることがわかります。 世帯あたり平均児童数 月あたりセックス回数順位 沖縄県 1.86人 3位 佐賀県 1.85人 1位 福井県 1.84人 17位 熊本県 1.82人 4位 鳥取県 1.81人 6位 長崎県 1.81人 24位 岡山県 1.80人 16位 石川県 1.80人 33位 福島県 1.79人 37位 宮崎県 1.79人 10位 鹿児島県 1.79人 11位 当たり前といえば当たり前ですが、セックス回数が多ければ生まれてくる子供の数もまた多くなる傾向にあるといえるでしょう。 ■セックスをしたい夫としたくない妻 いったいなぜ日本人はこれほどセックスレスになってしまったのでしょうか? 相模ゴム工業の調査では、セックスが少ないと答えた人の中で、セックスをしたいという男性は平均75.2%。20代では79.7%ですが、30代で81%、40代で82.7%と年を重ねるごとに逆に高くなっています。 ところが女性は正反対の結果です。平均では35.8%ですが、未婚女性が多い20代では59.7%もあります。ところが30代になると47.5%、40代では37.5%と年代ごとに10ポイント以上も落ちていくのです。この男女差はどこからくるのでしょうか? 30代に絞ってみてみると「もっとセックスをしたいのにできない」という人の理由で一番多いのは、「相手がその気になってくれない」で「子供や家族がいて機会が少ない」「仕事や家事などが忙しく疲れている」「仕事や家事などが忙しくセックスをする時間がない」と続きます。 いっぽうセックスをしたくない理由は男女ともに「仕事や家事などが忙しく疲れている」「面倒くさい」が挙げられています。 ■子供の成長につれて夫を愛せなくなる妻たち ベネッセ次世代育成研究所が300組の夫婦を対象に、4年間継続して行った調査があります。これは、子供が生まれた後に夫婦間の愛情がどう変化するかを調査したもので、「配偶者を本当に愛していると実感する」かどうかを毎年同じ人たちに聞いています。 妊娠中の初年度、イエスと答えた人は男女ともに74.3%ですが、年々その割合は減っていき、4年目には夫51.7%、妻34%になってしまいます。減っているとはいえ、夫は過半数がまだ妻を愛していますが、夫を心から愛している妻は3人に1人しかいなくなってしまうのです。 夫を愛し続ける妻の割合を、最初のデュレックス社のセックス頻度調査の数字と比べてみると不思議なことにぴったりと数が合います。夫は妻とセックスをしたくても妻が拒否する現実。「面倒くさい」や「時間がない」という表向きの理由の陰に潜んでいるのは、子育て中に夫に愛想がつきてしまい、夫を愛せなくなってしまう日本の妻たちの本音ではないでしょうか? ■育児はママ、の思い込みが女性を追い詰める グーグル社の調査では、日本では既婚女性が家事の64%を、子育ての88%を負担しているという結果が出ています。まだまだ少ないとはいえ、3分の1の家事を男性が担うようになったのは一昔前に比べたら大きな進歩だと思います。しかし、育児の1割程度しか夫が分担していないというのは、いかにも少なすぎます。子供が成長するのと足並みを同じくして、夫に対する妻の愛情が薄れてしまう最大の原因はここにあるのではないでしょうか? 「子供が小さいうちはいつも母親と一緒にいることが幸せ」「母親は小さいときは自分の手で子供を育てたいと思っているはず」という従来の価値観や思い込みにより、夫は育児のほとんどを母親任せにし、妻は必死によい母親になろうとしてすべてを子育てに捧げる。逆に夫は子供だけに情熱のすべてを注いでいるようにみえる妻との間に距離ができてしまい、ますます育児に参加しなくなる。そんな悪循環の末、夫を愛せない妻たちが増え、その結果としてセックスレス夫婦が増加しているように思えてなりません。 ■育児分担と夫婦間コミュニケーションがセックスレス解消の秘訣 以前の記事にも書きましたが、第一子の出産・子育ては女性にとって初めての経験の連続です。大切な子供を病気や怪我などあらゆる危険から守り、子供の発育を注意深く見守って母親は毎日一喜一憂し、同時に自分自身の体の大きな変化や、授乳や夜泣きなど肉体的な苦痛にも耐えていかなければなりません。その中で多くの女性が「私の生活はこんなに変わっているのに、なぜ夫はそれをわかって支えてくれないの?」と思ってしまっても不思議ではありません。 現在、私が住んでいるシンガポールでは子育ても、常に夫婦でが基本です。休日は家族で過ごすのが当たり前なのはもちろん、週日でも父親たちは実によく子供の面倒をみています。保育園の送迎も父親がしているのをよくみかけますし、学校でも親子面談は必ず夫婦単位。父親が担任の先生の名前を知らない、というようなことはありえません。 また、夫婦だけの時間も大切にするカップルが多く、仕事関係のパーティーや同僚との食事会でも夫婦出席が当たり前。若い人はもちろんですが、中年や老年になっても手をつないだり肩を抱いたりと、スキンシップを欠かしません。 前述のベネッセの調査でも、夫に対する愛情が変わらないと答えている妻は、そうでない妻に比べ「私の配偶者は家族と過ごす時間を努力して作っている」「私の配偶者は私の仕事、家事、子育てをよくねぎらってくれる」などと感じている割合が7~8割と高くなっています。妻は夫に家族と過ごす時間や、具体的なねぎらいの言葉を求めているのです。 結婚生活を送ったことがある人ならわかると思いますが、円満な家庭生活の秘訣の一つは円満な性生活にあります。また、いくら不妊治療の技術が発達しているとはいえ、夫婦の過半数がセックスレスの現状で少子化が食い止められるとはとても思えません。少子化の流れを変え、より多くのカップルが幸福な夫婦生活を送るためには、家族との時間を意識して確保し、子育ても妻と協力して分担する男性がもっともっと増えることが不可欠だと思います。 【参考記事】 ■パート社員から始めて正社員へ、というもう一つの選択肢 http://sharescafe.net/41850633-20141112.html ■育休取得でも増えない女性の出産後就労。本当にマタハラが原因? http://sharescafe.net/41707534-20141103.html ■米フォーチュン誌「最強女性50人」にみる2014年の女性経営者像 http://sharescafe.net/41607840-20141029.html ■マタハラ、逆マタハラに企業が陥らないためにできること。 http://sharescafe.net/41573584-20141027.html ■上川新法相にみる「女子校力」。 http://sharescafe.net/41560081-20141026.html 後藤百合子 経営者 |
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